異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと

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一杯目 出会いのニンニク醤油ラーメン

第3話 ラーメン屋、帰れないことに気づく

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◇剛士視点
 
 しばらく待ってみたが、ほかの客も来ないので、店じまいを俺は考えていた。
 森の中なので仕方がないが、本当にここはどこなのだろうか……。

「帰れるの……か?」

 耳をすませば、聞いたことのない獣の声が聞こえてきた。
 地図もないし、道もないので、帰り方はわからない。
 自分以外に誰もいない状況では、不安のほうが強くなってきていた。
 ぶるりと身震いをしていると、ぞろぞろと6人の美女たちがやってくる。

「店主ー! おかげで討伐できたわ」
「お疲れ様。火を消しちゃったんで今日は店じまいかな……ちなみに、俺の名前は剛士だ」

 カリンが大きな金色の角を持って先頭を走って、キッチンカーのところまできた。
 今日、話をしていた大ボスの角だろう。
 
「『らぁめん』のおかげでしたわ。感謝いたします」

 続けてセシリアが近くまで来ると頭を下げる。
 大したことはしてないんだが、美人に感謝されるのは悪い気はしなかった。

「らぁめん……食べたかった……」

 フェリシアがしょんぼりと耳と尻尾をへこましながら、しめられたキッチンカーをじーっと眺めている。
 片付けしちゃっているので、再び開くわけにはいかなかった。
 申し訳ないが諦めてほしい。
 
「店主じゃなかった、タケシはこれからどうするんスか? ダンジョンでるにしても出入口はこれ通らないっスよ?」

 鳥獣人のミアがキッチンカーを眺めながら、俺に話を振ってくるが、俺もどうしようかと思っているところだった。

「いつの間にかここに来ていたし、帰り方もわからないんだ。ここがダンジョンだとしたら、正直戦いながら戻るのは無理無理。戦いなんてできっこない」

 俺は手を顔の前で降ってミアに答えた。
 ただのしがないラーメン屋な俺ではどうにもできない。
 そもそもこのキッチンカーを消すことはできるのだろうか?
 
”ラーメン屋台を収納しますか? はい/いいえ”

 そんなことを考えていたからか、目の前にウィンドウが表示された。
 ウィンドウの『はい』の部分をタッチすると、キッチンカーが光ったかと思えば、消えている。

「おお、消えた……そういう能力なんだろうか」

 自分でも自分の能力がよくわかってないので、いろいろ試す必要もあるだろうがダンジョンの中ではなかった。

「タケシさん一人だけなら、私達と一緒にダンジョンを出て私たちの屋敷までいきましょうか、カリンもそれでいいわよね?」
「そうね、タケシさんのらぁめんの力がどういうものなのかいろいろ調べたいし、何より私たちと同じ黒髪、黒目は目立つから私たちと一緒のほうがいいかもしれないわ」
 
 セシリアの意見にカリンが同意している。
 ラーメンを作る以外には何もできない俺としてはここにいるプロの冒険者に任せるのがいいと思った。

「お世話になるよ」
「それじゃあ、ダンジョンから脱出しましょう」
「「了解」」

 俺はせっかくだからと、カリンが持っている角を運んでいこうとしたが、あまりの重さに断念する。
 見た目よりも冒険者は強いのかもしれないと思い直した。

■エルドリエの迷宮・入口
 
 二時間ほどダンジョンを移動していくと、石造りの門から外に出た。
 ラーメン作りのために鍛えて、体力はある方だと思っていたが汗だくであり、足がガクガクしている。
 数組の冒険者パーティとすれ違ったが、美女6人の中に一人混ざった、男の俺が珍しいのか驚きの表情でみられてきた。
 けれども、Aランク冒険者パーティの夜鴉ということもあり、絡まれることなく移動できたのは助かっている。

「結構長く潜っていたが、無事に倒せたのか?」
 
 入口付近ではダンジョンの入退場を管理している門番がカリンへ声をかけていた。

「ええ、これが証拠よ」

 カリンは金色の角を門番に見せるとにっこりと笑う。
 門番たちはその金色の角を目を丸くしてみていた。

「じゃあ、ギルドで報告してから宿に戻るわ。大ボスを倒せたから、ダンジョンは安全よ」

 驚きで固まっている門番を後目にカリンはダンジョンから離れていく。
 俺もほかのメンバーもカリンに続いて、冒険者ギルドへとまずは移動することになった。

「本当に異世界にきたんだなぁ」

 見上げる空には月が2つあり、地球ではないことを物語っている。
 まずは宿でシャワーを浴びたい俺だった。
 
 
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