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第1章 はじめまして幻想郷

ほんの少しの小休止

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翠は立ち上がり大きく伸びをした。
時刻は夜7時、 夕食夕食~と鼻歌交じりにキッチンへと向かう。
お昼はオムライスだったからー、 と冷蔵庫を開けて中を吟味する。


翠はフィールドの森へと向かっている最中、 サーヴァが言った意味を良く考えて1度ログアウトしたのだ。
死亡ペナルティによるステータス減少はソロプレイヤーにはなかなか手痛いものらしく、 よくわからないまま言われるままに翠は森へと行く道を変えて宿屋に向かった。
Anotherfantasiaの世界ではまだお昼ではあるが、 現実世界では夜になる。
その為に翠は、今日はここまでとあっさりログアウトしたのだった。

「ゲームも楽しいけどそれだけじゃだめなんだなー」

ジャガイモ片手に言う翠は、 献立が決まったのか次々に材料を出して調理をはじめる。

ジャガイモの味噌汁、 生姜焼きにサラダにきんぴらでしょーっと言いながら作る量は多め。
食べない分はタッパーに移し替えているのも手馴れたものだ。
サクサクと作る翠は料理は得意な方。
美味しいの食べたいから、好みの味にしたいからと試行錯誤するのだ。

「味の染みた生姜焼き、 うまー」

テレビを見ながらお肉に舌鼓をうち、 だしの効いた味噌汁をすする。
翠は幸せな一時に目を細めた。

毎週見ているドラマを見終わったあとAnotherfantasiaの公式サイトをみる。
やはり公式サイトでも奏者の評価は1番下で、 あまり良い事は書かれていなかった。

バフ能力が低い
死に戻りが多い
使い勝手が悪い

公式サイトでもこの言われようである。
なんでこの職を作ったと本気で思ってしまった。
サイトを閉じてため息しながら椅子の背もたれに体をあずけた。
これは辞めろって言われるわーと独り言ももれる。
そんな中、 翠はある動画を見た。
別のゲームで戦いの様子で、 バフツエーと書かれている。
よくよく見てみると、 急激に上がっていく体力や攻撃力。
ただの単純な一撃が敵を一瞬で砕いていた。
仲間の回復量も高い、 それもバフが高めているというのだ。
バフの居ない別の戦闘動画は、 同じ敵なのにゲージは全く微動だにせず仲間たちがどんどん倒れていく。
回復が追いつかない、 何より回復が狙われている。

「…すごいじゃん!」

居るのといないのではこんなに違うんだ
そう画面を見入る翠は無意識に呟いた
そして狙われる回復。
確かに回復がいたらパーティは簡単には死なないだろう。でも、これはバタバタと死に戻ってる……なんでだ?
あ……防御が
高くなってるのかな?

なんて考察しながら翠は自分のプレイスタイルを組み立てていく。

「ふぅん、 動きながらかぁ………明日やってみるかな」

緩く言った翠はベッドにポフッと体を沈めた。
急激に襲いかかる眠気に勝てず、 トロンと目を閉じていくのが自分でもわかる。
タオルケットを手繰り寄せて体に掛けた時には完全に意識が落ちた。

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