続・美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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200話 今後の流れを再確認


 街中を見て回り、山葵に適した土壌の確認をしてきた芽依たちが知ったのは、街中全体の地盤の弱さだった。
 街作りの時に優先したのは傾斜の埋め立てと建物建築であった。だから、盛り土をして傾斜問題を解決したが、その盛り土は早くから削れて傾斜が出来ているのいだ。
 数年単位で確認するよう指示が出ていて、その都度クリア条件まで補修するが現状は変わらなかった。
 現状、家の地盤や歩道の下もいつ崩壊してもおかしくないのではないかと、心配になるほど脆い。
 さらに、工場や巨人たちが住む地域だと余計に重みに耐えられなくなる時がいつか来るだろう。
 これは会議を待ってられないと先にギルベルトに伝えた。すると頭を押さえてうなだれるギルベルトが出来上がり、芽依はさすがに憐れに思ってしまった。

 早急にガイウス領全体の地盤硬めを先に行うことになった。その際、芽依が考える山葵の庭作りと擦り合わせて地盤を触らない場所なども指示を出す。
 まだ、最低限の状態にすらなっていないと家族たちはため息を吐いた。

 「じゃ、土地全体にある呪いに似た土地の汚染は、ガイウス領の生産の残骸が土に流れて汚染。それを定期的に浄化効果のある水で大地を正常化していた。でも、常にじゃないから蓄積されて作物が育たない状態だったってこと?」

 フェンネルがソファに行儀悪くうつぶせになりながらプリンを食べる。わかった内容を言葉に出して確認する様子に、メディトークに起きろと頭を叩かれていた。
 借り物とはいえ自室は落ち着くと、芽依は早めに帰ってきているシュミットの背中にしがみつき項を撫でている。

 「こら」

 「ちょっとだけ、触るだけです」

 控え目に言ってもただのセクハラで、巨大蟻の厳しい眼差しが目を監視するように見ている。
 これ以上手を出したら問答無用でぶん投げられるだろう。すぐに泣きながらの土下座コースだ。

 「蓄積された大地を一度浄化して不可侵の魔術を敷く。そのあと、浄化の水を上から流して巡回させることで、水のコストもなるべく削減。山葵の辛さから根を守る作用もあるってことでいいのかな?」

 ぷるんぷるん、とプリンをつつきながら首を傾げるフェンネルの可愛さに身もだえしてシュミットの腰に腕を回してぎゅっと抱きしめる。
 男からしたら、それほど力は入っていなく、少しからまる力が強くなったくらいだった。
 家族とは言えども人前である。小声でボソボソと話すシュミットの耳は赤い。

 「……痛いだろ」

 痛くないのに出た照れ隠しの言葉に、家族たちはほっこりと眺めていた。

 「水はどうするのですか?」

 「通常は専用の販売員の人が樽で運んでくるらしいんだけどね、そうすると量が足りないと思うから、セイシルリードさんを窓口に何とかしてもらえないかなぁって」

 芽依が自信なさそうに言うと、シュミットが眉をひそめて芽依を見るため体を捻る。背中に張り付く柔らかな体の持ち主は不思議そうに見つめ返した。

 「……交渉なら俺に言えばいいだろう」

 なんで相談しないというシュミットの不満な顔にギュンと胸を打つ。
 交渉や販売などを仕事にしている家族がいるのにと不満を隠しもしないシュミットに眉尻を下げた。

 「ごめんなさい、最近忙しそうだったから」

 「一件仕事が追加されたくらいで問題はないよ」

 「はい、ありがとうございます」

 お礼にと伸びあがり頬に口付けを落とすと、天使二人が羨ましそうにじっと見てきた。
 今回は、頑張ってくれるシュミットさんなのとにっこり笑った芽依に、下唇を突き出してじっとりと見ている。それがまた可愛いのだ。

 ガイウス領全体を見ると、庭に使っていい範囲は全体の三分の一以上あった。
 狭い場所も上手に使えばもっと範囲が増えるだろう。
 緩んでいる地盤の強化は他と同じく必須ではあるが、土は芽依の庭から運んでも大丈夫だとセイシルリードからお墨付きをもらった。
 全て植え替えてしまうと、大きすぎたり暴れたりと山葵ではなくなってしまいそうなので混ぜ込む養分の代わりに使うようだ。
 これで、今後の庭の動きも大体把握したと、ため息を吐きだした芽依は、シュミットの背中に頬を預けた。

 夜も更けて来たからと、全員が布団に入る。
 疲れていたのかすぐに寝入っていく家族を見てから、起き上がった芽依はベッドから出た。
 ひんやりとする地面に足が着く前にフカフカした室内履きに足を入れる。
 来たばかりのころは、室内履きを履く習慣がないから、良く裸足で廊下に出てセルジオに怒られていたなと思い出し笑いをした。

 「……どうした? 眠れねぇのか」

 静かな室内に潜められた声。その方向に顔を向けると、人型になって横になっているメディトークが芽依を見ていた。
 シン……と静まり返った室内で、無言のまま歩き出す芽依の足音だけが静かに聞こえる。
 そっと布団を捲って中へ促す伴侶の姿に、そのままモゾモゾと入っていった。

 「珍しいな」

 横向きで寝ているメディトークの胸に擦り寄ってきた芽依の頭を大きな手が優しく撫でる。
 腰に腕を回して、優しく抱きしめられると、芽依はメディトークを見上げた。

 「ガイウス領の庭の方向性は決まったから良いんだけど、ハス君へのちょっかいはどうなるのかな? この間も懲りずにつれて行こうとしていたんでしょ?」

 「それについては抗議している。もう所有者は変わっているのにまだ理解できねぇのかってな。家族に手を出そうとした時は、今後一切の支援や援助は禁止ってしっかり釘刺してきたよ」

 「そ……っか。なら、良かった」

 「ここはお前の神経を擦り減らすな」

 「そうだねぇ。でも、一番はハス君がこの場所を良く思っていないのがわかるから。だから、早く安心できるお家に連れて帰ってあげたいな」

 「そうだな」
 
 さらに抱きしめられて、メディトークの黒い服しか見えなくなった。
 メディトークの甘い匂いと、少しの汗の香りが鼻腔に通り過ぎる。それを感じながら、芽依は静かに目を瞑った。

 


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