史上最弱の魔王として召喚された高校生は人類種のガンとなる

gulu

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第25話:インビジブル・キャンサー

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 寝床について、これまでの事を思い返すが、特に何もしていないので何も思い浮かばなかった。
 下手に動くと人間側が暴走するかもしれないので、最近は屋敷の中にしか≪遍在≫を使っていない。

 なので、ブランチマンにドッペルゲンガーを工作員として完璧に仕上げる為、彼らの血を赤くできないか相談した事を思い出した。
 結果的には血は赤くなったが、副作用で死ぬので諦めた。
 使い道がひとつしかないもん。

 シュラウには洗脳のようだけど、メンタル面に不安があるので≪権能≫で落ち着いてもらった。
 とはいえ、気まずい雰囲気があるのであまり顔を合わせてない。
 今だって喉が渇いたから≪遍在≫で生み出した自分自身で飲み物を運んでいるんだから。

 部屋に戻る最中に背後から気配を感じたので振り返ると、黒衣を纏った男達と目の前にまで飛んで来たナイフを見た。

 そして次の瞬間、僕の意識は寝室へと戻された。
 うん、刺客である。
 まぁそろそろやってくるかーとは思ってたよ。
 人類の悪を被せる為には魔王の存在が必要だが、別に生きている必要はない。

 僕を恨みがましく見ていたブッカーと呼ばれてた人からすれば、さっさと排除したかった事だろう。

 そして僕が逃げる間もなく、一人の足音が暗闇の部屋へと入ってきた。
 足音が一人分しかなかったという事は、散開して僕の居場所を突き止めたという事か。

 彼は一言も発する事無くベッドに隠れている僕に向かって剣を何度も突き刺してシーツを赤く染め上げ、その場から即座に撤退した。
 あまりの早業に僕は言葉一つも発せなかった。

 それからスグに誰かの早足が聞こえる。
 といっても、この屋敷にいる闇の種族は一人しかいない。

「そ……そん、な……魔王……様…ッ!」

 彼女は取り乱しながら血まみれたシーツをめくり、そしてその惨状を目の当たりにしてしまった。

「ア……ア、アアアァァ……申し訳ありません、魔王様……私が…私のせいで、こんな事に…ッ!」

 流石にこのままにしておいたら負い目で自害しそうなので、ベッドの下から出る。

「え……ま、魔王様!? どうしてそんな所に!」

 刺客が来るのが分かってたから隠れてたのさ。

 僕の遍在って近くに人間がいたら使えないでしょ?
 だから地図を指差しながらざっと≪遍在≫を使えない場所を探せば、そこに人がいることが分かる。
 そしてこんな場所に来るには何日も必要になる。
 だから事前に僕だけが察知できたというわけだ。

「で、ではこの方はいったい……?」

 あぁ、それ前の名前はインサさんで、今は僕のドッペルゲンガー。
 ブランチマンの薬で血を赤くしてある死体だよ。

 どうしてこんな事したのかって?
 そりゃあ人間側が絶対に僕を殺そうとしてくる事が分かってたからね。

 彼らは僕の能力が一度切りの復活だと思っている。
 だから僕は極力≪遍在≫を使って活動していた。
 そして彼らはその≪遍在≫の僕を殺して一度殺したと勘違いした。

 そしてもう一度僕を殺す為にここを探す事だろう。
 だから僕はベッドに自分の姿をしたドッペルゲンガーの死体を置いておいたということさ。
 死体をいくら斬られようと刺されようと、僕は痛くもかゆくもないからね。 

 唯一の懸念としてはシュラウが巻き込まれないかって事だったけど、無事でよかったよ。

「はぁ……。それで魔王様、殺されそうになりましたし、人間に復讐されるのでしょうか?」

 え、絶対に嫌だよ。
 せっかく死んだって勘違いしてくれたのにどうしてそんな事しないといけないの?

 僕は勝ち取った生存権に胡坐をかいて、ゆったりと暮らさせてもらうよ。
 あぁ、でも念の為にシュラウには≪権能≫を使わせてもらうよ。

「え……な、なにを―――」

 バックストーリーとしてはこうだ。
 キミは僕の死体を見て取り乱す。
 そして自分の無力さに絶望して心が壊れてしまった。
 だからキミは魔王が死んだと思い込み、これからずっと一人しかいない屋敷で二人分の食事を用意したり、誰もいないと知りながらも誰かに話しかけて生き続ける。

 つまり、キミはこれからずっと僕の事を認識できなくなる。
 これで人間側が確認しに戻ってきたとしても、バレずに済むね。

「あ……え……?」

 これで僕はようやく自分の人生をやり直す事ができそうだ。
 街で新しい身分を手に入れてもいいし、ここでスローライフを堪能してもいい。
 これで僕は自由だ。

 何、不安がる必要はないよ。
 大丈夫、キミら闇の種族が助けを求めるとき、僕は必ず助けよう。
 キミが召喚してくれたおかげで、僕はやり直す事すらできなかったあの世界から逃げる事ができたんだからね。

 どんなときだろうと、なにがあろうと、どんなことが起きようとも―――。
僕は キミらの 側にいる。

 嗚呼、素晴らしき哉、新たなる我が人生よ。
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