[完結]お布団バースはだっこして期。

くみたろう

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私はお布団バース 2

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 翌日、朝からすし詰めのような電車に乗る椛。
 珍しく寝坊をした椛は、満員電車に顔を引き攣らせながら足を進める。
 むわっと色んな匂いが混ざり眉を寄せると、どこからが激しい呼吸音が聞こえてきた。

 (…………なんの匂い?)  

 微かに感じる甘ったるい匂いに首を傾げる。
 汗などで異臭を放っていたはずの電車の中は、次第にその甘やかな匂いが強くなってきて、ソワソワする。
 それは椛だけでは無いようで、電車内が妙に浮き足立ってきていた。

 (なんか、変じゃない?)

 寝坊で1本遅れただけ。 だが、その些細な出来事が、椛に大きな変化をもたらす事になる。

 じんわりと内側から熱が灯る。
 あれ……と不思議そうに思う椛だったが、どうやらそれは椛だけではないようで。 なんだか乗客の目がギラギラとしていた。

 そんな時、次の駅で電車が止まった。
 足早に出て行く人もいるが、それ以上に入ってくる人の方が多い。

「っ……うわっ……まじかよ」

 誰かの声がした。
 なんだろう……と顔を向けるが、低身長の椛は完全に頭1つ埋まっていてわからない。

「あっ……あぁ!! たす……け……」

 男性だろうか、助けを求めるような切ない悲痛の様な声。だが、艶めいていて、ゾクッ……と体の奥に熱を灯すような、そんな声。

「…………ヒート?」

「ヒートじゃないか?」

「どのバース性だ?」

 電車内がざわめき出した。
 バース性は様々あり、全ての性にヒートがある。 確実に狂わされるのは同じバース性だけなのだが、ヒートの香りは穏やかな甘さを届けて全員の体を熱くさせる効果がある。
 
 この香り……と色んなところで聞こえる。

 ここは満員電車。こんな場所でヒートが起こったら、それに当てられる人は沢山出るだろう。
 
 椛は顔を青ざめさせた。

 椛の周りは男性ばかりで、ちらりと視線を向けられる。
 初めて性的な目を向けられて、ぞわりと体が震えた。  啓に足を触られていたのとは話が違う。

 (こわいっ)

 ギュッと胸の前で手を組むと、ふいに腕を掴まれて引っ張られた。
 恐怖に体が固くなり、青ざめる。
 暴れたい衝動に身を任せて掴まれた腕を振るが、しっかりと抑えられていた。

「やっ……やだ……」

「大丈夫だから、落ち着け……な?」

 すっ……と耳に入る声に、恐怖は安堵に変わる。 顔を上げて腕を掴む人の顔を涙目で見上げると、少し焦っている啓が息を吐いた。

「っ…………あき……づ、き……くん」

「うん、大丈夫。 ほら、ぎゅー」

 初めて正面から抱き締められた。
 目を見開いて驚くが、上手く誘導されて背中をドアに預けるように立ち位置を変えさせられる。
 そのまま、周りから姿を隠すように、啓は椛を抱き締めていた。

「はぁ……ビックリした……。いつもこの時間乗らないよね」  

「今日は、寝坊して……」

「そっかぁ……」  

 啓が強く椛の体をギューッと強く抱きしめると、苦しさに「んぅ……くるしい……」と言葉が漏れた。

「…………ん、ごめん。それにしても朝からヒート事故か」
  
「あの……大丈夫? その、ヒート……」 

「あぁ、椛がいるなら大丈夫」

「ひぇ!」

 耳元で囁かれた。それにビクッと体が震える。
 
 (名前! 名前、呼ばれた! しかも呼び捨て!!)

 バクバクと心臓が鳴ったが、それも少しずつ落ち着いてくる。
 抱き締められる体温が暖かくて、全身包み込むような啓の大きさが心地良くて。 甘く優しい香りが気持ち良くて。

 思わず顔を啓の胸に擦り寄せてシャツを握ると、抱きしめる腕に力が籠った。

「………………あー、気持ちいい」

 低くゆっくりとした啓の声が耳朶に響く。
 ふるっ……と身体を震わせると、背中を撫でられ、腰を撫でられ。

「……ん……っ ……ぁ……」

「…………今そんな声出さないで」

 色んな場所で、荒い息使いが響いている。
 ヒートになっている男性は、ケモノバースだったらしいが、近くに‪α‬は居ないようだ。
 まだ年若い子のようで、突然ヒートが始まったのかな……と誰かが話をしているのを椛も啓も聞こえる。

「大丈夫? 薬はある? 鞄?」

 誰か、女性の声がする。
 完全にヒートになっているが、症状を緩和させないと動かす事も出来ないだろうと、女性が動いたようだ。
 甘ったるい声と香りがまた強くなって、椛はさらに啓に抱き着いた。

 所謂椛はΩのような受け身になる。
 強い欲求が無いとはいえ、さすがにヒートには当てられてしまう。

「っ! ゃ……ん……」

 啓が椛のブレザーに隠されたシャツを引っばりあげて腹部を直接撫でてきた。
 足や手以外に、初めて触れる啓の大きな手は薄い椛の腹部を撫で回したあと、上に上がっていく。 
  
「っ、……あき、づ……き、く……」

「あのさ……前に電車で椛の手にたまたま触れた時があったんだけど、すぐに分かった。バース、布団だろ? しかも敷布団」

「…………え……なん、で?」
  
 ふにっ……とブラジャーの上から胸を触る。
 周りが既にヒートに当てられて目を覆いたくなる様な惨状になっている中、2人は触れ合いこそすれ、随分と穏やかな気持ちよさを感じていた。

「…………俺さ、布団バースなんだよ。掛け布団」

「! お、お布団バース!!」

「ふはっ……そうそう。今まで布団バースに会ったこと無かったから、びっくりした」

 椛を見下ろしながらおだやかに笑う。

「だから、椛に触れてるのが気持ちいい。 電車で見付けたら無意識に後ろに行くし、包み込むように椛を閉じ込めて抱き締めていたいんだよね」

「………………そ、なの?」

 真っ赤な顔で目線をウロウロ彷徨わせるが、その間も啓の手は椛の胸を優しく揉んでいる。
 はっ……と気付いて、腕をペチペチ叩くと、笑いながら離してくれた。

「だから、ヒートに煽られてはいるけど、今はこうして抱きしめいたい。 椛は? 嫌じゃない?」

「……嫌じゃ、ない」

 むしろ離さないで欲しい……と小さな声でお強請りすると、嬉しそうに笑った啓が優しく椛を抱きしめる。

「気持ちいいよ、椛」

「うん……」
 
 布団バースの椛と啓は、包み込むように抱きしめたい、抱きしめられたい欲求が強い。
 普段啓が椛に触れるのも、「同じ教室内にいるのに触れられない反動のようで、椛を求めている」 そう小声で言われた椛は、穏やかな熱がまた上がった。

「……嫌じゃなかった?」

「嫌じゃ……ない。でも、周りがいるから……恥ずかしい」

「そうだよね、ごめん」

「あと……眠くなる」

「ふはっ……眠いかぁ」

 んー……と椛を抱き締める啓はご機嫌に、もう教室で抱きしめたらダメ? と恐ろしい提案をして、椛を震わせた。


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