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第一章 神の子
六話 それは不味い食事(2)
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フォークでステーキを刺したあと、アルカの方へと目を向けた。ただ俯いている姿が視界にうつった。大方、なぜ急に性格が変わったのか考えているはずだ。
もう一度、ステーキへと目を向ける。
「ねぇ、聞きたいんだけど」
「は…っ!はい!」
私の声に反応し、すぐさま顔を上げた。私は持っていたフォークを抜き、定位置に置き直した。
「貴方の本名は何かしら?」
「で、ですからアルカと……!」
「それ、嘘よね」
全身は震え、人がいるのを忘れているのか親指の爪を噛んでいる。これは、普通にただの考察だ、私自身の予測にしかすぎなかった。
「私も馬鹿じゃないわ、だって、おかしいもの。奥様の名前はアルネ、姉はアネリー、家族だし、ここの名前が似てるのはわかるわ。そして貴方はアルカ、と…偶然?そんなわけないわ。だって、貴方はずっとアルネになりたがってた」
秘密が暴かれていく中、余裕などなくただ恐怖に襲われていた。
そう、いつだって、アルカはアルネになりたがってた。尊敬しながらも、その瞳に写っていたのは欲である。
「奥様の地位と信頼を尊敬と同様に羨ましくてしょうがなかった。だから、似たような名前にした、自分が奥様になれるように。違うかしら?」
「……っ、そう、です」
「なら、もう一度聞くわ。お名前は?」
アルカは最初こそ震えていたが、もう震えは収まっていた。俯き、また何かを考えているようだ。
しばらくすると、決心がついたのか、恐る恐ると言葉を発した。
「……私の本名はマリー、と申します」
「マリー、ねぇ……ねぇ、貴方、暗殺の心得もあるでしょう」
「なっ!なぜそれをッッ!!!」
「でしょうね、口外はしないから安心しなさい」
これで、獲物は仕留めた。
ーーー過去に毒殺されたからとは言えないわね…
私は昔から毒耐性があった。実の親に腐った物を食わされたり、料理の毒見役に回ったこともあるため、毒の特性などは大体把握している。
けど、マリーの毒はわからなかった。食べたことない毒、一般的に出回ってないものだとここまでは考察できる。
そして、なによりマリーは動じなかった。怯えて、恐れていた、けれど、あの目つきはそんじょそこらでできるものではない。あれは殺しをしている人の目だ。
「まぁ、よく考えれば簡単な考察よ。貴方の手や性格だってそれじゃないの」
「……本当に貴方はお嬢様なのですか」
何かを疑い、探り入れるような視線。その瞳には私しか写っていなかった。
私は一つくすっと笑いを溢し、料理の方を指さした。
「ふふっ…そうよ、それで?この料理、どうするの?」
「……さすが、気づいてましたか。今すぐ取り替えてきます」
手早く、その料理達を私の前から奪い去る。
知っていた、これもまた毒入りなのだと。
暗殺者だからこそ、馬鹿な相手と賢明な相手か調べるためにこの方法を使ったのだろう。
またしばらくして運ばれてきた料理は、先程と同じメニューだった。
ステーキを切り取り、肉の欠片を口に運び咀嚼した。その様子をまじまじと見つめるマリー。
会話もなく、ただひたすらに空っぽの腹の中に食べ物を与え続けた。実際、いつも食べたがってた豪華な料理に然程美味しいとは思えなかった。口の中で固形物をかみ、飲み込む、味なんてわからないほどに壊れているのかもしれないと悟る。
ーーーあぁ、不味い食事ね。
始めての美味しいはずの食事に心底そう思った。
もう一度、ステーキへと目を向ける。
「ねぇ、聞きたいんだけど」
「は…っ!はい!」
私の声に反応し、すぐさま顔を上げた。私は持っていたフォークを抜き、定位置に置き直した。
「貴方の本名は何かしら?」
「で、ですからアルカと……!」
「それ、嘘よね」
全身は震え、人がいるのを忘れているのか親指の爪を噛んでいる。これは、普通にただの考察だ、私自身の予測にしかすぎなかった。
「私も馬鹿じゃないわ、だって、おかしいもの。奥様の名前はアルネ、姉はアネリー、家族だし、ここの名前が似てるのはわかるわ。そして貴方はアルカ、と…偶然?そんなわけないわ。だって、貴方はずっとアルネになりたがってた」
秘密が暴かれていく中、余裕などなくただ恐怖に襲われていた。
そう、いつだって、アルカはアルネになりたがってた。尊敬しながらも、その瞳に写っていたのは欲である。
「奥様の地位と信頼を尊敬と同様に羨ましくてしょうがなかった。だから、似たような名前にした、自分が奥様になれるように。違うかしら?」
「……っ、そう、です」
「なら、もう一度聞くわ。お名前は?」
アルカは最初こそ震えていたが、もう震えは収まっていた。俯き、また何かを考えているようだ。
しばらくすると、決心がついたのか、恐る恐ると言葉を発した。
「……私の本名はマリー、と申します」
「マリー、ねぇ……ねぇ、貴方、暗殺の心得もあるでしょう」
「なっ!なぜそれをッッ!!!」
「でしょうね、口外はしないから安心しなさい」
これで、獲物は仕留めた。
ーーー過去に毒殺されたからとは言えないわね…
私は昔から毒耐性があった。実の親に腐った物を食わされたり、料理の毒見役に回ったこともあるため、毒の特性などは大体把握している。
けど、マリーの毒はわからなかった。食べたことない毒、一般的に出回ってないものだとここまでは考察できる。
そして、なによりマリーは動じなかった。怯えて、恐れていた、けれど、あの目つきはそんじょそこらでできるものではない。あれは殺しをしている人の目だ。
「まぁ、よく考えれば簡単な考察よ。貴方の手や性格だってそれじゃないの」
「……本当に貴方はお嬢様なのですか」
何かを疑い、探り入れるような視線。その瞳には私しか写っていなかった。
私は一つくすっと笑いを溢し、料理の方を指さした。
「ふふっ…そうよ、それで?この料理、どうするの?」
「……さすが、気づいてましたか。今すぐ取り替えてきます」
手早く、その料理達を私の前から奪い去る。
知っていた、これもまた毒入りなのだと。
暗殺者だからこそ、馬鹿な相手と賢明な相手か調べるためにこの方法を使ったのだろう。
またしばらくして運ばれてきた料理は、先程と同じメニューだった。
ステーキを切り取り、肉の欠片を口に運び咀嚼した。その様子をまじまじと見つめるマリー。
会話もなく、ただひたすらに空っぽの腹の中に食べ物を与え続けた。実際、いつも食べたがってた豪華な料理に然程美味しいとは思えなかった。口の中で固形物をかみ、飲み込む、味なんてわからないほどに壊れているのかもしれないと悟る。
ーーーあぁ、不味い食事ね。
始めての美味しいはずの食事に心底そう思った。
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