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しおりを挟むアンジェリーカが、10歳を過ぎた頃だった。家庭教師のエジェオのおかげで、色んな知識を身につけられるようになり、祝福も魔力も研ぎ澄まされていくようになったせいか。同じ夢を繰り返して見るようになっていた。
それは、アンジェリーカは思いもかけないものだった。
(この世界にエルフがいるの……?)
アンジェリーカは、夢に見目麗しいエルフが出て来て、何やら切々と話しかけてくるのだが、何を伝えようとしているのかがわからなくて、首を傾げるようになっていた。
今までと違い、目が覚めてからも見たものを覚えていたことで四六時中、時間があると考えるようになっていた。
(きっと、ただの夢よね。……エジェオ先生に雰囲気が似ていたけど。先生は、耳が人間だもの。きっと気のせいよ)
そう思っていたが、やたらと見続けるため、何かあるのではないかと思い始めたのも、割とすぐのことだった。
寝ても覚めても、エルフのことを考えるようになり、気になって調べてもみたが、よくわからずなかった。そのため、ぼんやりすることが増えたのも、その頃からだった。
「アンジェリーカ様、どうかされましたか?」
「っと、ごめんなさい」
「……何か気になることでも?」
エジェオに教えてもらっている時でも、集中しきれなくなっていた。今まで、どんなにイライラすることがあっても、授業中に集中力を切らすことはなかったため、エジェオは心配げにアンジェリーカを見るようになっていた。
家族や親戚、婚約者はそんなことはなかった。好き勝手に自分たちのやりたいことをやっていて、その時にアンジェリーカが利用できれば、他の時にどんな状態でも気にしない人たちばかりだった。使用人たちも、アンジェリーカを心から心配なんてしてはいなかった。何かしたところで、見返りがないことを不満に思っていて言われたこと以外のことに関わりたくないのだろう。
アンジェリーカが、関わってほしくなくて距離を置いていたことが、こんな風に作用するのだと思うと皮肉でしかない。
「不思議な夢を見るようになって、それが気になってしまって」
「不思議な夢……?」
「あの、先生。この世界にエルフっているんですしょうか?」
「っ、」
授業には関係ないのだが、ずっと気になっていることをエジェオに聞くことにした。自分で調べても埒が明かないため、関係ないことでも先生が、どう思っているかを聞くくらいは許されるはずだ。
問題は、今が授業中のことくらいだろう。でも、このままではずっと集中できないままになりそうだったのもあり、解決できる糸口になればといいとちょっとだけ思っていた。
「……なぜ、そんなことを?」
「夢にエルフが出て来るんです」
「っ!?」
エルフが夢に出て来ると話すアンジェリーカにエジェオが物凄く驚いた顔をしていることをアンジェリーカは見ていなかった。
アンジェリーカは、見ていた夢のことを思い出すのに夢中すぎたせいと寝ているようで寝れていないせいだ。
「とても、切実に私に何か伝えようとしてくれているんですが、その言葉が聞きとれなくて……。そのエルフが、先生に似ている気がするんです」
「……」
「見た目ではなくて、雰囲気というんでしょうか。出て来るエルフも……」
そこまでアンジェリーカは思い出しながら話していたが、授業の終わりの時間となり、そこまでとなった。
その後、予定がつまっていたこともあり、アンジェリーカはエジェオが何か言いたそうにしていることに全く気づくことなく、変なことを言ったことを詫びていた。
(何をやっているのかしらね。きっと疲れているんだわ。エルフも、病気のような、そうではないような奇妙な感じも似てるけど。エルフのことを調べても、いたなんて記録はどこにもなかったし。先生も、いるなら何か言ってくれてるはずだけど、無言だったし。何おかしなこと言ってるんだって思われたに違いないわ)
そう思うことにして、その日の予定をこなすことにした。
エジェオが家庭教師をしてくれるようになって、数ヶ月が経ったが、久々に会うことになった婚約者のカロージェロが、公爵家にやって来て喧しくうろちょろしていた。
アンジェリーカはそれをまるっと綺麗に無視した。そんなのに構ってしまえば、ずっと付き合わされることになるのを知っているからだ。
婚約者とパーティーに出席することになったことで、媚びへつらう大人たちも、両親も、親戚も、アンジェリーカの機嫌を取ろうとする面々ばかりで、そんな人たちにアンジェリーカは素っ気ない態度しか見せてはいなかった。
愛想なんてふってしまえば、いいように解釈されてしまうだけだ。そのため、つれない態度の方がいいことに気づいて、やり過ごすことを身につけてかなり経つが、それでも同じようなことを色んな人たちがアンジェリーカにやって来ることがやむことはなかった。
その間も、アンジェリーカの頭の中は目の前のことより、夢のことが気になって仕方がなかった。
(これだけ、同じ夢を見るのなら、何かしてほしいってことに思えるんだけど。エルフがそもそもいるのかもわからないから、何を伝えようとしているのかを確認すらできないのよね)
何かしてほしいのではないかと思えてならなかったが、アンジェリーカは何をしてほしいのかまでが、どうしても把握できずにいた。
そのため、アンジェリーカが一際ぼんやりとしていることが増えることになって、エジェオにだけ何かと心配されたが、それにアンジェリーカが気づくことはなかった。
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