可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら

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物凄く怖い顔をしていた王妃は、愛人の話題に食いついていた。


「ステファニアは、その愛人と会ったことがあるのね」
「えぇ、びっくりするくらいフレンドリーでした。……顔は覚えてませんけど」
「そうなの」


(あれは、私が義理の娘になるのを受け入れているかのようだったのよね。……でも、結婚した途端、豹変しそうな感じだったのも、うっすら覚えてる。あ、だから、顔を覚えてないのか)


そう、子供ながらに覚える必要を感じなかったのだとステファニアは気づいた。

王妃は、お気に入りのステファニアの義母となるのは、自分だけでいいと思って、伯爵の再婚を握り潰すとは思いもしなかった。

ただ、ステファニアが大したショックを感じていないのに王妃は、ホッとしてもいた。


「王妃様?」
「何でもないわ」
「?」


この時の王妃の頭の中で、目まぐるしくやることを分刻みであれこれ考えていたことにステファニアは気づくことはなかった。







離婚が成立したサンマルティーニ伯爵は、意気揚々と愛人宅に指輪を持ってプロポーズするために向かった。

だが、愛人の家の中は、がらんとしていた。サンマルティーニ伯爵が手紙で知らせたから慌ててそこで出迎えたみたいだった。


「え? 結婚した?!」
「はい。伯爵夫人より、子爵夫人の方がいいと思ってお受けしました」
「な、何でだ!?」


サンマルティーニ伯爵は、愛人が既に結婚していることに驚いていた。

子爵と結婚して、子供さえ産めば、その後の自由を約束してくれ、好きなものを何でも買って贅沢三昧をしていいという条件に食いついたのだ。

だが、それをお膳立てしたのが王妃だと気付かない2人の仲は、そこで終わった。

伯爵が泣いて縋っても気が変わることはなかったのだ。

贅沢に目がくらんだ彼女は、子供が中々生まれないせいで、使用人のような扱いを受けてこき使われる生活を送ることになったが、離婚を切り出すことは許されることはなかった。


「愛人をしているのを信用するのは難しい。離婚を言い出すのは、私からだけでいいな?」
「もちろんです」


彼女は知らなかったことがある。


「え? 伯爵家より、子爵家って爵位が下なの!?」


そう、伯爵家の上だと思っていたのだ。だが、それを知ったのは随分後で、結婚の条件があれこれついているせいで、贅沢とは程遠い人生を送るしかなかった。

一方伯爵は、愛人にあっさり捨てられて落ち込んでしまい、浮気もしなくなった。

それは、子供たちからはありがたいようで、ノルベルトは妹たちが2人ともいないところに帰って来て、落ち込んでいる父を慰める日々を送ることになり、それにげんなりして過ごしていた。

時折、ステファニアに帰って来て、父の相手をしてくれという手紙をもらうようになった。

そんな相手をするより婚約したら、どうかと伝えたのはすぐだった。

母が、あの調子だから婚約者が中々できないとノルベルトは長らく思っていたが、原因が他にもあることにノルベルトは気づいていなかった。

どうにかして婚約しようとノルベルトは奮闘したが、中々婚約者を見つけられなかった。


「何で、婚約できないんだ!」


ノルベルトは、母だけでなく、父も色々と厄介なことをしてくれたからサンマルティーニ伯爵家の跡継ぎである自分と婚約をためらっているのだと思っていた。

でも、どうにも違うようだ。だが、何が原因なのかがわからなかった。

そう、自分に原因があるなんて考えもしなかったのだ。

妹たちが厄介な母に掴まっていても何もせず、自力でどうにかしていく妹たち2人と父を止めきれない息子。

今更になって、父が愛人と一緒にいられず落ち込むのを面倒に思って、それを学園で愚痴りまくった。

ステファニアたちは、母の時にはそんなこと言わずにどうにかしようとしていたのもあり、情けなさすぎる子息に見えてならなかった。


「あの伯爵夫人がいなくなったのは、良かったけど、あの伯爵が義父になるのは勘弁してほしいわ」
「本当にそうよね。それに妹たちのことで、頼りなさすぎて、婚約者にも、夫にすらしたくないわ」


ノルベルトは、令嬢たちに絶不評だったことを本人は知らなかった。


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