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第1章
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しおりを挟む聞き捨てならないことをプリムローズは言った。聞き間違いであってほしいが、そうではなかったはずだ。
間近で、とんでもない格好と距離感がおかしく見える化粧とウィスタリアは瞬きし過ぎたせいだろうか。目眩がした。
それらのせいでなく、疲れているだけかも知れない。一つのせいでなく、全部のせいだろう。どれが一番かは考えないようにした。考えたら、今現在のような気がしてしまう。
(将来を有望視されているなんて、皮肉な嫌味をまさかそのまま信じているわけではないわよね? あれは、私に対する嫌味であり、元婚約者に対する嫌味なんだけど……。まさか、そこを文字通りに捉えていたの? ……いつから? この子は、いつから、こうなの?)
ウィスタリアは、妹にそんなことを思ったが、プリムローズは噂通りに捉えていたようだ。
王太子の婚約者候補の1人だったウィスタリアが、ソレムと婚約したことで、そんな風に言われていた。
それが、いつの間にか、ウィスタリアが尽くしに尽くして評価をあげにあげたことで、同じ言葉を今度はソレムにし始めたのだ。
(……あ、彼の底なしの自信も、そこから培われたのかも)
都合よく人の言葉を聞いてばかりいたが、言葉通りに捉えたことはあまりなかったから、それを除外してしまっていた。
それこそ、ソレムがいまいちな子息なのは周りもよくわかっていた。わかっていないのは、プリムローズとソレム本人くらいのはずだが、未だいるかも知れない。
だからこそ、将来を有望視しているなんて嫌味をよく言っていたのだが、それを言葉通りに捉えてしまって、プリムローズはすっかり信じてしまっているようだ。
そして、元婚約者の方も、あれは完全にそう思って勘違いしているのは間違いない。
(随分とおめでたい子になってしまったのね。こういう時だけ、言葉通りに捉える。……でも、ある意味、お似合いかも。お似合いだけど、家も道連れにして、国すら道連れにしそうな2人が爆誕しそうで、恐ろしさしかないわ。こんな最終兵器みたいなのをくっつける応援は、流石にできないわ)
そんなことをウィスタリアは思ったが、プリムローズに何か言うことをウィスタリアも両親もしなかった。
血迷っても、2人を婚約させはしないだろう。ウィスタリアたちの両親も、彼の両親も。どんなに面倒くさいまでに頼み込まれても、しつこくされても叶えるはずがない。
特にソレムの両親はしないはずだ。先程も、約束したばかりなのだから。
(そんなことをしたら、2人とも勘当されるでしょうね)
この後、プリムローズがソレムと婚約したいがために姉を殺して、婚約破棄になって心を病んだ姉が、そんなことをしたということにして、悲しみに暮れる令嬢を装って、ソレムと婚約しようとするとはウィスタリアも、両親も、周りですら思っていなかった。
そんなことを考えついて、そのままプリムローズが実行するとも思っていなかったのだが、誰もそんなこと考えないはずだ。
だって、婚約した時にやるならまだしも、破棄になった後でソレムとの婚約破棄に清々しても死のうとはしない。むしろ、ウィスタリアですら喜ぶだけだ。そういう子息だ。
でも、それを盛大に勘違いしているのはプリムローズだし、彼女の頭では上手くいくと思っているようだが、それで上手くいったら、世の中おかしなことになることは間違いないはずだ。
ただ、この時はウィスタリアも両親も疲労困憊となっていて、そのままにしてしまったたせいで、何もかもが手遅れなことになるとは思いもしなかった。
そして、何よりウィスタリアがそれを拒むことをしないとは本人も思いもしなかった。それほどまでに疲れていたとは、気づいていなかった。
ただ、ウィスタリアは思ったことを口にすることはなかった。聞こえないことにしておいたが、ショックで何も言えないと思ったようで、それ以上のことをプリムローズに言われることはなかった。
その代わりのようにあの残念なニヤニヤ顔を向けられて、それを見ないようにするのが大変で仕方がなかった。
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