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第一章 美丈夫には気をつけろ
謎は深まるばかり
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Side ???
「ん……?」
次に目が覚めたとき、おれは暗闇に立っていた。
そして、その暗闇のなか、白く光を放つ誰かがおれの視線の先に立っている。
純白のローブを纏まとい、フードを目深に被ったその人の顔は、闇に溶けて全く見えない。
ほっそりとした顔の輪郭からして女性だろうか。もしくは背の高いこどもか。
「……だれ?」
おれの問いかけが聞こえていないのか、その人物はゆらゆらと空間をたゆたうだけ。
神々しくも不気味であるその発光体を、目を凝らして観察する。
白い光はローブから出ているようだ。
小さい光の粒子が飛び出しては、あたりに消えていく。
普段であれば恐がりな自分は悲鳴を上げて逃げ出すような状況。
そんなおれが悲鳴も上げず、ただぼんやりと光を眺めているのは、この非現実的な状況と、何故かこの人物に恐れを感じなかったからなのだろう。
「……っ……」
なんだろう、何か聞こえた気がする。
ぼんやりしていた脳みそを無理やり回転させながら音に対する答えを探す。
よく見れば白い人物の口が動いており、なにごとかを呟いているのが見えた。
なにをいっているのかは全く聞こえないが、ただ、必死であることは、その口元から伝わってくる。
「なに?なにかいいたいの?」
ピクリ、と目の前の人物が身じろぎ、こちらをみた。
いや、顔が見えないため、本当のところはわからなかったが、明らかに視線を感じたのだ。
恐らく、フードの下の顔はこちらを見ているだろう。
しばらく待ってみたが、相手は何も声を発さない。
声をかけたのはおれだが、どうにも貫くような視線に、居心地の悪さを感じてしまう。
「あの」
堪らずそう口を開いた瞬間。
頭をガツンと鈍器で殴られたような痛みが襲った。
ぐぅっ、と呻き声をあげながら崩れるようにその場に倒れる。
視界がぐにゃぐにゃと曲がり、白い姿が遠のいていく。
「まっ……て……」
すでに遠く霞んでほとんど見えないその人物に、おれは必死に手を伸ばした。
しかし、痛みはどんどんと広がり、手足さえも痛みを訴えだす。
なぜこんなにも必死に手を伸ばしたのか、自分でもわからない。
ただ、あの人は助けを求めてるような気がした。
助けなければ、とよく分からない焦燥感に駆られる。
「ロウ……」
「……?」
唯一聞こえた声は何故か自分の名を呼んでいた。
その哀しみを含んだ声音を不思議に思いながらも、全身を針で刺されるような痛みがそれを許さず、思考を蝕んでゆく。
うまく息ができず、はくはくと口をあけるが、酸素は思うように入ってこない。
あれ、息ってどうやってするんだっけ。
回らない頭でそんなことを考えながら、おれは更なる闇に沈むように意識を手放した―――。
「ん……?」
次に目が覚めたとき、おれは暗闇に立っていた。
そして、その暗闇のなか、白く光を放つ誰かがおれの視線の先に立っている。
純白のローブを纏まとい、フードを目深に被ったその人の顔は、闇に溶けて全く見えない。
ほっそりとした顔の輪郭からして女性だろうか。もしくは背の高いこどもか。
「……だれ?」
おれの問いかけが聞こえていないのか、その人物はゆらゆらと空間をたゆたうだけ。
神々しくも不気味であるその発光体を、目を凝らして観察する。
白い光はローブから出ているようだ。
小さい光の粒子が飛び出しては、あたりに消えていく。
普段であれば恐がりな自分は悲鳴を上げて逃げ出すような状況。
そんなおれが悲鳴も上げず、ただぼんやりと光を眺めているのは、この非現実的な状況と、何故かこの人物に恐れを感じなかったからなのだろう。
「……っ……」
なんだろう、何か聞こえた気がする。
ぼんやりしていた脳みそを無理やり回転させながら音に対する答えを探す。
よく見れば白い人物の口が動いており、なにごとかを呟いているのが見えた。
なにをいっているのかは全く聞こえないが、ただ、必死であることは、その口元から伝わってくる。
「なに?なにかいいたいの?」
ピクリ、と目の前の人物が身じろぎ、こちらをみた。
いや、顔が見えないため、本当のところはわからなかったが、明らかに視線を感じたのだ。
恐らく、フードの下の顔はこちらを見ているだろう。
しばらく待ってみたが、相手は何も声を発さない。
声をかけたのはおれだが、どうにも貫くような視線に、居心地の悪さを感じてしまう。
「あの」
堪らずそう口を開いた瞬間。
頭をガツンと鈍器で殴られたような痛みが襲った。
ぐぅっ、と呻き声をあげながら崩れるようにその場に倒れる。
視界がぐにゃぐにゃと曲がり、白い姿が遠のいていく。
「まっ……て……」
すでに遠く霞んでほとんど見えないその人物に、おれは必死に手を伸ばした。
しかし、痛みはどんどんと広がり、手足さえも痛みを訴えだす。
なぜこんなにも必死に手を伸ばしたのか、自分でもわからない。
ただ、あの人は助けを求めてるような気がした。
助けなければ、とよく分からない焦燥感に駆られる。
「ロウ……」
「……?」
唯一聞こえた声は何故か自分の名を呼んでいた。
その哀しみを含んだ声音を不思議に思いながらも、全身を針で刺されるような痛みがそれを許さず、思考を蝕んでゆく。
うまく息ができず、はくはくと口をあけるが、酸素は思うように入ってこない。
あれ、息ってどうやってするんだっけ。
回らない頭でそんなことを考えながら、おれは更なる闇に沈むように意識を手放した―――。
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