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しおりを挟む星蘭の祖父の表を継ぐのは、父ということは前々から決まっていた。その方面の人たちの間では、とても有名なのだというが、星蘭と妹はその手の仕事を勉強することはなかったので、ふ~んという程度でしかなかった。
星蘭より歳上の二人の従兄は子供の時から、この手の勉強をこの家の男児として産まれた義務のように教育を受けて育っていた。
余談だが、彼ら兄弟は父の姉の子供たちで、芸能人と言っても納得してしまうほどの美形揃いだったりする。
そのため、妹はそんな従兄たちが自慢で仕方がなかったようだ。だから、正月に会うと目を輝かせて従兄たちの元へ駆け寄るのだが、あちらが構うのはもっぱら、星蘭だった。
「あけましておめでとうございま~す」
「あぁ、お前、今年も来たんだな」
「っ、」
従兄たちは辛辣なことを言ったかと思えば、きょろきょろと辺りを見た。こうして、星蘭を探すのは、いつものことだった。
「星蘭?」
「星蘭。そんな、隅にいないで、こっち、おいでよ」
従兄たちは、おいで、おいでと手招きをした。
(うわぁ~、凄い顔して睨まれてる。あんまり、あっち行きたくないな~)
そう思いながらも、星蘭は妹がすっ飛ばした大人たちに挨拶しつつ、従兄のところでもきちんと挨拶をした。妹のように立ったままではなく、正座をして。
従兄たちは、星蘭がきっちり挨拶するのを見て、妹には返しもしなかった挨拶を返してくれた。
拗ねられ散々なことを言われ、後から愚痴愚痴と言われることになるのは、いつも星蘭だった。
「お姉ちゃんばっかり、ずるい! 何で、この家じゃ、お姉ちゃんばっかり贔屓するのよ!!」
「でも、お母さんの実家の人たちは、あなたのことばっかりじゃない。私は、こっちのおじいちゃんからしか、お年玉もらえてないのにあなたは、向こうの親戚からも貰ってるんでしょ?」
「それは、お姉ちゃんが来ないのが悪いんじゃない!」
そんな姉妹喧嘩を聞きつけて、父がやって来た。
「星蘭の分も、親戚からもらってるだろ?」
「え?」
「受け取ってないのか?」
星蘭は父の言葉にそんなの知らないと答えると父は眉を顰めて、母に問い詰めていた。
妹の方が母方の親戚からも、星蘭の分まで貰っているのを母と妹が懐にしまっていたことがバレることとなり、色々言われたようで、母方の親戚からのお年玉が貰えなくなったのすら、星蘭のせいだと喚き散らす妹に呆れ果ててしまった。
もっとも、母が父と離婚することとなったきっかけが、とんでもないことだったこともあり、母方の親戚たちも付き合いを考え直して、疎遠となったようだ。
母方の祖父母も、離婚してから実家暮らしとなった母と妹に以前よりも、あまり優しくないようだ。ご近所さんから、色々と言われて、二人に出て行ってほしいと思っているようだが、それは自業自得でしかない。
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