15 / 38
二杯目 お肌プルプル鶏皮醤油ラーメン
第4話 ラーメン屋、商業ギルド職員の胃袋を掴む
しおりを挟む
■商業ギルド 裏口
「はいよ、ニンニク醤油ラーメンと、餃子おまち!」
「タケシー、ギョウザ2つとトリパイタンスープ2つが追加だよー」
俺がカウンターにどんどん料理を置いている間にルーミラから次の注文が届く。
「ごちそうさま! 器は捨てていっていいんだな?」
「はい、器とスプーンは袋に捨ててってください!」
イリナも職員の対応をやってくれて、助かっていた。
商人ギルド職員はそんなにいないかなと思っていたが、4人掛けのテーブルとカウンターが埋まり続けている。
ゴミ袋を見ていると回転しているはずが、人の波は途切れない。
「思った以上にギルド職員っているんだな? それに昼食終わった後だろ?」
「いい匂いがしますからね、お腹を刺激しますよ。忙しいから簡単に済ませている人も多いですし」
麺をゆでながらイリナに訪ねると納得のいく答えが返ってきた。
俺も会社で働いていたときは、昼食はコンビニ飯などで簡単に済ませていた時期がある。
ラーメンのいいところはすぐに食べれるところだ。
その上で、腹いっぱいになるからいうことなしである。
「まぁ、そろそろ落ち着いてきたか?」
そう思っていると、裏口から出てきた偉そうな雰囲気のおっさんがズンズンとこっちにやってきた。
「イリナ君! 君は勝手に何をやっているんだね! 裏口に屋台を出す許可なんか私は出してないよ!」
顔を真っ赤にして起こっている中年のおっさんは日本でもよくいる中間管理職である。
大きな騒ぎになっていることに気づき、やってきたのだろう。
「あー、これはーそのー」
目を泳がせていたイリナがキッチンカーの中で俺を見上げてくるが、俺にどうしろというのだ。
そもそも、許可などをとっておかなければいけないのはイリナの責任である。
「すみません、俺もよくわかってないもので出していいと言われたから出させていただいたんで」
俺はとにかく腰を低くして、謝りこの場を納めようとした。
しかし、おっさんの方はそれでは納得いかないようである。
「こんな風に勝手に出されては困るので、君の営業許可も無くすことも考えなくちゃいけないなぁ」
「それはちょっと、俺としては困ります」
「ならば、わかるだろ?」
嫌な流れが生まれている。
これは便宜を図るために金を寄こせと遠回しに言われているのだ。
イリナよりも上司であるから、イリナからの担当変更だってありえる。
そんなことされたら商売がやりづらくなるのが目に見えていた。
「それは君の越権行為や過ぎないかい?」
「こ、これはこれはギルドマスター」
俺がどうしようかと思っているとき、裏口の扉から金髪ウェーブロングヘヤの美人が姿を見せる。
その美人の頭には耳が生え、腰当たりから柔らかそうな狐の尻尾が揺れていた。
パンツスーツのような男物の衣装を着こなしてはいるものの、肉付きのいい胸と腰が女であることを主張している。
そんな姿の美女はモデルのような優美な歩き方でおっさんに近づいてき、たしなめた。
美魔女という言葉がよく似合う成熟した女性の色気を感じされる美女におっさんはたじたじである。
セシリアさんは知的な美女、こっちの女性は恥的な美女といった感じだ。
「上司の許可を取らなかったのは良くなかったね、イリナ君」
「申し訳ございません、ギルドマスター」
イリナにも声をかけた狐の美女はゆっくりと歩き、キッチンカーにいる俺を見上げてくる。
「店主、私にも……そうだね、トリパイタンスープとギョウザを一つずつ貰おうか。これでいったん店じまいにしてほしい」
「かしこまりました」
俺は有無を言わせない力強い瞳に魅せられて、料理を作っていった。
その間も見つめられているので、気恥ずかしい。
年上のお姉さん系にどうも弱いようだ。
この年になると頼れる人が少ないので、その反動かもしれない。
「はいよ、鶏白湯スープと餃子だ」
カウンターに置くと、美女はそのまま食べていく。
フォークを使って食べている様が餃子のはずなのに高級フレンチに見えるような絵面になるのが不思議だった。
「うん、美味しいね。こちらのスープは……なるほど、これほど効果があるとは……」
ぶつぶつとつぶやいて、美女は考えていたが急に顔を上げて俺を見てくる。
「いい腕だ。それに効果もすごい。私も〈鑑定〉持ちだからね、見させて貰ったよ」
「それはどうもありがとうございます。このトリパイタンスープを販売するにあたって何か問題や値付けのポイントはありますでしょうか?」
俺は目の前の美女が商業ギルドの最高責任者だと聞いたので、率直に尋ねることにした。
当初の予定は落ち着いたらイリナ経由で意見の集計を行っていくところだったが、この人の意見であれば誰も文句が出ないと考えている。
「そうだね……提供数を限定して、1杯銅貨7枚でいいだろう。『らーめん』とより少し下げないとバランスが悪くなるだろうが、価値が高い分、数量限定の提供だ」
「ありがとうございます。その、そのことを相談するだけなのにこんなに大騒ぎになってすみません」
イリナの手続きが悪かったとしても、お願いしたのは俺なので、責任者には謝罪するのが筋というものだ。
「いやいや、噂の『らぁめん』屋というのが知れてよかったよ。次回はちゃんと食べたいので、孤児院の出店場所にも出向くよ」
「ありがとうございます」
「ああ、自己紹介がまだだったね。商業ギルドのギルドマスターをしているモミジ・シルヴァだ。よろしく頼むよ」
「タケシ・ヘイワジマです。タケシと呼んでください」
偉い人だとわかっているからか敬語が抜けずに挨拶を交わす。
俺のこの街での商売の仕方が大きく変わることになる握手になることを俺は知らなかった。
「はいよ、ニンニク醤油ラーメンと、餃子おまち!」
「タケシー、ギョウザ2つとトリパイタンスープ2つが追加だよー」
俺がカウンターにどんどん料理を置いている間にルーミラから次の注文が届く。
「ごちそうさま! 器は捨てていっていいんだな?」
「はい、器とスプーンは袋に捨ててってください!」
イリナも職員の対応をやってくれて、助かっていた。
商人ギルド職員はそんなにいないかなと思っていたが、4人掛けのテーブルとカウンターが埋まり続けている。
ゴミ袋を見ていると回転しているはずが、人の波は途切れない。
「思った以上にギルド職員っているんだな? それに昼食終わった後だろ?」
「いい匂いがしますからね、お腹を刺激しますよ。忙しいから簡単に済ませている人も多いですし」
麺をゆでながらイリナに訪ねると納得のいく答えが返ってきた。
俺も会社で働いていたときは、昼食はコンビニ飯などで簡単に済ませていた時期がある。
ラーメンのいいところはすぐに食べれるところだ。
その上で、腹いっぱいになるからいうことなしである。
「まぁ、そろそろ落ち着いてきたか?」
そう思っていると、裏口から出てきた偉そうな雰囲気のおっさんがズンズンとこっちにやってきた。
「イリナ君! 君は勝手に何をやっているんだね! 裏口に屋台を出す許可なんか私は出してないよ!」
顔を真っ赤にして起こっている中年のおっさんは日本でもよくいる中間管理職である。
大きな騒ぎになっていることに気づき、やってきたのだろう。
「あー、これはーそのー」
目を泳がせていたイリナがキッチンカーの中で俺を見上げてくるが、俺にどうしろというのだ。
そもそも、許可などをとっておかなければいけないのはイリナの責任である。
「すみません、俺もよくわかってないもので出していいと言われたから出させていただいたんで」
俺はとにかく腰を低くして、謝りこの場を納めようとした。
しかし、おっさんの方はそれでは納得いかないようである。
「こんな風に勝手に出されては困るので、君の営業許可も無くすことも考えなくちゃいけないなぁ」
「それはちょっと、俺としては困ります」
「ならば、わかるだろ?」
嫌な流れが生まれている。
これは便宜を図るために金を寄こせと遠回しに言われているのだ。
イリナよりも上司であるから、イリナからの担当変更だってありえる。
そんなことされたら商売がやりづらくなるのが目に見えていた。
「それは君の越権行為や過ぎないかい?」
「こ、これはこれはギルドマスター」
俺がどうしようかと思っているとき、裏口の扉から金髪ウェーブロングヘヤの美人が姿を見せる。
その美人の頭には耳が生え、腰当たりから柔らかそうな狐の尻尾が揺れていた。
パンツスーツのような男物の衣装を着こなしてはいるものの、肉付きのいい胸と腰が女であることを主張している。
そんな姿の美女はモデルのような優美な歩き方でおっさんに近づいてき、たしなめた。
美魔女という言葉がよく似合う成熟した女性の色気を感じされる美女におっさんはたじたじである。
セシリアさんは知的な美女、こっちの女性は恥的な美女といった感じだ。
「上司の許可を取らなかったのは良くなかったね、イリナ君」
「申し訳ございません、ギルドマスター」
イリナにも声をかけた狐の美女はゆっくりと歩き、キッチンカーにいる俺を見上げてくる。
「店主、私にも……そうだね、トリパイタンスープとギョウザを一つずつ貰おうか。これでいったん店じまいにしてほしい」
「かしこまりました」
俺は有無を言わせない力強い瞳に魅せられて、料理を作っていった。
その間も見つめられているので、気恥ずかしい。
年上のお姉さん系にどうも弱いようだ。
この年になると頼れる人が少ないので、その反動かもしれない。
「はいよ、鶏白湯スープと餃子だ」
カウンターに置くと、美女はそのまま食べていく。
フォークを使って食べている様が餃子のはずなのに高級フレンチに見えるような絵面になるのが不思議だった。
「うん、美味しいね。こちらのスープは……なるほど、これほど効果があるとは……」
ぶつぶつとつぶやいて、美女は考えていたが急に顔を上げて俺を見てくる。
「いい腕だ。それに効果もすごい。私も〈鑑定〉持ちだからね、見させて貰ったよ」
「それはどうもありがとうございます。このトリパイタンスープを販売するにあたって何か問題や値付けのポイントはありますでしょうか?」
俺は目の前の美女が商業ギルドの最高責任者だと聞いたので、率直に尋ねることにした。
当初の予定は落ち着いたらイリナ経由で意見の集計を行っていくところだったが、この人の意見であれば誰も文句が出ないと考えている。
「そうだね……提供数を限定して、1杯銅貨7枚でいいだろう。『らーめん』とより少し下げないとバランスが悪くなるだろうが、価値が高い分、数量限定の提供だ」
「ありがとうございます。その、そのことを相談するだけなのにこんなに大騒ぎになってすみません」
イリナの手続きが悪かったとしても、お願いしたのは俺なので、責任者には謝罪するのが筋というものだ。
「いやいや、噂の『らぁめん』屋というのが知れてよかったよ。次回はちゃんと食べたいので、孤児院の出店場所にも出向くよ」
「ありがとうございます」
「ああ、自己紹介がまだだったね。商業ギルドのギルドマスターをしているモミジ・シルヴァだ。よろしく頼むよ」
「タケシ・ヘイワジマです。タケシと呼んでください」
偉い人だとわかっているからか敬語が抜けずに挨拶を交わす。
俺のこの街での商売の仕方が大きく変わることになる握手になることを俺は知らなかった。
24
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
外れスキルと言われたスキルツリーは地球の知識ではチートでした
あに
ファンタジー
人との関係に疲れ果てた主人公(31歳)が死んでしまうと輪廻の輪から外れると言われ、別の世界の別の人物に乗り替わると言う。
乗り替わった相手は公爵の息子、ルシェール(18歳)。外れスキルと言うことで弟に殺されたばかりの身体に乗り移った。まぁ、死んだことにして俺は自由に生きてみようと思う。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる