5 / 6
5、呪いの終わり……?
しおりを挟む呪いをただ返すだけでは悪化するとわかっても、リンベルはせっかちなところがあり無意識に返してしまっているようだ。
「あぁ、もう、イライラする!!……あっ、!?」
バンダカも呪いから逃れたくて返すようになり、呪いは深刻なものへと変化するのに時間はかからなかった。
「もう、いい加減にしてくれ!! っ、!?」
王太子とその婚約者は、2人がかりで順調に2倍の速度で呪いを悪化させ続けた。
「呪いが酷くなるから、返すのは止めろ!」
「バンダカ様こそ、返すのを止めてください!」
「っ、もう、たえられない! お前との婚約は破棄する!」
「なっ、?!」
「破棄すれば、呪いからも開放されるはずだ」
「そうなのですか? それなら、破棄を受け入れます! 早く私を開放してください!」
呪いから逃れたい一心で、2人は婚約を破棄することにした。だが、呪いは消えることはなかった。
「っ、話が違うではありませんか!」
「私に怒鳴るな! そもそも、お前が悪化させ続けたのがいけないんだろ!」
「それは、あなたが呪いなど蹴散らせば問題ないと言うから……」
痛みに我慢ならなくなり、次に王太子は廃嫡となることを願い出て、リンベルも子爵家から勘当してもらい、修道院に入った。貴族から、2人とも平民となった。
それでも呪いは消えることはなかった。
妖精王の説明をきちんと聞いていなかった2人は、婚約が破棄されても運命共同体のように呪いはつきまとい続けた。
「っ、何で、消えないんだ!?」
「くっ、もう、いつまで、続くのよ!」
最初は呪いではなくて、この国に加護を与えている精霊王が与えていた試練だったのだが、ロメリアの10年を見て、試練ではなく呪いだと思い込んでいた。
それも、これも、前回と前々回の試練に立ち向かった2人組が、相思相愛だったからだ。婚約しても試練がどんな物だったのか、ロメリアの祖父世代も、親世代も、実はよく知られていない。
だから、10年近くも、歩くたびにおかしな音が鳴り続けるそれを試練というより、ただの呪いだと思い込み、妖精王との会話の内容も深く追求せずに消せれば合格だと思い込んでしまったのだ。
忍耐力や精神力を鍛え、お互いを気に掛け合って絆を強くすることが解決の鍵だった。そう、2人で助け合うことで解決して試練は終えられたのだ。
ロメリアに一方的にどうにかしろと言うだけのバンダカとでは、クリアー出来るはずがなかった。
返せば返すだけで、段々と酷くなっていくから、呪いと言っても間違えてはいない。絆が深まれば、簡単に消えるというのにきちんと妖精王の話を聞いていれば、わかるはずだった。
返せば返すほど消えづらくなってしまい、もはや何をしても呪いから逃れることが出来なくなってしまう。もはや手遅れに近いのではなかろうか。
(そういえば、最悪の事態になったら、どうなるのかしら?)
ふと、疑問に思って、ロメリアは首を傾げた。
平民となった2人は、婚約を破棄しても、何も変わらず、呪いの悪化により、離れられなくなり、毎日言い争いながら生活するしかなくなっていた。
78
あなたにおすすめの小説
婚約者に愛されたいので、彼の幼馴染と体を交換しました【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「すまない。でも、全部きみのためなんだ」
ランデリック様はそう言って、私との婚約を解消した。……許せない、きっと、『あの女』にたぶらかされたのね。半年ほど前から、ランデリック様のそばをウロチョロするようになった、彼の幼馴染――ウィネットに対する憎しみが、私に『入れ替わり』の呪文の使用を決意させた。
『入れ替わり』の呪文は、呪文を唱えた者と、使用対象の心を、文字通り、『入れ替え』てしまうのである。……呪文は成功し、私の心はウィネットの体に入ることができた。これからは、私がウィネットとなって、ランデリック様と愛を紡いでいくのよ。
しかしその後、思ってもいなかった事実が明らかになり……
【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます
ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」
「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」
シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。
全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。
しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。
アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
reva
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
王太子殿下の拗らせ婚約破棄は、婚約者に全部お見通しです
星乃朔夜
恋愛
王太子殿下が突然の“婚約破棄宣言”。
しかし公爵令嬢アリシアの返答は、殿下の想像の斜め上だった。
すれ違いからはじまる、恋に不器用な王太子と
すべてお見通しの婚約者の、甘くて可愛い一幕。
紅の髪のせいで理不尽な目に遭わされてばかりでしたが、婚約破棄の向こう側に出会いと幸せがありました。
四季
恋愛
紅の髪のせいで理不尽な目に遭わされてばかりでしたが、婚約破棄の向こう側に出会いと幸せがありました。
生きていて良かったです。
あなたの罪はいくつかしら?
碓氷雅
恋愛
公爵令嬢はとある夜会で婚約破棄を言い渡される。
非常識なだけの男ならば許容範囲、しかしあまたの罪を犯していたとは。
「あなたの罪はいくつかしら?」
・・・
認証不要とのことでしたので感想欄には公開しておりませんが、誤字を指摘していただきありがとうございます。注意深く見直しているつもりですがどうしても見落としはあるようで、本当に助かっております。
この場で感謝申し上げます。
まさか、今更婚約破棄……ですか?
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。
エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。
なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!?
色々こじらせた男の結末。
数話で終わる予定です。
※タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる