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39.そしてお茶会です その2
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「…全員で顔を合わせたのは、私たちが6歳になってからだったわ。ジークフリート殿下は1つ上ですけれど…ローズ様とジーク様の婚約は既に決まっておりましたので、私はトーマスとの流れになりましたの。そして、お父様が魔法省長官のエトルは、伯爵令嬢で希少な光魔法持ちのリーゼ様がお相手になったわ」
そして、ある程度の地位の貴族のお子さま達は、10歳頃には魔力判定を受け、家庭教師と練習を始めたりするらしい。
「この辺の話は初めてかしら?」
「ええ。聞いてはおりませんでした」
ローズとジークとぶっちゃけたのが3日前だ。そう考えると濃い時間を過ごしているけれど、細部を聞く時間は無かった。それは仕方のないところだ。
「子どもの頃は…そうね、その頃が一番婚約者らしかったかもしれない。しっかり、ちゃんと初恋だったかも、とも思うわ」
「セレナ様……」
「それが、お茶会の機会が増え、ジーク様の側近候補になると彼の周りに男性も女性も集まる人が増えてきて。私との時間が段々と減ってきたの」
うん……それを煩わしく思うか、調子に乗ってしまうかに分かれたりしますよね、人って。
「そして側近候補になった他の三人と過ごすことが増えると、ますます顕著に……ライバルでもありますから、張り合うようにもなっていて…学園に入る頃にはもう、あのような仕上がりになっておりました」
仕上がり……言い方…(笑)でも、気持ちは解ります。
「もちろん、その度に何度も諫めたのです。でも、すればするほどに離れて行かれて」
うん……。
「仕舞いには、私とはどうせ結婚するのだから放って置くようにと言う始末です。…ライバルがいたお陰と言うべきか、学業はおろそかにはなりませんでしたが、仲間が出来た分、罪悪感も減っているようにも感じましたわ」
ちょっとした集団心理だよねぇ……。
『赤信号、皆で渡れば怖くない』ってやつだ。…これも古いかしら…?
「もう、初恋も何も分からなくなって来て……家族に婚約を考え直せないか相談しても、一時期だけだと私が諭されてしまい…結婚すれば、落ち着くと」
「は?!何を言っていらっしゃる?!」
セレナ様と、ラインハルト様まで少し驚いた顔をしているが、私は構わず続ける。
「浮気性なんて、結婚したから直るとかはめーーーったにないですよ!!調子に乗るだけです!もうしないと約束しても、何をしても繰り返す……!相手がいつまでも自分を好きだと思い込んで、好き勝手するんですよ!!もう、クセです、クセ!」
「……エ、エマ嬢……?」
ラインハルト様の声にハッとする。しまった、私はエマでした。つい、女好きの彼氏と付き合ってしまった前世の黒歴史を思い出してしまった。
「…………と、母が申しておりました……」
ごめん、母さん。
「まあ、お母様もご苦労されたのね」
「…その後父に会って、幸せになったようですが」
ほんとにごめん。帰ったら親孝行するから許してもらおう。
「でも、そうね。…本人の気性で、直らないのかもしれない。けれど、私にも彼を引き留める魅力が無かったのだろうとも思うのよ。ジーク様とローズ様はずっと変わらずに仲睦まじいのだもの」
あの二人は特別枠な所もあるけれども。でも、確かに特別だからと、必ず変わらない訳ではないのだ。お互いを、ずっと大切に想わなければ。
「セレナ様……」
「情けないわよね、ごめんなさい。でも、彼がエマ様に惹かれるのは理解できてしまって。私が前に出ると騒ぎが大きくなる心配もありましたし…でも本音を言うと、もう、疲れてしまって。彼が聖女様と結ばれるのなら、それは国としても悪いことでもないし。エマ様が良ければいいかしら、とも考えてしまったり……。
エマ様は、終始困っていらしたのにごめんなさい。先程は、ああ言ったけれど……きっと私、自分に自信が無かったのでしょうね」
自嘲気味に笑うセレナ様。
……怒りが沸々と沸き上がる。
「じ、自信が無いって、何ですか!先程、ご自分でもあのバカには勿体ないと仰っていたじゃないですか!」
セレナ様が目を見開いて、私を見る。
「そうですよ、勿体ないですよ!他の、リーゼ様たちもです!嫌な思いをしていただろうに、皆さん私にお優しかった!授業で一緒になった時も、変わらずに接して下さって、」
「……当たり前のことですわ、エマ様。貴女のせいではないもの」
当然の事のように言う。…それが、
「それを当然にと出来ることが、どれだけ難しいと思っているのですか!ずっと、あんな綺麗な魔力を持ち続けていられて…真っ直ぐに……もう、悔しいっっ!!彼らはずっと当たり前のように傍にいてもらえて、有り難さに気づけていない、大バカ者ですよ!」
止まらない。
「私にフラついたのも、きっと物珍しさもあってです。皆さんに勝っているものなど、私は持ち合わせておりません。…もうほんとに、私が皆さんをお嫁に欲しいくらいですからね!」
……あれ、何かズレたかしら?
「ふ、ふふっ、もう、そんなに怒ってくれてありがとう。…でも、聖女を物珍しい表現はいかがなものかと思うけれど」
珍獣枠みたいなところ、あると思いますけれど。
「ふふっ、でも私もエマ様のお嫁さんになりたいわ」
「是非!」
「なに是非とか言ってるの。エマ嬢は俺が口説いてるでしょー」
今まで黙っていたラインハルト様が参戦する。
「ふふふ、ハルト様、ライバルですわね!」
「セレナ嬢まで……」
「冗談ですわ」
えっ、冗談なの?
「エマ嬢、がっかりしないの」
ラインハルト様、よく分かったな。
「ありがとう、元気づけてくれて。そうですわね、このままでいても仕方ないわ。……私、この婚約をどうするのかも、エマ様の目指すもののお手伝いをすることも、きちんと考えるわ。合わせて父と相談してみます。私も、自分の道を進みたい」
「セレナ様!」
「でも、エマ様。私が話に乗らず、エマ様のアイデアを横取りして侯爵家我が家が事業を始めることとか、考えませんでしたの?」
「え?そうですね、考えなかったですね。だって、セレナ様清らかですもの。でももし、お家で事業を起こしていただけるのなら、それはそれで大歓迎です!誰もやっていないので私がと思っていますけれど、どなたかいれば、やっていただけると!皆で楽しく暮らせたらというだけなので、自分が全てをとは拘っておりません」
むしろ、助かります。
「………………」セレナ様?あれ?おかしい、かな?
「あはははは!もうダメ、大きな声になってしまうわ!もう、やっぱりエマ様は聖女よ!私、大好きです!」
そう言って抱き締められる。嬉しい。嬉しくて。
「……あら、エマ様、泣いてるの?」
「……だあっでぇ……う、嬉しくて……」
「私も、嬉しいわ」
今日は1日、感情が忙しい。
淑女の仮面も粉々だ。でもそれが心地いい。
優しい笑顔のラインハルト様に見られているのも恥ずかしいけれど。……今日は感謝の日だ。
そして、ある程度の地位の貴族のお子さま達は、10歳頃には魔力判定を受け、家庭教師と練習を始めたりするらしい。
「この辺の話は初めてかしら?」
「ええ。聞いてはおりませんでした」
ローズとジークとぶっちゃけたのが3日前だ。そう考えると濃い時間を過ごしているけれど、細部を聞く時間は無かった。それは仕方のないところだ。
「子どもの頃は…そうね、その頃が一番婚約者らしかったかもしれない。しっかり、ちゃんと初恋だったかも、とも思うわ」
「セレナ様……」
「それが、お茶会の機会が増え、ジーク様の側近候補になると彼の周りに男性も女性も集まる人が増えてきて。私との時間が段々と減ってきたの」
うん……それを煩わしく思うか、調子に乗ってしまうかに分かれたりしますよね、人って。
「そして側近候補になった他の三人と過ごすことが増えると、ますます顕著に……ライバルでもありますから、張り合うようにもなっていて…学園に入る頃にはもう、あのような仕上がりになっておりました」
仕上がり……言い方…(笑)でも、気持ちは解ります。
「もちろん、その度に何度も諫めたのです。でも、すればするほどに離れて行かれて」
うん……。
「仕舞いには、私とはどうせ結婚するのだから放って置くようにと言う始末です。…ライバルがいたお陰と言うべきか、学業はおろそかにはなりませんでしたが、仲間が出来た分、罪悪感も減っているようにも感じましたわ」
ちょっとした集団心理だよねぇ……。
『赤信号、皆で渡れば怖くない』ってやつだ。…これも古いかしら…?
「もう、初恋も何も分からなくなって来て……家族に婚約を考え直せないか相談しても、一時期だけだと私が諭されてしまい…結婚すれば、落ち着くと」
「は?!何を言っていらっしゃる?!」
セレナ様と、ラインハルト様まで少し驚いた顔をしているが、私は構わず続ける。
「浮気性なんて、結婚したから直るとかはめーーーったにないですよ!!調子に乗るだけです!もうしないと約束しても、何をしても繰り返す……!相手がいつまでも自分を好きだと思い込んで、好き勝手するんですよ!!もう、クセです、クセ!」
「……エ、エマ嬢……?」
ラインハルト様の声にハッとする。しまった、私はエマでした。つい、女好きの彼氏と付き合ってしまった前世の黒歴史を思い出してしまった。
「…………と、母が申しておりました……」
ごめん、母さん。
「まあ、お母様もご苦労されたのね」
「…その後父に会って、幸せになったようですが」
ほんとにごめん。帰ったら親孝行するから許してもらおう。
「でも、そうね。…本人の気性で、直らないのかもしれない。けれど、私にも彼を引き留める魅力が無かったのだろうとも思うのよ。ジーク様とローズ様はずっと変わらずに仲睦まじいのだもの」
あの二人は特別枠な所もあるけれども。でも、確かに特別だからと、必ず変わらない訳ではないのだ。お互いを、ずっと大切に想わなければ。
「セレナ様……」
「情けないわよね、ごめんなさい。でも、彼がエマ様に惹かれるのは理解できてしまって。私が前に出ると騒ぎが大きくなる心配もありましたし…でも本音を言うと、もう、疲れてしまって。彼が聖女様と結ばれるのなら、それは国としても悪いことでもないし。エマ様が良ければいいかしら、とも考えてしまったり……。
エマ様は、終始困っていらしたのにごめんなさい。先程は、ああ言ったけれど……きっと私、自分に自信が無かったのでしょうね」
自嘲気味に笑うセレナ様。
……怒りが沸々と沸き上がる。
「じ、自信が無いって、何ですか!先程、ご自分でもあのバカには勿体ないと仰っていたじゃないですか!」
セレナ様が目を見開いて、私を見る。
「そうですよ、勿体ないですよ!他の、リーゼ様たちもです!嫌な思いをしていただろうに、皆さん私にお優しかった!授業で一緒になった時も、変わらずに接して下さって、」
「……当たり前のことですわ、エマ様。貴女のせいではないもの」
当然の事のように言う。…それが、
「それを当然にと出来ることが、どれだけ難しいと思っているのですか!ずっと、あんな綺麗な魔力を持ち続けていられて…真っ直ぐに……もう、悔しいっっ!!彼らはずっと当たり前のように傍にいてもらえて、有り難さに気づけていない、大バカ者ですよ!」
止まらない。
「私にフラついたのも、きっと物珍しさもあってです。皆さんに勝っているものなど、私は持ち合わせておりません。…もうほんとに、私が皆さんをお嫁に欲しいくらいですからね!」
……あれ、何かズレたかしら?
「ふ、ふふっ、もう、そんなに怒ってくれてありがとう。…でも、聖女を物珍しい表現はいかがなものかと思うけれど」
珍獣枠みたいなところ、あると思いますけれど。
「ふふっ、でも私もエマ様のお嫁さんになりたいわ」
「是非!」
「なに是非とか言ってるの。エマ嬢は俺が口説いてるでしょー」
今まで黙っていたラインハルト様が参戦する。
「ふふふ、ハルト様、ライバルですわね!」
「セレナ嬢まで……」
「冗談ですわ」
えっ、冗談なの?
「エマ嬢、がっかりしないの」
ラインハルト様、よく分かったな。
「ありがとう、元気づけてくれて。そうですわね、このままでいても仕方ないわ。……私、この婚約をどうするのかも、エマ様の目指すもののお手伝いをすることも、きちんと考えるわ。合わせて父と相談してみます。私も、自分の道を進みたい」
「セレナ様!」
「でも、エマ様。私が話に乗らず、エマ様のアイデアを横取りして侯爵家我が家が事業を始めることとか、考えませんでしたの?」
「え?そうですね、考えなかったですね。だって、セレナ様清らかですもの。でももし、お家で事業を起こしていただけるのなら、それはそれで大歓迎です!誰もやっていないので私がと思っていますけれど、どなたかいれば、やっていただけると!皆で楽しく暮らせたらというだけなので、自分が全てをとは拘っておりません」
むしろ、助かります。
「………………」セレナ様?あれ?おかしい、かな?
「あはははは!もうダメ、大きな声になってしまうわ!もう、やっぱりエマ様は聖女よ!私、大好きです!」
そう言って抱き締められる。嬉しい。嬉しくて。
「……あら、エマ様、泣いてるの?」
「……だあっでぇ……う、嬉しくて……」
「私も、嬉しいわ」
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