192 / 194
200話 今後の流れを再確認
街中を見て回り、山葵に適した土壌の確認をしてきた芽依たちが知ったのは、街中全体の地盤の弱さだった。
街作りの時に優先したのは傾斜の埋め立てと建物建築であった。だから、盛り土をして傾斜問題を解決したが、その盛り土は早くから削れて傾斜が出来ているのいだ。
数年単位で確認するよう指示が出ていて、その都度クリア条件まで補修するが現状は変わらなかった。
現状、家の地盤や歩道の下もいつ崩壊してもおかしくないのではないかと、心配になるほど脆い。
さらに、工場や巨人たちが住む地域だと余計に重みに耐えられなくなる時がいつか来るだろう。
これは会議を待ってられないと先にギルベルトに伝えた。すると頭を押さえてうなだれるギルベルトが出来上がり、芽依はさすがに憐れに思ってしまった。
早急にガイウス領全体の地盤硬めを先に行うことになった。その際、芽依が考える山葵の庭作りと擦り合わせて地盤を触らない場所なども指示を出す。
まだ、最低限の状態にすらなっていないと家族たちはため息を吐いた。
「じゃ、土地全体にある呪いに似た土地の汚染は、ガイウス領の生産の残骸が土に流れて汚染。それを定期的に浄化効果のある水で大地を正常化していた。でも、常にじゃないから蓄積されて作物が育たない状態だったってこと?」
フェンネルがソファに行儀悪くうつぶせになりながらプリンを食べる。わかった内容を言葉に出して確認する様子に、メディトークに起きろと頭を叩かれていた。
借り物とはいえ自室は落ち着くと、芽依は早めに帰ってきているシュミットの背中にしがみつき項を撫でている。
「こら」
「ちょっとだけ、触るだけです」
控え目に言ってもただのセクハラで、巨大蟻の厳しい眼差しが目を監視するように見ている。
これ以上手を出したら問答無用でぶん投げられるだろう。すぐに泣きながらの土下座コースだ。
「蓄積された大地を一度浄化して不可侵の魔術を敷く。そのあと、浄化の水を上から流して巡回させることで、水のコストもなるべく削減。山葵の辛さから根を守る作用もあるってことでいいのかな?」
ぷるんぷるん、とプリンをつつきながら首を傾げるフェンネルの可愛さに身もだえしてシュミットの腰に腕を回してぎゅっと抱きしめる。
男からしたら、それほど力は入っていなく、少しからまる力が強くなったくらいだった。
家族とは言えども人前である。小声でボソボソと話すシュミットの耳は赤い。
「……痛いだろ」
痛くないのに出た照れ隠しの言葉に、家族たちはほっこりと眺めていた。
「水はどうするのですか?」
「通常は専用の販売員の人が樽で運んでくるらしいんだけどね、そうすると量が足りないと思うから、セイシルリードさんを窓口に何とかしてもらえないかなぁって」
芽依が自信なさそうに言うと、シュミットが眉をひそめて芽依を見るため体を捻る。背中に張り付く柔らかな体の持ち主は不思議そうに見つめ返した。
「……交渉なら俺に言えばいいだろう」
なんで相談しないというシュミットの不満な顔にギュンと胸を打つ。
交渉や販売などを仕事にしている家族がいるのにと不満を隠しもしないシュミットに眉尻を下げた。
「ごめんなさい、最近忙しそうだったから」
「一件仕事が追加されたくらいで問題はないよ」
「はい、ありがとうございます」
お礼にと伸びあがり頬に口付けを落とすと、天使二人が羨ましそうにじっと見てきた。
今回は、頑張ってくれるシュミットさんなのとにっこり笑った芽依に、下唇を突き出してじっとりと見ている。それがまた可愛いのだ。
ガイウス領全体を見ると、庭に使っていい範囲は全体の三分の一以上あった。
狭い場所も上手に使えばもっと範囲が増えるだろう。
緩んでいる地盤の強化は他と同じく必須ではあるが、土は芽依の庭から運んでも大丈夫だとセイシルリードからお墨付きをもらった。
全て植え替えてしまうと、大きすぎたり暴れたりと山葵ではなくなってしまいそうなので混ぜ込む養分の代わりに使うようだ。
これで、今後の庭の動きも大体把握したと、ため息を吐きだした芽依は、シュミットの背中に頬を預けた。
夜も更けて来たからと、全員が布団に入る。
疲れていたのかすぐに寝入っていく家族を見てから、起き上がった芽依はベッドから出た。
ひんやりとする地面に足が着く前にフカフカした室内履きに足を入れる。
来たばかりのころは、室内履きを履く習慣がないから、良く裸足で廊下に出てセルジオに怒られていたなと思い出し笑いをした。
「……どうした? 眠れねぇのか」
静かな室内に潜められた声。その方向に顔を向けると、人型になって横になっているメディトークが芽依を見ていた。
シン……と静まり返った室内で、無言のまま歩き出す芽依の足音だけが静かに聞こえる。
そっと布団を捲って中へ促す伴侶の姿に、そのままモゾモゾと入っていった。
「珍しいな」
横向きで寝ているメディトークの胸に擦り寄ってきた芽依の頭を大きな手が優しく撫でる。
腰に腕を回して、優しく抱きしめられると、芽依はメディトークを見上げた。
「ガイウス領の庭の方向性は決まったから良いんだけど、ハス君へのちょっかいはどうなるのかな? この間も懲りずにつれて行こうとしていたんでしょ?」
「それについては抗議している。もう所有者は変わっているのにまだ理解できねぇのかってな。家族に手を出そうとした時は、今後一切の支援や援助は禁止ってしっかり釘刺してきたよ」
「そ……っか。なら、良かった」
「ここはお前の神経を擦り減らすな」
「そうだねぇ。でも、一番はハス君がこの場所を良く思っていないのがわかるから。だから、早く安心できるお家に連れて帰ってあげたいな」
「そうだな」
さらに抱きしめられて、メディトークの黒い服しか見えなくなった。
メディトークの甘い匂いと、少しの汗の香りが鼻腔に通り過ぎる。それを感じながら、芽依は静かに目を瞑った。
あなたにおすすめの小説
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!