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38.そしてお茶です その1
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「エマ様、セレナ様、どうぞこちらへ」
放課後になり、セレナ様と私は食堂に来ている。
食堂で働いている方々はシェフの他に侍女執事対応のできる給仕の方もいて、今日はその侍女さんの案内で食堂奥のサロンへ案内された。予約制ではあるが、いくつかの部屋があり、生徒なら誰でも使えるのだ。今回は、わざわざラインハルト殿下が予約をして下さった。
ちなみにですが、ローズは今日から本格的に魔法練習です。ジークも付き添っている。そして私はローズが月の力に慣れてからの、少し後日から参加することになっております。
「ラインハルト殿下、お二人をお連れしました」
侍女さんがドアをノックして、声をかける。
「ああ、ありがとう、どうぞ」
ラインハルト様の返事を聞いて、侍女さんがドアを開けてくれた。
部屋の中は、趣味のいいアンティークで揃えた喫茶店のような内装だ。これはこれで落ち着く。
「ようこそ、エマ嬢、セレナ嬢、ここへ座って?」
部屋の真ん中辺りに、可愛い丸テーブルが置いてあり、そこに椅子が三脚。
殿下がそれぞれ椅子を引いて、私達をエスコートして座らせてくれた。
そして侍女さんが、やはりテキパキとお茶の準備を整えてくれる。どこの侍女さんも、皆さんプロだわ。
「カナ、ありがとう。後は自分たちでやるから大丈夫。下がっていいよ」
「かしこまりました。何かご用の際にはベルでお知らせ下さい」
侍女さん…カナはお辞儀をして退室した。
「さて、改めてようこそ、私の主催のお茶会へ!美しいレディたち」
ラインハルト様は、ティーカップを持ち上げてウィンクする。
「……お招きありがとうございます、ラインハルト様」
セレナ様が笑顔で答える。さすが侯爵令嬢だ。
「ありがとうございます」
私も答える。いろいろと思うところもあるが、そこは置いておいて。
「二人共、固いなあ。まあ、無理もないか。とりあえずお茶をどうぞ」
ラインハルト様が苦笑気味に言う。私達はお茶を一口飲む。
「さて、このままでも仕方ないし。エマ嬢はセレナ嬢にお願いがあるんだよね?…セレナ嬢だけでなく、リーゼ嬢、ソフィア嬢、シャロン嬢にもか」
「……私達に?」
セレナ様がきょとんとする。そうよね、皆さん彼等の婚約者さまだ。
ストレートだなー!ラインハルト様ー!
しかし、ここで遠慮していても引いても仕方ない!女は度胸だ!いくぞ、エマ!!
……でもフラれたら、ローズに慰めてもらおう。
「はい。実は私、考えていることがございます」
エマの事業計画、プレゼンします!
◇◇◇
「……エマ様が素晴らしい計画をお持ちなのは解りました。それで、私達に頼みというのは…?」
「はい。皆さんの魔法の力をお借りしたくて」
「……魔法?」
「はい。セレナ様の水と土、リーゼ様の光と水、ソフィア様の火と風、シャロン様の火と水を。…ある意味では地味な作業かも知れませんが…魔法を融合しながらの農地改良、薬の改良などにご協力いだけたら心強いなと……」
「地味とは思いませんわ。とても大切な作業よ。…でもなぜ、私達に?こう言っては何ですが、特に珍しい魔力ではありませんわ。…リーゼ様の光魔法は、希少ではありますが…エマ様ご自身が素晴らしいですし」
「うーん、ええと…珍しさではなく……説明は難しいのですが、皆さんの魔力の質・が好きなんですよね」
「……質?」
「はい。皆さんとても真っ直ぐで、澄んだ魔力です!とても気持ちのいい魔力なんです。なかなかいらっしゃらないのですよ!あっ、そういった意味では珍しいと言えます!それが、四人も…!魔法の融合もお上手だし、本当に婚約者が勿体ないと……」
はっ!…………しまった、口が滑った。
「……も、申し訳ありません!」
やらかした。慌てて謝罪する。もうこれ、悪い癖なんだよなあ……張り切り過ぎると、つい。
……これは、ラインハルト殿下の顔も潰してしまったのでは……頭を下げつつ、だらだらと嫌な汗が背中に流れる。
……暫しの沈黙。
「ふっ、ふふっ!本当に素直な方なのね、エマ様!」
えっ、え?セレナ様?あれ?
「ハルト様の仰る通りの方!あのバカ四人が気に入るのも分かるわ。奴等にはそれこそ勿体ない方ですけれど」
あのバカ?奴等?物腰は丁寧だけど、不思議な言葉が混じっておりますよ…?
「レナ嬢、エマ嬢が大混乱だよ」
「あら、ごめんなさい、エマ様。先程の事は気になさらないで?やっぱり私って、トーマスあのバカには勿体ないと思っていただけますわよねぇ?」
ブンブンと、思わず本気で頷いてしまった。あ、またやっちまった。
「はっ、またスミマセン!」
「ふふふっ!もう本当に素直な方!今回の件で落ち着くかは分かりかねますが、まあ、最後にエマ様に舞い上がったのは誉めて差し上げようと思うわ。…でも、エマ様はご迷惑でしたよね?ごめんなさい」
ちょ、ちょっと頭が付いていかないです…これは、どういう……。
「兄上、トーマス、エトルと、ローズ義姉さん、セレナ嬢はいわゆる高位貴族の幼なじみだよ。俺も途中で混ぜてもらってるけど」
ラインハルト様が説明してくれる。高位貴族の幼なじみ……確かによく本で読んだな。
「そうなの。勿論、皆さん大切な幼なじみなのだけれど……」
はにかむような、苦笑のような、複雑なお顔になるセレナ様。
気になります。
放課後になり、セレナ様と私は食堂に来ている。
食堂で働いている方々はシェフの他に侍女執事対応のできる給仕の方もいて、今日はその侍女さんの案内で食堂奥のサロンへ案内された。予約制ではあるが、いくつかの部屋があり、生徒なら誰でも使えるのだ。今回は、わざわざラインハルト殿下が予約をして下さった。
ちなみにですが、ローズは今日から本格的に魔法練習です。ジークも付き添っている。そして私はローズが月の力に慣れてからの、少し後日から参加することになっております。
「ラインハルト殿下、お二人をお連れしました」
侍女さんがドアをノックして、声をかける。
「ああ、ありがとう、どうぞ」
ラインハルト様の返事を聞いて、侍女さんがドアを開けてくれた。
部屋の中は、趣味のいいアンティークで揃えた喫茶店のような内装だ。これはこれで落ち着く。
「ようこそ、エマ嬢、セレナ嬢、ここへ座って?」
部屋の真ん中辺りに、可愛い丸テーブルが置いてあり、そこに椅子が三脚。
殿下がそれぞれ椅子を引いて、私達をエスコートして座らせてくれた。
そして侍女さんが、やはりテキパキとお茶の準備を整えてくれる。どこの侍女さんも、皆さんプロだわ。
「カナ、ありがとう。後は自分たちでやるから大丈夫。下がっていいよ」
「かしこまりました。何かご用の際にはベルでお知らせ下さい」
侍女さん…カナはお辞儀をして退室した。
「さて、改めてようこそ、私の主催のお茶会へ!美しいレディたち」
ラインハルト様は、ティーカップを持ち上げてウィンクする。
「……お招きありがとうございます、ラインハルト様」
セレナ様が笑顔で答える。さすが侯爵令嬢だ。
「ありがとうございます」
私も答える。いろいろと思うところもあるが、そこは置いておいて。
「二人共、固いなあ。まあ、無理もないか。とりあえずお茶をどうぞ」
ラインハルト様が苦笑気味に言う。私達はお茶を一口飲む。
「さて、このままでも仕方ないし。エマ嬢はセレナ嬢にお願いがあるんだよね?…セレナ嬢だけでなく、リーゼ嬢、ソフィア嬢、シャロン嬢にもか」
「……私達に?」
セレナ様がきょとんとする。そうよね、皆さん彼等の婚約者さまだ。
ストレートだなー!ラインハルト様ー!
しかし、ここで遠慮していても引いても仕方ない!女は度胸だ!いくぞ、エマ!!
……でもフラれたら、ローズに慰めてもらおう。
「はい。実は私、考えていることがございます」
エマの事業計画、プレゼンします!
◇◇◇
「……エマ様が素晴らしい計画をお持ちなのは解りました。それで、私達に頼みというのは…?」
「はい。皆さんの魔法の力をお借りしたくて」
「……魔法?」
「はい。セレナ様の水と土、リーゼ様の光と水、ソフィア様の火と風、シャロン様の火と水を。…ある意味では地味な作業かも知れませんが…魔法を融合しながらの農地改良、薬の改良などにご協力いだけたら心強いなと……」
「地味とは思いませんわ。とても大切な作業よ。…でもなぜ、私達に?こう言っては何ですが、特に珍しい魔力ではありませんわ。…リーゼ様の光魔法は、希少ではありますが…エマ様ご自身が素晴らしいですし」
「うーん、ええと…珍しさではなく……説明は難しいのですが、皆さんの魔力の質・が好きなんですよね」
「……質?」
「はい。皆さんとても真っ直ぐで、澄んだ魔力です!とても気持ちのいい魔力なんです。なかなかいらっしゃらないのですよ!あっ、そういった意味では珍しいと言えます!それが、四人も…!魔法の融合もお上手だし、本当に婚約者が勿体ないと……」
はっ!…………しまった、口が滑った。
「……も、申し訳ありません!」
やらかした。慌てて謝罪する。もうこれ、悪い癖なんだよなあ……張り切り過ぎると、つい。
……これは、ラインハルト殿下の顔も潰してしまったのでは……頭を下げつつ、だらだらと嫌な汗が背中に流れる。
……暫しの沈黙。
「ふっ、ふふっ!本当に素直な方なのね、エマ様!」
えっ、え?セレナ様?あれ?
「ハルト様の仰る通りの方!あのバカ四人が気に入るのも分かるわ。奴等にはそれこそ勿体ない方ですけれど」
あのバカ?奴等?物腰は丁寧だけど、不思議な言葉が混じっておりますよ…?
「レナ嬢、エマ嬢が大混乱だよ」
「あら、ごめんなさい、エマ様。先程の事は気になさらないで?やっぱり私って、トーマスあのバカには勿体ないと思っていただけますわよねぇ?」
ブンブンと、思わず本気で頷いてしまった。あ、またやっちまった。
「はっ、またスミマセン!」
「ふふふっ!もう本当に素直な方!今回の件で落ち着くかは分かりかねますが、まあ、最後にエマ様に舞い上がったのは誉めて差し上げようと思うわ。…でも、エマ様はご迷惑でしたよね?ごめんなさい」
ちょ、ちょっと頭が付いていかないです…これは、どういう……。
「兄上、トーマス、エトルと、ローズ義姉さん、セレナ嬢はいわゆる高位貴族の幼なじみだよ。俺も途中で混ぜてもらってるけど」
ラインハルト様が説明してくれる。高位貴族の幼なじみ……確かによく本で読んだな。
「そうなの。勿論、皆さん大切な幼なじみなのだけれど……」
はにかむような、苦笑のような、複雑なお顔になるセレナ様。
気になります。
応援ありがとうございます!
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