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9.レインボーのカッパ

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「……つ、ついた……、カッパ……」

 かくして僕は、めでたくレインボーのカッパと「はじめまして」をすることになる。真正面に立ち、荒い息を整えるため上半身を九十度に折り曲げている姿は、はたから見ればカッパに対して深々とお辞儀をしているようで、ちょっと不気味に映ることだろう。けど幸いにも、僕のほかに人影はなかった。

「よし」と一息ついてから、僕はカッパを中心に辺りを見回す。カッパはあくまでも目標値点。本当の目的は、コロを探すことだ。コロはたしか「俺の部屋からもレインボーのカッパが見下ろせる」と言っていた。ということは、この辺りの高い建物――この近くのマンションに住んでいる可能性が高いんじゃないだろうか。

 カッパの背中側には海しかないので、カッパの視界に入る範囲に絞ればいい。ざっと見るかぎり、該当する建物はいくつかある。けれど当然ながら、僕は超能力者でもなんでもないので、そのうちのどれにコロが住んでいるかまではわからない。
 そもそも、コロの言っていたレインボーのカッパが、僕の背後にいる虹色のカッパであるという確証はないのだ。珍しいから、きっと日本に二つもないはずだと思い込んでしまったけど、それが間違いなのかもしれない。
 だいたい、会ってどうするんだろう。無事だったことを確認できればそれでいいと思ってたけど、本当にそれでいいのか? なにか大事なことを見落としてないか?

 そんな答えの出ない葛藤をしながら、虹色に輝くカッパの周りをうろうろすること実に一時間。その結果、僕は思った。
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