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しおりを挟む(殿下視点)
「どうした?」
「馬車の事故のようです」
「事故……?」
遠出をしたあとだった。さっさと帰って休みたくなっていたところにそう聞いて眉を顰めずにはいられなかった。
「助けて!」
「っ、」
女の子の声に私は疲れていたのも、どこかに吹っ飛んで馬車から降りていた。
「どうした?!」
「お姉ちゃんを助けて!」
「あの中に……?」
今にも落ちそうになっている馬車の中に人がいるようだ。護衛たちですら、躊躇って動けないところに私は臆することなく向かっていた。
「お姉ちゃん!」
私が手助けします。君は近づくな」
「絶対に助けて」
「わかった」
先ほど私に小鳥を助けてと言った妹を思い出させたからだ。
巣から落ちた小鳥を戻しても駄目だろうと思って、妹にできないと言ったら、妹は落ちた小鳥を巣に戻してやろうとして木に登って落ちた。
私が、できないなんて言ったせいで妹は死んだ。落ちたところにあった石に頭をぶつけたのだ。
それを思い出して、駆け込んでいたのは、自分が再び拒否をしたら、あの女の子が妹のように危険に飛び込むかもしれない。
あんな思いをするのは二度とごめんだった。中には血を流して倒れている女性がいた。
「大丈夫か!?」
「っ、」
「殿下! 危険です!」
「女性がいるんだ。もう、大丈夫だ」
血まみれになっていたが、美しい女性がそこにいた。
妹も、生まれた時から将来を期待されていた。隣国の公爵令嬢よりも、美しくなったかもしれないと今でも言う者がいるくらいだ。
「殿下! 持ちそうもありません!」
「……私は、いいから、逃げて」
「何を言うんだ。絶対に助ける。女の子と約束したんだ。諦めるな」
「っ、」
抱きかかえた女性は、思っていたより軽かったし、いい匂いもした。こんな時でなければ、理性が危なかったが、横転してもう少しで谷底に落ちそうになっていたのもあって、煩悩よりも生還することに集中した。ぎりぎりのところで助けた時には、彼女は気を失っていた。
「なんてことだ。すぐに戻るぞ」
顔から血を流してぐったりする姿に女の子は、死んでしまったと泣き出したが、生きていると知っても怪我をしているのを見て、また泣いた。
その子の姉なのかと思えば、そうではなかった。見ず知らずの女の子を庇って怪我をしたのだとわかり、女の子を危険から遠ざけるために人を呼んでと言ったのに感動もした。
だからこそ、顔の傷を綺麗に治してやりたかった。
それにはじめから諦めたようにしているのも気になっていた。まるで、死に場所を求めているかのように見えて、そこが気になってならなかった。
こんなにも、女性が気になったことは、これまでなかった。
弟は、エイベル国の公爵令嬢のことをしばらく前まで色々言っていたが、大怪我を負ったと聞いてからは、別の令嬢に夢中になっていた。
学園でも、残念がる子息たちは多かった。そういう面々は、あちらに留学して戻って来るなり婚約者と口論になって、婚約破棄となったり、解消となったりしていで、誘惑をするのだと令嬢たちが話すのも耳にした。
子息たちは、そんなことないと怒っていたが、私はその令嬢に興味が持てなかった。
なのにあの馬車から助けた令嬢には、心奪われたのは、顔の美しさからだけでなくて、あの場面で自分の命よりも見ず知らずの女の子のことを助けようとしたその行為に心奪われてしまった。
自分は子供の時のことがあって動いたが、彼女は私のことも助けようとした。そこに惹かれた。
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