33 / 112
第1章
33
しおりを挟むウィスタリアは、元婚約者によってすっかり変な方向に鍛えられたことに喜んでいいのかがわからなくなっていたら、もっと身近で厄介になってしまっている人間に声をかけられた。
大人しくしていてほしいが、そんな時に限ってそれができないところも、祖母に似ている。血のなせる技か。一緒にいすぎたせいなのかはわからないが、こんなことを言った。
「お可哀想なお姉様。将来を有望視されている方にあそこまで嫌われてしまっては、これから大変ね」
「……」
プリムローズに突然、そんなことを言われて、ウィスタリアは思わずきょとんとしてしまった。
(今、なんて言ったの? 将来を有望視されている?? 誰のことを言っているの?)
妹が言った内容に瞬きが多くなってしまった。
そんなことしても、目の前で意地悪げにして、あの人前でするなと言う顔をしている妹が消えてなくなるわけではないが、思わず試してみたくなった。
子供みたいなことだが、それだけウィスタリアは疲れているのだろう。瞬きする間に一瞬でもいいから、視界から消えてほしかったが、ずっと消えてくれることはない。目を閉じて見ないようにしていたかったが、それだと瞼の裏にあの顔が思い出されてしまうから、瞬きが一番よかった。かなり間抜けなことでも、それを見ているのは目の前の妹だけだ。
他所ではできないが、家族ならば問題ないはずだ。
むしろ、瞬きをいくらしても、嫌味というか。残念な顔をしている妹が、どこかにいなくなることはなかった。今の間に部屋に引っ込んでほしいとすら思ってしまったが、そんなこと察してくれる妹ではないようだ。そういうところも、祖父母のようだ。すっかり、それが普通のことになってしまって刷り込まれているようだ。
同じ姉妹なのに見た目も違う。何より好みも、まるで違っていた。妹は、すっかり派手なものを好むようになっていて、化粧も派手めで目立ってなんぼみたいなところしかない。そのため、似合っているかなんて二の次になったものを着ているようになった。私服は、趣味が悪いものしか持っていないようで、ウィスタリアは見かけるたび言葉を失った。
そんな妹が消えてなくなるなんてわけがない。派手すぎて、遠目でも目立ちまくるような出で立ちをしているのだ。今日は、どこかに出かけるわけでもないのに一段と派手な格好をしていて、それを見ることになったウィスタリアだけでなく、両親も家の中で何を目立つ必要があるんだという目を向けていた。
本人は自分にあった格好をしているとしか思っていないようで、ウィスタリアにしか見せないニヤニヤ顔をし続けていた。いい加減にやめてほしい。ウィスタリアですら、イラッとしてしまうほどなのは、疲れているだけなのか。疲れていなくとも、そうなるのかはわからない。
その顔が他人に見せられないような顔をしているのを見て、両親も流石に見ていられなくてやめさせようとしたが、プリムローズが素直にやめることはなかった。
その顔はともかく、それもこれも周りが酷い格好をしていると本当のことを面と向かって言う者がいないせいもあった。もっとも言う者がいなくとも、普通は気づくところだが、プリムローズは言われたことも都合よく歪めるところがある。言うだけ無駄だと思われているせいで、とんでもない格好ばかりしていることに拍車がかかってはいた。
まぁ、記憶に関しては、ウィスタリアも忘れている部分があるのだから、人のことは言えないが、それでも悲しみのあまり記憶を書き換えること、都合良く書き換えるのは別物だと思う。
(今日は一段と酷いわね。これは、気合いの現れってことなのかしら。問題は何に気合をいれているかよね)
そんなことを思いながら、用事を思い出したと逃げたくなってしまったが、そんな用事もないウィスタリアは何を言いたいのかを聞くしかないと諦めるしかなかった。
44
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる