とろけるハニー★ミツバくん

狗嵜ネムリ

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第15話 ミツバチと雨の日に出会った先輩

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「付いてくんじゃねえぞ、てめぇ」
「あっ、う……違いますっ、俺もそっちに用があって……!」

 日曜日、天気は小雨。
 出掛ける予定もなく寮からコンビニへエナドリを買いに行こうと歩いていたら、水色の傘を差した奴が俺の後ろをずっと付いて来ているのに気付いて思わず一言言ってしまった。

「コンビニ行くんです、チーズケーキ買いに!」
「そうかよ、勝手にしろ」
「……怖い先輩だな……」

 どうやらウチの生徒らしい。傘で顔は見えないが、偉く生意気な奴だ。


 目的の物を買ってコンビニを出ると、さっきまで小雨だった天気がざんざん降りになっていた。出る時は「これくらいなら」と傘を持たず、フードのパーカを被って出てきただけだ。空を見上げてつい舌打ちする。

「傘、入って行きますか」
 横から声がして顔を向けると、さっきの水色の傘の奴が少しむくれたように俺を見上げていた。
「別に、……」
 言いかけて気付く。その生徒が蜂川蜜羽だったということを。

「お前、ウチの学校の娼婦だろ」
「しょ、娼婦? 違います!」
「誰にでもヤらせるんだろ」
「それは……!」

 ウチの生徒達もつくづくおかしな奴らばかりだ。持て余した性欲を解消できるなら、こんな誰とでも寝る男でも構わないとは。

 俺に言われてしゅんとなった蜂川蜜羽が、唇を噛んで俯いている。
 俺は単なる暇潰しのつもりで、その整ったむくれ顔に呟いた。

「傘、入れてけよ」
「……いいですけど」
「俺が言えば、今日だけ付き合ってくれんのか」

 雨の日にムラムラするのって、俺だけだろうか。
 恐らくは外に発散しに行けないせいだ。腹の中で何かが疼き、言葉にし難い欲求が沸き上がってくる。

「……いいですけど」

 セフレには困っていないから今まで声もかけなかったが、たまにはビッチな奴相手でもいいかと……そんな気になった。




「これは俺のです! 一つしか買ってないんですから、取らないで下さい!」
「いいじゃねえかよ別に、ごちゃごちゃ言ってねえで半分寄越せ」
「限定チーズケーキなんです!最後の一個だったんです!」

 テーブルを挟んで掴み合いになったが、蜂川蜜羽はなかなかに面白い奴だった。
 ただ黙ってヤらせるだけの奴かと思っていたが、話も合い、ゲームも出来る奴で、大人しいかと思いきや意外にもこの俺に物怖じせず生意気な口を利いてくる。

「ああぁ……俺のチーズケーキ……」
「一口くれえでガタガタ抜かすな」
「せ、先輩のばか! 先輩の一口は半分じゃないですか!」

 俺は酸味の効いたチーズケーキを口の中で咀嚼し飲み込んでから、蜜羽の肩を抱いて言った。
「こんなモンより、もっと美味いヤツ食わせろよ」
「……先輩のばか」



 蜜羽の吐息をかき消そうとしているのか、さっきよりも雨足が強くなっていた。
「ん……、先輩、そこ一緒はだめです……」
「黙って感じてろ」
「ふ、――ぁ、あ……」
 蜜羽の乳首を啄みながら、下着の中に入れた手をかき回すように蠢かせる。蜜羽は腰をヒクつかせて俺の下で喘いでいた。なかなか良い反応だ。

「ビッチなのは本当だな。俺の手があっという間にべとべとだ」
「あう、……ぅ、だって気持ちいい……」
 半笑いの潤んだ目で俺を見上げる蜜羽。口元にはチーズケーキの欠片が付いたままだった。
「寝た状態で脚を開け。しゃぶってやる」

 蜜羽の柔らかい内股に口付けながら、ゆっくりとかき分けるように股間へ顔を埋めて行く。
「あ、ん……」
 小ぶりの玉にくすぐるようなキスを繰り返し、勃起したそれを根元から強く舐め上げる。蜜羽は身をくねらせて愛らしい声を漏らしたが、それは想像していたような激しい乱れ方ではなかった。
「せんぱ、い……」
「何だ」
「優しいんですね、先輩……」
「は、……」
 蜜羽が何を言っているのか分からず、俺はヤツのそこを舐めながら「何がだ」と問いかけた。

「ん、……だって先輩、獣みたいな見た目なのに……優しい愛撫してくれてるっていうか……」
「う、うるせえな。俺はスローなのが好きなだけだ」
「俺も好きです。激しいのも好きだけど、こういうのも……あっ」
「黙ってろって言っただろ」

 蜜羽が男達から好かれている理由が分かった気がした。
 コイツは無意識で、相手のペースに合わせることができるのだ。

「あぁ……先輩、……すごいです、……何かこれ、あっ、……」
 ゆっくりと先端から根元までをしゃぶり、同時に挿入した中指で蜜羽の奥を探る。蜜羽はまな板の上の魚みたく体を痙攣させ、両手でシーツを握りしめていた。
「ここか」
「――あっ! そこ好き、……そこ、指で擦られると、……」
「勃起が止まらねえって?」
「や、あぁっ……!」

 蜜羽の中の硬い部分を指先で撫で、更に先端から溢れた蜜を啜る。
「ん、あぁ……先輩……」
「ゆっくりすると、その分集中して感じれるだろ。……指とか、舌の形とかがさ」
「た、しかに……そう、です……。せ、先輩の……指と、舌、ぁっ……」
「……お前もしてみるか?」


 蜜羽の口の中は狭く熱く、そして驚くほど濡れていた。
「ん――ん、ん……先輩……気持ちいいですか……?」
「ああ、ゼリーみてえな舌だな、お前。何でそんな口ん中ぬるぬるしてんだ?」
 俺のそれから口を離し、蜜羽が照れ臭そうに小さく笑う。
「す、すいません……何かその、涎が出ちゃうっていうか……」
「……はあ、別にいいんだけどよ」
 蜜羽の頭を撫でて息をつくと、再びその小さな唇が俺のそれに被せられた。

(……自分のエロさに気付いてねえタイプだ)

 美味そうに俺のそれをしゃぶる蜜羽。テクニックは申し分なく、俺の要望にもきちんと応えている。ゆっくりと舌で撫でながら頭を上下させ、先端から溢れた体液を啄むように啜られれば、俺の口からも吐息が漏れた。

「はぁ、……もういいぜ。イッちまう」
 口から抜いたそれを手で撫でながら、蜜羽が唇を噛んで微かに笑う。
「挿れて欲しいか?」
「……はい。あ、でも、あの……」
「何だ」
 そしてその唇が開き、俺にねだるように囁いた。
「ちょっとだけ、激しい先輩も……感じてみたいかも、です……」
「………」


 ベッドがぶっ壊れるんじゃないかってくらいに揺れている。

「あっ! あぁっ、先輩……! す、ごぃ……!」
「オラ、もっと鳴けっての。望み通りにしてやってんだからよ」
「あんっ、あぁ……! 激しい、先輩も、……いい、……あっ、あ……!」
 眉根を寄せて喘ぐ蜜羽の顔を見つめながら、俺は何度もその狭い穴めがけて腰を打ち付けた。
 濡れた音が雨の音に混ざる。俺の背中をかき抱く蜜羽が一突きごとに甲高い声をあげる。

「激し、くても……ちゃんと、俺……先輩のこと、感じてますっ……」
「俺もだ。お前の締め付ける具合とか、柔らけえとことか、……奥、すげえ締まる」
「せんぱ、い……!」
「……蜜羽」

 両手と両足でしがみつかれ、腰が振りにくいが……こういうのも悪くない。
 どろどろに溶け合って一つになるような感覚。何だか久々過ぎて、頭がくらくらする。

「先輩っ、おく……奥のとこ、あぁっ……!」
「ここか」
「あ、……あぁ、っ、そこ……! そこで、ぎゅってさせて……」
 一番深いところで腰の動きを止めると、蜜羽が「ん、ん」と声を漏らしながらより一層強く俺にしがみついてきた。

「はぁ、……やべ」
 狭いナカで亀頭を締め付けられ、その刺激が欲しくて更に腰をグッと入れる。
「あぁっ――!」
 俺達は汗だくで抱き合ったまま唇を重ね、何度も激しく舌を絡ませ合った。

「……もう動いていいか」
「俺も、イきたい、です……」
 口元だけで笑って、蜜羽を抱きしめた状態で腰の動きを再開させる。すぐに蜜羽の口から声が弾け、俺の中でも熱いものが込み上がってくるのを感じた。

「出すぞ蜜羽、……」
「お、俺も……」
 自分でそれを扱きながら、蜜羽が片腕で俺の頭を引き寄せる。
 そうして俺達はキスをしながら、同時に絶頂を迎えた。



「……悪かったな」
「な、にが……ですか……?」
「チーズケーキ」
 頬を染めてベッドに倒れた蜜羽が、「ほんとです」とかろうじて悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 予定外の日曜日となったが、別に後悔はしていない。

「先輩、……どこ行くんですか?」
「もう雨も止んだ、ちょっと出てくる。……明日までいろよ、蜜羽」
 ふわあいと情けない返事をして、蜜羽が寝息を立て始めた。

 その無防備な寝顔に苦笑し、俺はちょっと遠いコンビニまでチーズケーキを買いに外へ出た。
 雨上がりの空。遠くでは虹が浮かんでいる。



 第十五話・終
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