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5、呪いの終わり……?
しおりを挟む呪いをただ返すだけでは悪化するとわかっても、リンベルはせっかちなところがあり無意識に返してしまっているようだ。
「あぁ、もう、イライラする!!……あっ、!?」
バンダカも呪いから逃れたくて返すようになり、呪いは深刻なものへと変化するのに時間はかからなかった。
「もう、いい加減にしてくれ!! っ、!?」
王太子とその婚約者は、2人がかりで順調に2倍の速度で呪いを悪化させ続けた。
「呪いが酷くなるから、返すのは止めろ!」
「バンダカ様こそ、返すのを止めてください!」
「っ、もう、たえられない! お前との婚約は破棄する!」
「なっ、?!」
「破棄すれば、呪いからも開放されるはずだ」
「そうなのですか? それなら、破棄を受け入れます! 早く私を開放してください!」
呪いから逃れたい一心で、2人は婚約を破棄することにした。だが、呪いは消えることはなかった。
「っ、話が違うではありませんか!」
「私に怒鳴るな! そもそも、お前が悪化させ続けたのがいけないんだろ!」
「それは、あなたが呪いなど蹴散らせば問題ないと言うから……」
痛みに我慢ならなくなり、次に王太子は廃嫡となることを願い出て、リンベルも子爵家から勘当してもらい、修道院に入った。貴族から、2人とも平民となった。
それでも呪いは消えることはなかった。
妖精王の説明をきちんと聞いていなかった2人は、婚約が破棄されても運命共同体のように呪いはつきまとい続けた。
「っ、何で、消えないんだ!?」
「くっ、もう、いつまで、続くのよ!」
最初は呪いではなくて、この国に加護を与えている精霊王が与えていた試練だったのだが、ロメリアの10年を見て、試練ではなく呪いだと思い込んでいた。
それも、これも、前回と前々回の試練に立ち向かった2人組が、相思相愛だったからだ。婚約しても試練がどんな物だったのか、ロメリアの祖父世代も、親世代も、実はよく知られていない。
だから、10年近くも、歩くたびにおかしな音が鳴り続けるそれを試練というより、ただの呪いだと思い込み、妖精王との会話の内容も深く追求せずに消せれば合格だと思い込んでしまったのだ。
忍耐力や精神力を鍛え、お互いを気に掛け合って絆を強くすることが解決の鍵だった。そう、2人で助け合うことで解決して試練は終えられたのだ。
ロメリアに一方的にどうにかしろと言うだけのバンダカとでは、クリアー出来るはずがなかった。
返せば返すだけで、段々と酷くなっていくから、呪いと言っても間違えてはいない。絆が深まれば、簡単に消えるというのにきちんと妖精王の話を聞いていれば、わかるはずだった。
返せば返すほど消えづらくなってしまい、もはや何をしても呪いから逃れることが出来なくなってしまう。もはや手遅れに近いのではなかろうか。
(そういえば、最悪の事態になったら、どうなるのかしら?)
ふと、疑問に思って、ロメリアは首を傾げた。
平民となった2人は、婚約を破棄しても、何も変わらず、呪いの悪化により、離れられなくなり、毎日言い争いながら生活するしかなくなっていた。
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