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第1章
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しおりを挟む(私のしたことなど、誰にもわからないままでいい。ただ、携わった人たちとその家族が笑顔になるなら、それでいい)
やらかした本人が、それに気づくことなど期待するだけ無駄だが、それだけでなくて驚かされたというか。呆れ果てたというか。妹によって呆れる以上のことを人生で散々されてきた。それで、どれだけ頭を下げてきたことか。
そんなことをしても、何も生まれなかった。プリムローズからは、散々な目に合わされてきても、何の爪痕も残せなかった。
生まれた時は、とても可愛かったが成長するにつれて、両親たちが拙さの残る話し方に苛立ち、祖父母は似ている方の孫として可愛いがって、常識なんて度返してなんて溺愛していればよかったのだろう。
(久しぶりに会ったら、全然、可愛くないと思ったのよね。今だって、あんな化粧をしなければ可愛いのに。服装だって、似合うものを着れば、あっという間に婚約できるのに。……まぁ、その後に性格やら、何やらで誤魔化しきれなくなりそうだけど。見た目だけでも騙される人はいるはずなのに。どうして、孫にあんな格好をさせていられるのかしら? 自分たちは、まともなものを身にまとっていたはず。……もしかして、お金をかけずに可愛がってるなんてことはないわよね?)
姉としては、どうかと思うが、そんなことを思ってしまった。
妹のことは、今からでも手遅れではないと思いたいが、あのまま家に残ってプリムローズをどうにかしようとしているよりも、ウィスタリアはこうなったことに後悔
をしてはいなかった。
たくさんの人の未来がかかっているのだ。それを終わらせるなんてできない。それに関われたし、頭を下げて回っても、プリムローズやソレムのやらかしたことで、謝罪して回った時よりも、これまでなかった先があるのだ。台無しになんてさせられない。
だから、ウィスタリアは自分の手柄になるのか。ならないかではなくて、そんな手柄を立てるのが誰になるかより、それをまっとうしてくれる人の為に動いたにすぎない。
(そのために彼が邪魔しないことが、必要だけど。どうにかしてくれるはず)
そんなことを思って、自分ができることをやりきった気持ちがウィスタリアにはあった。
それだけで、少し救われた気がしていた。完全な自己満足だが。
そんなことをしていたウィスタリアは、これまでの上を軽く超えるようなことをプリムローズが思いついていたことまでは気づいていなかった。
いつも、油断しているつもりはないが、妹ではなくて、元婚約者に毎回とんでもないことをやられてしまい、散々な目にあった。確かにこの時は、油断しすぎていた。
ウィスタリアの想像を遥かに超えることばかりだったのをすっかり忘れていた。そんな驚きも、そんなことでやれるところを見せてほしいと思ったこともないが、妹は普通のカテゴリーにおさまりきらないまでになっていた。
ウィスタリアが何かやらかすまでわからないことが大きかった。思考回路が違いすぎたせいだ。
何より完全に油断している時にやられたのだ。想い人の死を受け入れるたまけでも、ウィスタリアには大変だった。
元婚約者以上に酷いことを思いつくだけでなくて、実行しても何とも思わない妹になっているとは流石に思いたくなかった。
そして、これが酷い目にあう最後になるとも、思っていなかった。もう二度と起こらないことは喜ばしいと思ってしまうほど、ウィスタリアは疲れきっていた。
(まさか、あんなのを婚約者にしたいがために私を殺そうとするとは、流石に思わなかったわ。でも、これがプリムローズの姉にしてほしいことなのよね)
そんなことを思ってしまった。悲しいかな。いつまでも、ウィスタリアはプリムローズの姉だった。それをやめたいと思ったことは、完全になかったわけではないが、それでも妹とはわかり合える日が来るとも思っていた。
だが、結構な高さからプリムローズに突き飛ばされることになったウィスタリアは、それでもどうにかして生きようとする気力がわかなかった。だから、成す術もなく、身を守ることもせずに落下することを選んだ。
突き飛ばされる前にプリムローズは、はっきりとウィスタリアに死んでもらわないと自分が後釜になるのが難しいみたく言っていたのが頭の中でこだましていた。
ウィスタリアとしては、そんなことをしても思い通りになるはずがないと言ってやりたかったが、それはしなかった。
ニタ~と笑う妹をウィスタリアは、人生の最後に見ることになった。そんな顔をしているプリムローズを初めて見た。人間とは思えない顔をしていた。
(私を殺したら、自分が婚約者になれると本気で思ってるみたいね。……こんなことで死ぬなんて思わなかったわ)
そんなことを思ったが、プリムローズに対しての怒りはわかなかった。
怒るよりウィスタリアは……。
(殿下)
王太子になるはずだった想い人にもう一度会いたかったとウィスタリアは、最後に思った。自分が最後の時に想いを馳せたのは、その人だったが思い浮かぶ姿は、隣国で語らった少年だった。
(あの男の子。名前は……)
名前を思い出そうとする前に彼女の人生は、そこで終わることになった。それが何を意味しているかを考える時間もなかった。
そうなったら、あの方に会えると思って諦めたわけではなかった。姿を思い出せなかったのも、会えなくなって随分と経つからで、似ている少年とは最近と言えるくらいに会ったから、思い浮かんだだけかも知れない。
ただ、ウィスタリアが抵抗をしなかったのは、妹の願いを受け入れてしまっただけだ。
まぁ、終わる前にそれなりの痛みがあるかと思ったが、真っ先に致命傷になるところが、ぽっきり折れたことで痛みに悶絶することはなかった。
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