見た目だけしか取り柄のない残念な犬好きの幼なじみと仲違いしたので、私は猫好き仲間との恋に邁進します

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一希の家で飼われている麻呂サンの方は、アインシュタインのように遊びたい相手を選んで、やりたいことしかしないなんてことをすることなく、家族に一生懸命に合わせようとしているようだ。

家族のことを嫌いなわけでもないようだが、散歩に犬を忘れて散歩したと思い込む家族に飼われている犬ほど苦労が絶えないことはないはずだ。


（本犬にどう思っているかを聞いてみたいものだわ。まぁ、私としては、犬の気持ちより、アインシュタインが何を思っているかを聞けた方が嬉しいけど）


一希も、高校では千沙都と同じく帰宅部を満喫する気のようだ。中学生の時は朝に麻呂サンの散歩をしていたが、高校生になってからは夕方の散歩の当番をするようになっていた。

一希の家族の誰かが朝に麻呂サンの散歩ではなく、人間の散歩状態になっていても、普通は麻呂サンがいないことに途中で気づくところのはずだが、一希の家族は殆どの場合で最後までいないことに気づかないことが日常となっていた。

最後までというか。犬の散歩をやったと記憶がすり替わるようだ。そう、彼らは犬の散歩をしていると本気で思っていて、犬がいない状態なことに気づかずに人間だけが散歩をし終えるのだ。

最初、犬のことで千沙都やその家族が、それとなく一希の家族にそのことを指摘していたのだが、それでも犬を忘れるのだ。彼らは、まぁいいかと自分の散歩を続けて満喫して帰って行くというか。本当に気づいていないようなのだ。

あれこれ言っていたのは、麻呂サンを飼い始めたより２代前だ。初代の頃から、一希の両親がそんな感じだったせいで、その息子の彼も、それが普通になり過ぎてしまったようで、酷い散歩の仕方をしている気がしてならない。


（どんどん酷くなっていってるのに犬好きって言うのよね。それも、前よりももっと強調して無類の犬好きって、言うくらいだし。でも、どんなに犬が好きでも、どうにも変なことになってると思うのは、私だけではないわよね）


普通は犬の散歩と答えて、肝心の犬がいないと言われたら、恥ずかしく思って二度とそんなことがないようにするところだろう。

それこそ、言われたら、すぐにでも愛犬の散歩をすべく、犬を家に戻って連れ出そうとするところのはずだが、人間が散歩に手応えを感じすぎてしまっていて、麻呂サンの散歩を再開させようとはしないことが増えてしまったのだ。

開き直るにもほどがあるが、それがまずい方向に向かった気がする。

朝晩しているから、たまに片方を忘れても大丈夫だと思っているのかも知れない。そう、１人だけなら、それでもいいが、一希の家族は自分だけがたまに忘れていると思っているようなのだ。

だが、それは間違っている。たまに家族全員が忘れているため、週に何日かを一回の散歩になってしまっている状態なのだ。その辺のことを家族は、バレないようにひた隠しにしているようなのだ。自分は、そんなヘマをしていないと思われたいと思っているようだが、家族にはバレずとも、他所でバレていることをもっと考えてほしいところだ。