初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

文字の大きさ
37 / 112
第1章

37

しおりを挟む

姉を殺したプリムローズは、自らの手でウィスタリアを殺したというのに大喜びした。

階段の下で、明らかに死んでいるのを見て喜べるのも人として、どうかと思う。周りに人がいたら、物申していただろうが、それを目撃する者はいなかった。


「やったわ! これで、あの人の婚約者に私はなれる。これで、お姉様に勝ったわ」


ソレムと婚約してもらえると喜ぶプリムローズは、姉を殺した罪悪感なんて欠片も持ってはいなかった。今まさに姉を手に掛けたという感覚もなかった。邪魔なのを生ゴミに出したようとでも言えばいいのか。

必要ないものを処分した感覚しかなかった。それこそ、自分の好みに合わない服を捨てるかのようにあとは、ゴミ箱というなの冷たい土の下に埋めるだけ。プリムローズの態度は、そんなようなものだった。

姉に小さい頃、どれだけ世話になってきたかなんてことは頭にはない。すっかり祖父母たちによって、記憶が歪められてしまっていて、逆にどれだけ邪魔されて来たかをプリムローズは忌々しそうにして残っていた。

そう、妹には姉なんて自分の邪魔をする存在でしかなくなっていた。何をしても怒るし、やめろと言う。良かれと思っているのに祖父母があれだけ褒めちぎることですら、邪魔をするのだ。

もっとも、家にいなかったはずで、両親がしていたことのはずなのにその記憶が、姉がしていたことだと思い込んでいたのだ。そう思わせたのは、祖父母だ。

そんな存在でしかなくなっていた。そして、ソレムと婚約していたことが羨ましくて仕方がなかった。

誰もが言っていた。


「ウィスタリア様が羨ましいわ。あんなに将来有望な人と婚約なさるんだもの」
「本当にそうよね。王太子殿下と婚約できなかったのを不思議がっていたけれど。将来性は、間違いないものね」


そんな風に言うのをプリムローズは覚えていた。それは、ジュニパーの取り巻きたちだった。

それだけではない。ソレムにも、他の人たちが褒めちぎっていたのも、ちゃんと聞いた。


「ソレム様みたいな将来有望な方と婚約できるなんて、ウィスタリア様が羨ましいわ」
「本当にそうね」
「ふん。そうだろう」


ソレムは、それに得意顔をしていたのも、プリムローズは見ていた。それも、ジュニパーに媚を売っていた連中と嫌味を彼に言いたかった連中がしたことだ。

ただ、そんなことを話していた令嬢たちが、得意顔をしているソレムに白けた顔やら、正気なのかと言う顔をしていたが、それはプリムローズはそれを見ていなかった。

誰も彼もが、姉を羨んでいた。ソレムのことで、羨んでいたのだ。そう見えたのだ。

ちゃんと聞いていたのだから間違いない。だから、そんな存在の婚約者だったのを亡くしたことで、嘆き悲しんでいれば、姉と違って器量のいい自分を可哀想に思って婚約者にしてくれるはずだと、プリムローズは思ったのだ。

なんというか。かなり強引な、強引すぎるシナリオだが、プリムローズはそれが上手くいかないはずがないと思っていた。

そのために破棄になって、気もそぞらな姉がうっかり躓いたかのようにしたのだ。

上手くいって、死んだことを喜んでしまったのは、仕方がないとプリムローズは思っていた。だって、嬉しいのだから。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...