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しおりを挟むその話を美穂に一方的に教えてきたのは、由美だった。母が再婚した時に連れ子となった子供たちの面倒を由美が母と見ていたようだが、上手くいかなくなったことで苛立った母と口論して、子供たちが全く懐かなかった。
子供たちは実母の方に身を寄せたが、そちらも家庭を持っていて、実母が再婚相手の顔色を伺ってばかりいて、子供たちは察したようだ。
父親は好きではないが、不倫している相手と再婚した。子供たちは、実の両親の双方から邪険に扱われていて、再婚した女性はそんな子供たちに寄り添っていた。利用するために取り入ろうとするわけではなかった。居場所のなくなった子供たちを見かねて、友達になろうとしたようだ。
母親面するよりも、側で見守り続けようとする女性に彼らはすぐにとはいかなかったが懐いたのだ。
それを知った美穂の母は酷かった。それで八つ当たりを受けることになったのが姉だった。
姉は、たまらずに美穂に連絡してきて、返信一切せずにその手の情報に美穂がやたらと詳しくなってしまった。
それでも、あまりにもしつこくて、そのうちひっきりなしに電話がかかってくるようにまでなって、着信拒否をするのもすぐだった。
姉は自分ばかりが、母に使われていることが不満だったようで、美穂にあんたも娘なんだから面倒みろと言いたいようだ。
(絶縁してるのを忘れてるみたいね。もう、付き合いきれないわ)
不満を持つなとは言わないが、言う相手は美穂でなくて母のはずだ。嫌なら、姉が母に言えばいいだけのことだ。言いたくなければ、離れればいい。前に絶縁して母から離れたのは、姉が先なのだ。それを忘れたようにしていて、美穂は……。
(考えるのやめよう。絶縁してるんだもの。気にしてたら駄目だわ。気にしたところで、理解できないもの)
その後、母や姉のことを聞くのは、伯父からのみになったが、そのうち伯父も付き合いきれないと一切関わりを持たなくなったのも、それから間もなくのことだったため、それからの2人のことを美穂が知ることはなかった。
そして、美穂の大事な家族のことを母や姉が知ることも、それからなかったようだ。
琥珀の具合がよくなくなったのは、それからしばらくしてからだった。
チャイルドシートに子供を寝かせて、具合の悪い琥珀を連れて動物病院に向かった。他の猫たちは家で留守番させているが、いい子に成長していたが、2匹だけでの留守番はさせたことがなくて、美穂はそれも心配していた。
浩一には、琥珀が急に具合悪くなって動物病院にいると連絡したが、早めに帰ると連絡が来た通りに早い帰宅をしてくれた。
琥珀につきっきりになっている美穂を見て、子供と他の猫たちの世話を率先してしてくれた。
「美穂」
「朝まで保たないかも」
浩一に動物病院で言われたことを美穂は話して、子供にも琥珀のことを話した。
家族で出かける予定でいた。それは、前々から楽しみにしていたが、琥珀の話をしたらとても楽しみにして出かける予定の通りに美穂は過ごせそうもなかった。
「こーちゃんといる」
琥珀のことをこーちゃんと呼ぶ我が子は、出かけることより一緒にいると言った。
それでも出かけたいと言うなら、浩一と出かけてもらおうと思ったが、そうはならなかった。
琥珀もまた、野良さんと同じ老衰で亡くなった。家族に見守られながら、こーちゃんと呼んで撫でる手にすり寄ってから息を引き取った。
(野良さんと同じね。優しいな)
美穂は、野良さんの時のように大号泣して、我が子も同じように大号泣して、拾った猫たちと浩一に慰められて元気になった。もちろん、旦那である浩一も泣いていたが、何も手につかない状態の美穂に代わって家事やら子供の世話やら猫の世話をしてくれた。
あれから、普段通りの生活に戻るまで、少しかかった。それでも、野良さんの時より美穂が立ち直るのは早かったのは、家族がいたからに他ならない。
「ママ~」
「にゃ~」
「にぃ~」
「は~い。どうしたの?」
我が子と猫たちのママとして、美穂は忙しくしていた。そのお腹が、大きくなっていて2人目の我が子とも、もうじき会える頃になっていた。
浩一は、相変わらず素敵な旦那様であり、父親であり、猫好きで、写真を撮ることが趣味の域を超えていた。
美穂たちのリビングには、家族の写真が毎年増えることになった。そこには、猫たちの写真も欠かせなかった。
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