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5.燦燦新聞社とボスの噂
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「塗り壁の派生は倒しつくしただろ? 今やれることってあんまりないんだよな。次のアプデまで待たないと」
「そういえば六冥館のイベント限定ボスが、そろそろ実装されるんだって?」
「うっそ、もう情報きてた? おれ、まだ見てない!」
「なんて奴だったっけ……ああ、火車だ。火車。なんか、車みたいな物怪」
びくっと、僕の肩が小さく跳ね上がる。
「車っつーか、燃えてる車輪? まあ普通に考えたら火系の攻撃をしてくると思うんだけど」
「だなあ。なら、それ対策のアイテムでも集めておく?」
「じゃあ依頼報告が終わったら、壬まで行こうぜ」
「あ! SL使うなら、おやつ買っていい?」
「三百円までな」
どうやら方針は決まったらしい。意気揚々とカウンターに向かった四人組を見て、僕はいつの間にかずっと詰めっぱなしだった息をはき出した。
六冥館のイベント限定ボス。前にメイくんが戦いたいと言っていた。それが、火を使う物怪。――車の、物怪。
「!」
慌ててメイくんを振り返ると、彼の視線も四人組の背中に向けられていた。僕と同じようにイベント限定ボスの話を聞いていたことは間違いない。と、いうことは。
「メ、メイくんも、やっぱり、その、か、火車と、戦いたい……?」
答えはわかりきっていたけど、なんとか震えを抑えた声で尋ねる。けれど驚いたことに、メイくんはそんな僕を一度ちらっと見やってから「別に」と呟いた。
「え、ほ、ホントに? ホントにいいの?」
「うん。ほら、次。これ行こ」
戦闘狂のメイくんらしからぬ言葉が信じられなくて「ホントニ? ホントニ?」と何度も念を押す。オウムみたいになっていた僕のメニュー画面に、軽い着信音を立てながら新たな任務が追加された。
「プ、プリン妖怪……レベル二十五推奨ボス……」
「それやっつけたら、プリン食べて終わろ」
あいかわらずあくびでもしていそうな口調でプランを説明すると、メイくんは新聞社をさっさと出ていってしまう。いつもどおりの友人の姿に心の底からほっとした僕は、火車のことなどすっかり忘れて後を追った。
「そういえば六冥館のイベント限定ボスが、そろそろ実装されるんだって?」
「うっそ、もう情報きてた? おれ、まだ見てない!」
「なんて奴だったっけ……ああ、火車だ。火車。なんか、車みたいな物怪」
びくっと、僕の肩が小さく跳ね上がる。
「車っつーか、燃えてる車輪? まあ普通に考えたら火系の攻撃をしてくると思うんだけど」
「だなあ。なら、それ対策のアイテムでも集めておく?」
「じゃあ依頼報告が終わったら、壬まで行こうぜ」
「あ! SL使うなら、おやつ買っていい?」
「三百円までな」
どうやら方針は決まったらしい。意気揚々とカウンターに向かった四人組を見て、僕はいつの間にかずっと詰めっぱなしだった息をはき出した。
六冥館のイベント限定ボス。前にメイくんが戦いたいと言っていた。それが、火を使う物怪。――車の、物怪。
「!」
慌ててメイくんを振り返ると、彼の視線も四人組の背中に向けられていた。僕と同じようにイベント限定ボスの話を聞いていたことは間違いない。と、いうことは。
「メ、メイくんも、やっぱり、その、か、火車と、戦いたい……?」
答えはわかりきっていたけど、なんとか震えを抑えた声で尋ねる。けれど驚いたことに、メイくんはそんな僕を一度ちらっと見やってから「別に」と呟いた。
「え、ほ、ホントに? ホントにいいの?」
「うん。ほら、次。これ行こ」
戦闘狂のメイくんらしからぬ言葉が信じられなくて「ホントニ? ホントニ?」と何度も念を押す。オウムみたいになっていた僕のメニュー画面に、軽い着信音を立てながら新たな任務が追加された。
「プ、プリン妖怪……レベル二十五推奨ボス……」
「それやっつけたら、プリン食べて終わろ」
あいかわらずあくびでもしていそうな口調でプランを説明すると、メイくんは新聞社をさっさと出ていってしまう。いつもどおりの友人の姿に心の底からほっとした僕は、火車のことなどすっかり忘れて後を追った。
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