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第八章 寂しがりやに、さようなら
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「……あれ? このイントロ、カナエの曲じゃないよね?」
「これって、ヒカリちゃんが前に一度だけ歌った曲じゃないか?」
突然のゴーちゃんの豪快な登場にざわついていたファンたちが、新たな異変を察してステージを振り返った。その隙に、マコトは急いで着ぐるみを脱ぐ。
エリヤが連絡先を入手してきた後、なぜかマコトを除いた四人がかりでメッセージをやり取りしていたヒカリ。本来流れるべきカナエのソロ曲とは違う曲が流れ出したことで、彼女が自分たちを信じて行動してくれたのだとわかった。
『カナエが自分のソロ曲の前に少しでも迷う素振りをしたら、そのときはカナエ作詞作曲の歌に差し替えてほしい』
そんな無茶苦茶な要求を「カナエの為なら」と受け入れてくれた、今は舞台袖にいて姿が見えない相手に向かって、マコトは心からの感謝を送る。
動画を何度も見たお陰で、すっかり耳に馴染んだ曲。
ヒカリの声と、幼いカナエの声でしか聴いていない曲。
仲間たちの記憶を思い出したカナエが、ありったけの感情を込めて歌うことができるのなら、きっと氷の女王すら溶かしてしまうに違いない。
それがマコトたちの目的であり、カナエを救う唯一の方法だった。
最後のトリガーは、たった今、引いた。あとは全て、カナエにかかっている。
マコトが固唾を呑んで見守る舞台の上で、ずっと伏せられていたカナエの顔が、イントロの進行に合わせてゆっくりと上向いた。
「わ」
「えっ、なに」
一瞬のどよめきは、ファンの戸惑いが形になったものだろう。穏やかな序奏にエスコートされて現れた最初の一音が、あまりにも優しく、あまりにも儚く、会場へと降り立った。
今までのカナエとは決定的に違う。生命と体温を感じさせる吐息のような歌声が、押し黙るファンの間をゆっくりとかき混ぜていく。
――そして。
「これって、ヒカリちゃんが前に一度だけ歌った曲じゃないか?」
突然のゴーちゃんの豪快な登場にざわついていたファンたちが、新たな異変を察してステージを振り返った。その隙に、マコトは急いで着ぐるみを脱ぐ。
エリヤが連絡先を入手してきた後、なぜかマコトを除いた四人がかりでメッセージをやり取りしていたヒカリ。本来流れるべきカナエのソロ曲とは違う曲が流れ出したことで、彼女が自分たちを信じて行動してくれたのだとわかった。
『カナエが自分のソロ曲の前に少しでも迷う素振りをしたら、そのときはカナエ作詞作曲の歌に差し替えてほしい』
そんな無茶苦茶な要求を「カナエの為なら」と受け入れてくれた、今は舞台袖にいて姿が見えない相手に向かって、マコトは心からの感謝を送る。
動画を何度も見たお陰で、すっかり耳に馴染んだ曲。
ヒカリの声と、幼いカナエの声でしか聴いていない曲。
仲間たちの記憶を思い出したカナエが、ありったけの感情を込めて歌うことができるのなら、きっと氷の女王すら溶かしてしまうに違いない。
それがマコトたちの目的であり、カナエを救う唯一の方法だった。
最後のトリガーは、たった今、引いた。あとは全て、カナエにかかっている。
マコトが固唾を呑んで見守る舞台の上で、ずっと伏せられていたカナエの顔が、イントロの進行に合わせてゆっくりと上向いた。
「わ」
「えっ、なに」
一瞬のどよめきは、ファンの戸惑いが形になったものだろう。穏やかな序奏にエスコートされて現れた最初の一音が、あまりにも優しく、あまりにも儚く、会場へと降り立った。
今までのカナエとは決定的に違う。生命と体温を感じさせる吐息のような歌声が、押し黙るファンの間をゆっくりとかき混ぜていく。
――そして。
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