姉に問題があると思ったら、母や私にも駄目なところがあったようです。世話になった野良猫に恩返しがてら貢いだら、さらなる幸せを得られました

珠宮さくら

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美穂が幼い頃に父が亡くなったことで、大変だったことはたくさんあった。でも、他所の家の大変さとは、色んな意味で違っていたと思う。

美穂には実の姉がいるが、姉らしいことをしてくれる人ではなかった。姉妹は母と暮らしていて父がいない分、母は忙しく働いていた。

そこは、父が生きてる時から働いていたが、今よりも仕事をセーブしていた。父よりも優秀だったことは間違いない。娘2人を育てるために仕事で忙しくしていて、姉が美穂にとって母親代わりのようなものと思われがちだったが、母親代わりも姉代わりもしてはいない。良く知らない人たちから見たら、そう見えるのだろうが、由美が役に立っていることは殆どなかった。逆にわがまま放題で、母を困らせて、妹の世話をするのとは逆に世話をやかれるようなところがあった。

母親の代わりというより美穂からしたら、継母みたいな感覚が強かったかも知れないが、それでも役には立っていたことはない。

血の繋がりがあるはずなのに由美は母にも、美穂にも似てはいなくて、やたらとねちっこいのだ。姑が嫁をいびるかのように何もないところでも、突きまくってくるような人だ。それこそ、自分の言いたいことだけしか言わず、他のことでは見下すことが多かった。

その辺が父方の祖母にそっくりだった。祖母も、由美がそっくりなことが嬉しいらしく、全然似てない美穂のことを嫌っていた。美穂が、母親似なことがお気に召さないようだ。祖母だけでなくて、祖父も同じ考えらしく、父方の祖父母に美穂は好かれていない。あからさまに贔屓されているのは由美だ。

だが、そんな贔屓を目のあたりにしても、美穂は羨ましいと思うことはなかった。姉には、何かと褒めちぎってくれるから、父方の祖父母が好きなようだ。母方の祖父母は、逆に駄目なところの多い姉に色々言うから嫌っていた。物凄くわかりやすい人だ。

そんな姉と美穂は反りが合わなかった。母親の代わりと本人は自負していて、それを周りに言っているようだが、周りに由美がそう言っているだけで家事全般すら得意ではないのだ。料理はできると本人は思っているようだが、酷い物しか作れないため、美穂が交代で料理当番を引き受けることも小学生の低学年からしていた。

それこそ、大したものはできなくとも、姉の作る味覚殺しのような物よりはかなりマシだったはずだ。その酷さに由美は全く気づいてはいない。

ここまででわかると思うが、美穂にとっての人間の大事な家族は母だけだ。姉は大事な家族にいれたことはない。

姉の方も、妹を大事な家族とは思っていないはずだ。あるいは、都合のいい存在とか。手に負えない残念な妹とか。そんなようなことを思っているのではなかろうか。その辺のことを由美に美穂が詳しく聞く気は全くなかった。聞いたら永遠と散々なことしか言われない自信しかない。


(そんなこと聞いたら、半日は語ってそう。それを思い出すたび、語られそう。絶対にそんな目にはあいたくない)


むしろ、それ以外でも姉とじっくりと話すなんて気は美穂には姉に対して全く持てずにいた。父方の祖父母もそうだ。長く一緒にいるとこっちの気がおかしくなる。そういう人たちだ。

でも、あちらからすると美穂と母は残念な人間で、亡くなった父のような人が素晴らしくて、そっくりな由美が将来有望だと信じて疑っていなようだ。


「全く、姉妹でこうも違うものなのね」
「あいつが、由美ばかりを褒めるのも無理はないな」
「仕方がないわよ。こんなんでも、私には妹だもの」
「由美。偉いわ」


祖父母は、由美には高級な紅茶と人気のケーキを出して、自分たちの前にも同じものをテーブルに並べていた。だが、美穂と美穂の母の前に同じものが並んだことは一度もなかった。


(水道水とお徳用のお菓子。相変わらず、わかりやすい人たち)


母も、そんな義父母に引きつった顔をしていた。美穂は、遠い目をしていた。こんなあからさまな対応をしたのは、父が亡くなってからではなかったようだ。


「前まで、麦茶に見せかけた麺つゆと賞味期限の切れたお菓子を出されていたから、マシになった方だわ」
「……」


母が、こっそりと教えてくれた。美穂は、それを聞いて無を体現した顔をすることになった。


(最悪なんて言葉が生ぬるいような人たちってことね。この人たちに似なくて本当に良かった。もう会いたくない)


そう思うばかりだった。姉たちが美穂たちを見下すように美穂と母も、彼らを見下していた。特に由美のことを。

そこに至るまで、美穂は母に自分の娘といつも言われていることも大きかった。どんなに優秀でも、母は優秀だと思ってはいないのだ。その時点で美穂は、優越感のようなものがあったのかも知らないが、まだそれに気づいていなかった。

ただ、父方の祖父母が褒めちぎるような姉のようには絶対になりたくないと思っていた。そちらに褒められたって、母の自慢の娘にはなれないことが大きかったし、羨ましいとも思えなかった。


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