6 / 12
06:女という生き物
しおりを挟む
なんで親は、俺を男に生んでくれなかったんだろう。俺はいつもそう思ってた。特別男になりたいとか思ってるわけでもないんだけど、男っぽく見られるし、女っぽいことが苦手だったり興味がなかったりするから、結果的に「男だったら楽だったのに」という思考にたどり着くわけだ。
だけど、俺はやっぱり性別上女でしかない。外見とのギャップがありすぎるのが一番の問題なんだろうけど。
だけど、その外見を気にしない人間も中には存在してるんだ。
「折り入って話しって、そんないきなり改まってなんですか?もしかしてクビとか言いませんよね?」
「まさか!そんな話じゃないって」
俺は、目の前で女の子らしい可愛い服を見事に着こなしているユリちゃんを見ながら、明らかに怪しい動作を繰り返していた。
職場近くのコーヒーショップは、実のところちょっとした溜まり場になってる。俺はあんまり使わないけど、お茶をして帰ったりとか、ミーティングに使ったりとか、用途はいろいろらしい。
休みの日、俺はユリちゃんにお願いがあると言って時間を作ってもらった。ユリちゃんは丁度退勤したところで、すっかりくつろいでいる。
ユリちゃんを呼び出したのは、相談をしたかったからだ。
勿論仕事の話じゃない。俺の…つまり、恋愛ごとの相談だ。
此処最近、もう自分だけではいっぱいいっぱいになってしまってどうしようもなくなっていた俺は、とにかく誰かに助けてもらいたかった。というより、話を聞いて欲しかったのかもしれない。だけど、話を聞いてもらうには、それなりの勇気が要るんだ。
俺みたいなやつに好きな男がいるとか、そんなの世間から見たらネタくらいにしかならないだろう。だけどネタだけで終わってしまっては相談できない。だから、俺はユリちゃんを選んだんだ。
ユリちゃんは、職場の中でも口が堅いことで有名だし、優しいということでも有名だったりする。
だから俺は、勇気を振り絞って相談することにしたんだ。
「あのさ、笑わないで聞いて欲しいんだ。もう本当にどうしたら良いか分からなくて…」
「恋の相談ですか?」
「えっ!?」
何で分かったんだ!?
驚く俺の前でユリちゃんが小さく笑ってる。
「勘ですけど、園部さん、好きな人いるんだろうなって思ってたんです。何となく雰囲気でそう思ったんですよね」
「そ、そうなんだ…すごいな、その勘…」
それが女の勘とかいうやつなら、俺には絶対無い気がする。さすがはユリちゃんだ。
俺はユリちゃんに感心しながら、俺の抱えている大問題についてを切り出した。
恋の相談なんて、俺の人生の中で初めてのことだ。
いくら相手がユリちゃんとはいっても、さすがに勇気が要った。
だけど…。
「園部さん、その人のことかなり好きなんですね」
「なっ!そ、そんなことないって!」
「そんな隠さなくっても良いのに。見てれば分かりますよー、好きなんだなあってことくらい」
「そっ…」
そんなものなのか!?
俺はものすごい勇気を使いながらアカネのことを話したんだけど、ユリちゃんはその間どういう気持ちで聞いていたんだろう。園部さんったら、なーんて思いながら聞かれてたらものすごく恥ずかしいんですけど…。
だけど、ユリちゃんはやっぱりユリちゃんだった。俺が信頼してるユリちゃんそのものだった。
「園部さん、私、隠さずに言った方がいいと思います。気持ちを伝えるのは難しいと思いますけど、とにかく女性だってことだけは言った方が良いですよ。多分、園部さんの悩みって全部そこにかかってると思うから」
「で、でも…」
そんなことを言ったら…アカネは傍にいてくれないと思う。出て行くんだと思う。そう思ったら、怖くて出来ないんだ。きっとこれってすごくズルイ考えなんだろうけど。
ユリちゃんは、俺のそんなズルイ考えすら見抜いていた。
すごい。すごすぎる。
「もし女性だと知って離れていったら、節度のある人って証拠ですよ。離れたら寂しいのは分かります。でも、そこから始めないと園部さんの気持ちを形にはできないんじゃないかなあ」
「形って?」
「付き合うってことですよ」
「つ、付き合う!?」
「そうです。だって園部さん、その人と付き合いたいって思ってますよね?もし傍にいるだけで良いっていうなら、このまま女性だってことを知られないままでも良いってことになるじゃないですか。園部さんは、次のステップに行きたいって思ってるんですよ。その人との関係」
想像するだけでも恐ろしい…。
アカネと俺が…どうにかなるとかそういう…あ〜駄目だ!恥ずかしくて死にそうになる。想像ですらヤバイ。
でも…確かにユリちゃんの指摘通りなんだと思う。
傍にいることが第一優先だったら、このままいればそれで良いんだと思う。だけど、好きでどうしようもなくて、どうにもできなくて…それってつまり、どうにかしたいってことなんだ。
その「どうにか」っていうのはつまり…そ、そういうことなのか…。
「でも、きっとその人、園部さんのこと好きだと思うなあ」
「な、何を根拠に!?」
「だってー、その人は園部さんのこと男だと勘違いしてるわけでしょう?それなのに園部さんに思わせぶりなこと言うなんて、性別がどうのって以前に園部さんのこと好きなんですよ。そうじゃなきゃゲイかな?」
なーんてね、とユリちゃんは笑う。
なーんてね、という言い方がアカネを思い出させて、俺はちょっとドキッとしてしまった。
結論として、ユリちゃんは、女であることを白状しろと言う。確かにそれは言った方がいいのかもしれない。だんだんそんな気分になってきた。もしそれでアカネが俺を拒否したら…悲しいけど、つまり俺は次のステップに行く資格なんて無かったってことになるんだから。そうなったらそうなったで仕方ないのかもしれない。それを怖がってこのまま避けていたら、結局悶々とするしかないんだ。
でも、俺にはやっぱり勇気が必要だった。
白状するにも、白状するシチュエーションというのが必要だ。
どのタイミングで?
そもそもどこで?
それを考えただけで俺は頭が沸騰しそうになってしまう。
「せっかくだし、デートすれば良いじゃないですか!そしたらいっぱいその人といられますよー。外出に誘うくらい問題ないですよね?」
「デ、デート…!!!」
「映画とかドライブとか…ベタだけど遊園地かなあ」
「ゆ…」
ユリちゃん…それってバリバリのデートスポットばっかりなんですけど…。そんなあからさまにデートっぽい場所にアカネと二人きりでなんて想像できない…。
アカネは多分車を持ってないから、ドライブっていうのはないだろう。そういえば免許を持ってるのかどうかも知らない。
残るは…映画か遊園地?
…駄目だ、恐ろしすぎる。
俺があんまりに弱音を吐くもんだから、ユリちゃんは仕方なさそうに笑って、じゃあ食事にしたらどうですか、と割と何とかできそうなプランを立ててくれた。
ユリちゃんのプランはこうだ。
俺がアカネを誘う。そして二人でショッピングモールへ。その辺の店をプラプラ見ながら最後に食事。…で、最後に白状するってわけだ。
まあ簡単といえば簡単だろう。…多分。
「じゃ、頑張ってくださいね!」
ユリちゃんはにっこりと笑って俺にエールを送ってくれる。
この笑顔にごめんなさいなんて謝ることがないように俺は頑張らなくちゃいけないわけだけど、やっぱり想像するだけで緊張してしまう情けない俺がいたのだった。
アカネを誘うとき、俺はあからさまに態度がおかしかった。
でもアカネは、何でもないように普通にOKをしてくれた。
「そういえば一緒に出かけたことって無かったよな。じゃあ初体験だな。あーそうだ。俺らっていつも家で一緒にメシ食うとかないじゃん。ジュンってどんなメシ食ってんの?」
「えっと…コンビニ弁当とかかな。外で食べてくるときはいろいろ食べるけど。ファミレスとかファーストフードだし」
「ふーん。じゃあファミレスでいっか?」
ファミレス!!!
…いや、いいんだけど。
むしろそのほうが緊張しなくてすむんだけどさ。
でもユリちゃんと話してたとき想像したのが妙に敷居高そうなとこだったから、何だかちょっと拍子抜けしたっていうか…でもまあ、そうだよな。それが丁度良いかも。
アカネの仕事の都合で、裏別称デートは一週間後になった。
一週間…。
俺はその間に、覚悟を決めなきゃいけないわけだ。
アカネに本当のことを言って…。
…。
…。
あれ?
良く考えたら、アカネに白状するのが目的であって、好きですって告白するのが目的なわけじゃないんだよな。そう考えたらちょっとだけホッとした。
ここでホッとできる分、俺はちょっと成長した気がする。きっとユリちゃんに告白したからだろう。さすがはユリちゃんだ。
とにかく一週間、それが俺の腹を決める期間だった。
だけど、俺はやっぱり性別上女でしかない。外見とのギャップがありすぎるのが一番の問題なんだろうけど。
だけど、その外見を気にしない人間も中には存在してるんだ。
「折り入って話しって、そんないきなり改まってなんですか?もしかしてクビとか言いませんよね?」
「まさか!そんな話じゃないって」
俺は、目の前で女の子らしい可愛い服を見事に着こなしているユリちゃんを見ながら、明らかに怪しい動作を繰り返していた。
職場近くのコーヒーショップは、実のところちょっとした溜まり場になってる。俺はあんまり使わないけど、お茶をして帰ったりとか、ミーティングに使ったりとか、用途はいろいろらしい。
休みの日、俺はユリちゃんにお願いがあると言って時間を作ってもらった。ユリちゃんは丁度退勤したところで、すっかりくつろいでいる。
ユリちゃんを呼び出したのは、相談をしたかったからだ。
勿論仕事の話じゃない。俺の…つまり、恋愛ごとの相談だ。
此処最近、もう自分だけではいっぱいいっぱいになってしまってどうしようもなくなっていた俺は、とにかく誰かに助けてもらいたかった。というより、話を聞いて欲しかったのかもしれない。だけど、話を聞いてもらうには、それなりの勇気が要るんだ。
俺みたいなやつに好きな男がいるとか、そんなの世間から見たらネタくらいにしかならないだろう。だけどネタだけで終わってしまっては相談できない。だから、俺はユリちゃんを選んだんだ。
ユリちゃんは、職場の中でも口が堅いことで有名だし、優しいということでも有名だったりする。
だから俺は、勇気を振り絞って相談することにしたんだ。
「あのさ、笑わないで聞いて欲しいんだ。もう本当にどうしたら良いか分からなくて…」
「恋の相談ですか?」
「えっ!?」
何で分かったんだ!?
驚く俺の前でユリちゃんが小さく笑ってる。
「勘ですけど、園部さん、好きな人いるんだろうなって思ってたんです。何となく雰囲気でそう思ったんですよね」
「そ、そうなんだ…すごいな、その勘…」
それが女の勘とかいうやつなら、俺には絶対無い気がする。さすがはユリちゃんだ。
俺はユリちゃんに感心しながら、俺の抱えている大問題についてを切り出した。
恋の相談なんて、俺の人生の中で初めてのことだ。
いくら相手がユリちゃんとはいっても、さすがに勇気が要った。
だけど…。
「園部さん、その人のことかなり好きなんですね」
「なっ!そ、そんなことないって!」
「そんな隠さなくっても良いのに。見てれば分かりますよー、好きなんだなあってことくらい」
「そっ…」
そんなものなのか!?
俺はものすごい勇気を使いながらアカネのことを話したんだけど、ユリちゃんはその間どういう気持ちで聞いていたんだろう。園部さんったら、なーんて思いながら聞かれてたらものすごく恥ずかしいんですけど…。
だけど、ユリちゃんはやっぱりユリちゃんだった。俺が信頼してるユリちゃんそのものだった。
「園部さん、私、隠さずに言った方がいいと思います。気持ちを伝えるのは難しいと思いますけど、とにかく女性だってことだけは言った方が良いですよ。多分、園部さんの悩みって全部そこにかかってると思うから」
「で、でも…」
そんなことを言ったら…アカネは傍にいてくれないと思う。出て行くんだと思う。そう思ったら、怖くて出来ないんだ。きっとこれってすごくズルイ考えなんだろうけど。
ユリちゃんは、俺のそんなズルイ考えすら見抜いていた。
すごい。すごすぎる。
「もし女性だと知って離れていったら、節度のある人って証拠ですよ。離れたら寂しいのは分かります。でも、そこから始めないと園部さんの気持ちを形にはできないんじゃないかなあ」
「形って?」
「付き合うってことですよ」
「つ、付き合う!?」
「そうです。だって園部さん、その人と付き合いたいって思ってますよね?もし傍にいるだけで良いっていうなら、このまま女性だってことを知られないままでも良いってことになるじゃないですか。園部さんは、次のステップに行きたいって思ってるんですよ。その人との関係」
想像するだけでも恐ろしい…。
アカネと俺が…どうにかなるとかそういう…あ〜駄目だ!恥ずかしくて死にそうになる。想像ですらヤバイ。
でも…確かにユリちゃんの指摘通りなんだと思う。
傍にいることが第一優先だったら、このままいればそれで良いんだと思う。だけど、好きでどうしようもなくて、どうにもできなくて…それってつまり、どうにかしたいってことなんだ。
その「どうにか」っていうのはつまり…そ、そういうことなのか…。
「でも、きっとその人、園部さんのこと好きだと思うなあ」
「な、何を根拠に!?」
「だってー、その人は園部さんのこと男だと勘違いしてるわけでしょう?それなのに園部さんに思わせぶりなこと言うなんて、性別がどうのって以前に園部さんのこと好きなんですよ。そうじゃなきゃゲイかな?」
なーんてね、とユリちゃんは笑う。
なーんてね、という言い方がアカネを思い出させて、俺はちょっとドキッとしてしまった。
結論として、ユリちゃんは、女であることを白状しろと言う。確かにそれは言った方がいいのかもしれない。だんだんそんな気分になってきた。もしそれでアカネが俺を拒否したら…悲しいけど、つまり俺は次のステップに行く資格なんて無かったってことになるんだから。そうなったらそうなったで仕方ないのかもしれない。それを怖がってこのまま避けていたら、結局悶々とするしかないんだ。
でも、俺にはやっぱり勇気が必要だった。
白状するにも、白状するシチュエーションというのが必要だ。
どのタイミングで?
そもそもどこで?
それを考えただけで俺は頭が沸騰しそうになってしまう。
「せっかくだし、デートすれば良いじゃないですか!そしたらいっぱいその人といられますよー。外出に誘うくらい問題ないですよね?」
「デ、デート…!!!」
「映画とかドライブとか…ベタだけど遊園地かなあ」
「ゆ…」
ユリちゃん…それってバリバリのデートスポットばっかりなんですけど…。そんなあからさまにデートっぽい場所にアカネと二人きりでなんて想像できない…。
アカネは多分車を持ってないから、ドライブっていうのはないだろう。そういえば免許を持ってるのかどうかも知らない。
残るは…映画か遊園地?
…駄目だ、恐ろしすぎる。
俺があんまりに弱音を吐くもんだから、ユリちゃんは仕方なさそうに笑って、じゃあ食事にしたらどうですか、と割と何とかできそうなプランを立ててくれた。
ユリちゃんのプランはこうだ。
俺がアカネを誘う。そして二人でショッピングモールへ。その辺の店をプラプラ見ながら最後に食事。…で、最後に白状するってわけだ。
まあ簡単といえば簡単だろう。…多分。
「じゃ、頑張ってくださいね!」
ユリちゃんはにっこりと笑って俺にエールを送ってくれる。
この笑顔にごめんなさいなんて謝ることがないように俺は頑張らなくちゃいけないわけだけど、やっぱり想像するだけで緊張してしまう情けない俺がいたのだった。
アカネを誘うとき、俺はあからさまに態度がおかしかった。
でもアカネは、何でもないように普通にOKをしてくれた。
「そういえば一緒に出かけたことって無かったよな。じゃあ初体験だな。あーそうだ。俺らっていつも家で一緒にメシ食うとかないじゃん。ジュンってどんなメシ食ってんの?」
「えっと…コンビニ弁当とかかな。外で食べてくるときはいろいろ食べるけど。ファミレスとかファーストフードだし」
「ふーん。じゃあファミレスでいっか?」
ファミレス!!!
…いや、いいんだけど。
むしろそのほうが緊張しなくてすむんだけどさ。
でもユリちゃんと話してたとき想像したのが妙に敷居高そうなとこだったから、何だかちょっと拍子抜けしたっていうか…でもまあ、そうだよな。それが丁度良いかも。
アカネの仕事の都合で、裏別称デートは一週間後になった。
一週間…。
俺はその間に、覚悟を決めなきゃいけないわけだ。
アカネに本当のことを言って…。
…。
…。
あれ?
良く考えたら、アカネに白状するのが目的であって、好きですって告白するのが目的なわけじゃないんだよな。そう考えたらちょっとだけホッとした。
ここでホッとできる分、俺はちょっと成長した気がする。きっとユリちゃんに告白したからだろう。さすがはユリちゃんだ。
とにかく一週間、それが俺の腹を決める期間だった。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる