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ミアは、王太子を間近で見れて目を輝かせていた。合同授業に王太子は出たことが今までなかったようだ。

それが、ジャスミンが出るとわかって、他の用事を済ませて何とか間に合ったところだった。

ミアのそんな姿に婚約者のオークリーは眉をしかめていた。


「おい。鼻の下なんてのばしているなよ」
「失礼ね。のばしてないわ」


授業を真剣に聞いてはいなかったようだ。

ミアは王太子を、オークリーは王太子たちを見て、眉をしかめていた。顰める相手は王太子ではなくて、ミアのはずだが、彼は王太子がいけ好かないと思ったようだ。


(彼女たちがいると授業どころではないわね。よく、彼女たちと授業を受けていられるものだわ)


妙なことに感心してしまっていて、周りを見渡すとまた始まったかと思う半面、それにも動じない面々がいるのだ。

ジャスミンは、アドレイドたちとクラスで一緒になって楽しく過ごしていた。合同授業には、アドレイドたちは出ようとしなかった。他の貴族たちも、わざわざ平民たちとミアとオークリーと合同授業を受ける気はないようだ。


(まぁ、そうよね)


王太子も、その授業をジャスミンが受けたがると思っていなかったようで、その時間をあけようとするのが大変なようで、ジャスミンは一人でも受けるようになった。

その間、ミアとオークリーに色々と言われ放題になっていたが、それでもほっといた。合同授業の前後で耳障りもいいところだが、ジャスミンは手を出したら負けだと我慢していた。


「ジャスミン。待たせた」


王太子が、授業が終わるとやって来て、それを待ち構えていたミアが、王太子に話しかけていた。

ミアの後ろには面白くなさそうな顔をしているオークリーがいた。


「昼食を一緒に……?」
「えぇ、彼女から誘われたんです。なので、ぜひご一緒させてください。そうよね? ね?」


(一言も言っていないでしょうに。よく言うわ。私が誘ったのは、アドレイドたちなのに)


ミアと彼女の婚約者を王太子は怪訝な顔をして見て、ジャスミンを見た。ジャスミンは、頷いた。

ミアは浮かれていて、オークリーも気乗りしない顔をしながら昼食を共にすることになった。


「え?」
「何だ。これ」
「昼食は、ジャスミンの母国の料理を食べることにしているんだ。聞いてないのか? 他の令嬢には、きちんと説明していたが……」
「え? あ、えっと、聞いてます」


ミアは、王太子に怪訝な顔をされて、そんなことを言っていた。

二人の食べ方は酷かった。


「こんなんで食べれるか!」
「何なの?! こんなので、食べろだなんてどうかしてるわ!」
「どうかしているのは、君たちだ。食べられないなら、断わればいいだけだ。ジャスミンとの一時を台無しにして、更には彼女の母国を侮辱するようなことを言うとは無礼にも程がある」


王太子は、二人に激怒していた。王太子は、ジャスミンの母国を理解しようとしていて、この国の学園を理解しようとしている代わりに食事は、慣れ親しんだものを食べてほしいと王太子が提案したものだった。

それをジャスミンがわがままを言って用意させているとミアは思ったようだ。


「これは、私が用意させている。婚約者が、この国を理解しようとしてくれているから、私もジャスミンの母国を理解したくて頼んで用意しているものだ。それをわがままだと?」
「へ? あ、いえ、その……」


ミアは、ジャスミンが慣れ親しんだものを食べたいがためにこんなところまで用意させていると思い込んでいて、王太子に言われてしどろもどろになっていた。


「理解も、何もないだろ。こんなので食事したって、美味いわけがない」
「ちょっ、オークリー!」
「腹減った。まともなのを食べないと午後がもたない」


オークリーは、そんなことを言って王太子に対して礼の欠片もない態度で、席を立って行ってしまった。

ミアは、オロオロしながら、気分が悪いから、もうどこかに消えてくれと王太子に言われて、顔色悪くしていなくなった。

ジャスミンに対して、何も言うこともなくミアはいなくなったのだ。王太子だけに謝罪して、ジャスミンなどいないかのようだったのにも、王太子は腹を立てていた。

ジャスミンは、何事もないように食事をしていて、王太子は無礼極まりない二人の家に苦情と抗議をしていた。その話を聞いた王妃も激怒して、二人の家を王妃主催のお茶会に呼ぶことはなかった。


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