初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

文字の大きさ
38 / 112
第1章

38

しおりを挟む

でも、プリムローズの思っていた方向に物事が進むことはなかった。これまでも、そうだった。プリムローズがすることなすことで、上手くいったことなど一つもなかった。それを彼女は都合よく忘れていたり、記憶を書き換えて覚えていた。

その中でも、一番強烈に残っているのは姉に邪魔されてばかりいたというものだった。姉のせいにしていれば、自分ができなさすぎることをどうにかできるかのようにしていた。

そんな都合のよいことばかりいたせいで、学園でも友達なんていなかった。いなかったというか。できなかった。


「お姉様の方は、あんなに素晴らしいのに」
「あれが、妹?」
「ウィスタリア様も、大変ね」


好きな格好をしているだけで、馬鹿にされるのだ。プリムローズは、それも全て姉のせいだと思っていた。

その姉が死んだのだ。その上、ウィスタリアの死は事故死となり、プリムローズは自分の思惑通りにことが進んでいるとウキウキしていた。

姉が死んだばかりで、そんな態度をしていれば目立たないわけがない。


「あの子、大丈夫かしら?」
「実のお姉さんが亡くなったから、流石におかしくなったのかも知れないわね」
「まぁ、まともだったかは怪しいけど。でも、そう。姉を思っておかしくなれるくらいは、姉のこと好きだったってことよね」
「……」


そんなことを言う令嬢たちの声が聞こえた令嬢たちも、何とも言えない顔をした。

普段からおかしいのだが、更におかしいのだ。それが、姉が死んだことを悲しんでのことだと言われれば、そう見えなくもない。


「悲しんでいるというか。喜んでいるようにも見えるけど」
「流石にそこまでではないだろ」
「そう、よね」


マルグリットが、ぽつりと見えるままを言葉にしたが、流石にないと否定されて、それを考えるのはやめた。それは、常識のある人間が考えた答えだったからに他ならなかった。

あり得ないことが答えだったなんて、誰が思うだろうか。

そんなプリムローズを見ていられないと泣き出す令嬢は多かった。


「ウィスタリア。約束したのに」
「約束って?」
「ウィスタリアが、忙しくしていたから、誕生日のプレゼントはいらないから、その分をまとめて結婚式に頂戴って言っていたの。あの子のお手製のウェディングケーキよ」
「っ、」
「ウィスタリア様のケーキは、特別でしたものね」
「そうよ。私は、あのケーキが一番好きで、どんなプレゼントよりも、あのケーキを食べられたら、それで1年頑張れた。でも、寝る間も惜しんで忙しくして頑張っているのに誕生日だからとケーキをねだれなかった。だから、結婚式に作ってとお願いしたのに」


マルグリットは、泣くに泣けずにいた。それを聞いて泣く令嬢はいたが、辛すぎて受け止めきれずにいた。

そんな彼女は、ウィスタリアが死んだと知ってから殆ど食べれなくなっていて、婚約者に支えながら帰って行った。

そんな中でも、浮き足立っているプリムローズを見て、令嬢たちは残念な者を見る目をせずに憐れみを抱いた目を向けて見ていた。

事故死したと思われている中に自死したのではないかと言う者もいたが、ソレムとの婚約が破棄となったことで、喜んでも悲しみに暮れることはないと思われたことで、自ら死ぬことはないと思われた。

あの現場を目撃している者がいれば、プリムローズがしたことはすぐにわかったことだ。

それに姉妹の両親は、浮かれきっているプリムローズに不安を持っていた。誰よりも言いしれぬ不安があった。


「あなた。まさか」
「そんなはずはない。流石にありえない」
「そう、よね」


詳しく調べれば事故死ではなくて、殺害されたことがわかりそうだったが、それを両親はしなかったのはプリムローズが関わった気がしてならなかったからに他ならなかった。

両親がウィスタリアの死の真相を明確にするよりも、もみ消すことをしたのは、ウィスタリアが妹に殺されて死んだことが本当だとしたら、あんまりな最後になってしまう。

それよりは、事故死の方がマシだと思ってのことだった。そんな親心なんてプリムローズは欠片も気づいていなかったが、親心ではなくて体面を潰されたくなかっただけにすぎない。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

処理中です...