惚れ薬をもって敵国に嫁いだんですが、持参してきたのがバレました。

新田 ゆえ

文字の大きさ
3 / 3

3.

しおりを挟む
それから私は元の部屋に戻ろうとしたのだが、殿下に止められてしまった。

「流石に俺も一緒にここで住むのは無理かもしれないが、あそこの部屋よりここの部屋の方が俺の部屋に近いだろう。今度からはここの部屋を使ってくれて構わない」

これは...どういうことなのだろうか。

正直どうして殿下の部屋に近い方がいいのかがわからないけど、多分殿下なりの配慮なんだと思う。

こっちのベットの方が寝心地いいし、誰も使ってないみたいだし...

ちょっとだけなら構わないよね。

「ではそうさせていただきます」

「ああ。」

殿下は私がそう答えると安心したように、嬉しくてたまらないように微笑んだ。

——ドキッ。

私は不意打ちのイケメンスマイルに柄にもなく少しドキッとしてしまった。



それから、一応形だけの花嫁だというのに、勉強やら、なんやらはあまりなかった。

やっぱり私はそんな授業などすらも、受ける権利がないというのか...。

私はたまに部屋に遊びにきている殿下にそっと相談した。

初日のようなギクシャクした堅い雰囲気は溶け、今は良き友人のような関係になっている。

「殿下...私は一応、殿下の婚約者な訳なんですが...その、恥ずかしながら自国ではあまり、勉強を受けていなくて、特にマナーとダンスについては...それで、ここでレッスンを受けさせてもらうことはできないでしょうか?その機会がもし、もしあって、失敗してしまったら、殿下の名に傷がつくでしょう?」

気をつけてはいるが、なにかものをねだるような言い方になってしまう。

嫌な女だと思われたかな?

「...すまない、不安にさせていたのだな。今はリリーローズはこっちにきたばっかりだから、いきなりそういうことをさせたらまた倒れてしまうかもと思って、先延ばしにしていたんだ...幸いにも、不幸にも、この結婚は無期限だ。だからいくらでも時間がある。こっちに慣れてからゆっくり進めればいい」

私は優しくて、柔らかい物言いに少しびっくりしてしてしまった。

なんだか変に感じてしまう。

私は不敬だとは思いながらもこの気持ちを伝えた。

「...殿下は何かかわられましたね。最初来た時とは全然違っていらして....最近の殿下は謝ってばっかりです。殿下がそんなに頭を下げてはいけませんのに」

私は頑張って淑女に見えるように、言葉遣いに気を使った。

つもりだった。

「その喋り方...無理をしていないか?俺の前なのだから、気にしなくていい。」

殿下はどこまでも優しいのだな、と思った。

そういえば、お母様の手紙には、国王さま、つまり殿下のお父様を頼れということだよね。

お母様が頼れという人ならきっと悪い人じゃない。

ということは、その人の息子である殿下も悪い人ではないのかもしれない、

私の心の中からは、最初の『冷たくて無愛想な人』という印象はすべて消し去られていた。



そして、終わった話を掘り返すのが、この馬鹿な私...

「その、惚れ薬についてなんですが...」

殿下は思い出して、ハッとしたような顔の次に、少しその美しい顔を歪める。

「も、持ち込んだのは悪いと思います。でも、あれは亡くなった母の形見とも言えるものなのです。どうか許してください」

「わかっている。リリーローズを責めているわけじゃない。そっちにも事情があるんだろ。こっちこそ、知らない事情に首を突っ込んで悪かったな」

...先ほどの私の言葉を聞いていなかったのか?

「だーかーら...殿下はそんなに簡単に人に頭を下げてはいけませんってば...」


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

処理中です...