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第一話
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その日も、次の日も知らない部屋で殿下に抱かれる夢をみた。
とある日には焦らすようにゆっくりと。
とある日には焦ったように激しくと。
私はどうしてこんな夢を見るのかさっぱり見当もつかなかったが、それは考えないようにしているだけの間違いであった。
考えたくない...。
言えない...。
でもそんな夢に私は満足していた。
その夢のおかげで、その日一日が頑張れるのだ。
この夢のために私は今を生きていると言っても過言ではない。
そして、そんな暖かくて優しい夢は生身の殿下のいない生活の寂しさを紛らわしてくれた。
だから、私は自然と夢の中の殿下に愛を囁いた。
現実では言えないようなことを全て、吐いた。
弱音のような言葉も、醜い嫉妬の言葉も、乙女のような愛の言葉も。
そして夢の中の殿下は一言一言私のその言葉に答えてくれた。
でも、そのたびに現実のそっけない冷たい彼が私の脳裏に浮かび上がり、これは夢なんだと、やけに私を覚まさせた。
あまりにも、現実と違いすぎて。
あぁ、これは幻の、私の妄想の中だけの、私の理想の殿下なんだと。
そう思ってしまった。
なぜかそんな言葉も無駄にしっくりきてしまったことに、苛立ちを覚えながら。
◇
そしてそんな淫らに暴かれる夢を毎日見るようになってから1ヶ月経った。
夢につけば甘い言葉で癒してくれる。
そしてそんな妄想に溺れて、これからのことを全く考えてないことにようやっと気づいた。
5ヶ月後、彼は留学から帰る。
そう、留学といっても半年だけなのである。
もし、このまま殿下が帰ってきてしまったら、わたしの理想の殿下は消えてしまうのだろうか。
私は本当の殿下が帰ってくることを喜ぶ自分と、理想の殿下に消えて欲しくない自分がいたのをここにきてやっと理解したのだった。
私はこの夢の中でどこまでなにができるのか確かめたかった。
だから行為をする前に尋ねることにした。
『あの...殿下』
『どうした?もしかして今日は気分ではないのか?』
『いえ...ただ少し話したくて。』
『あぁ...そういえば、お前が可愛すぎて会うたびに襲ってしまっていたからあまり話すことはなかったな』
さりげなく甘い言葉を吐いてくることに私は胸が疼くが、言葉に違和感を感じた。
会うたび...?
まるで夢の中で会っているかのようないいようだ。
でも、会話ができるようなので、わたしは特に気にすることなく会話を続けた。
『おかしなことを言いますが...ここは、夢の中なんですよね?』
『.....あぁ』
殿下はすっと笑みを消して短く返事をした。
その姿は現実の彼をよく思い出させた。
とある日には焦らすようにゆっくりと。
とある日には焦ったように激しくと。
私はどうしてこんな夢を見るのかさっぱり見当もつかなかったが、それは考えないようにしているだけの間違いであった。
考えたくない...。
言えない...。
でもそんな夢に私は満足していた。
その夢のおかげで、その日一日が頑張れるのだ。
この夢のために私は今を生きていると言っても過言ではない。
そして、そんな暖かくて優しい夢は生身の殿下のいない生活の寂しさを紛らわしてくれた。
だから、私は自然と夢の中の殿下に愛を囁いた。
現実では言えないようなことを全て、吐いた。
弱音のような言葉も、醜い嫉妬の言葉も、乙女のような愛の言葉も。
そして夢の中の殿下は一言一言私のその言葉に答えてくれた。
でも、そのたびに現実のそっけない冷たい彼が私の脳裏に浮かび上がり、これは夢なんだと、やけに私を覚まさせた。
あまりにも、現実と違いすぎて。
あぁ、これは幻の、私の妄想の中だけの、私の理想の殿下なんだと。
そう思ってしまった。
なぜかそんな言葉も無駄にしっくりきてしまったことに、苛立ちを覚えながら。
◇
そしてそんな淫らに暴かれる夢を毎日見るようになってから1ヶ月経った。
夢につけば甘い言葉で癒してくれる。
そしてそんな妄想に溺れて、これからのことを全く考えてないことにようやっと気づいた。
5ヶ月後、彼は留学から帰る。
そう、留学といっても半年だけなのである。
もし、このまま殿下が帰ってきてしまったら、わたしの理想の殿下は消えてしまうのだろうか。
私は本当の殿下が帰ってくることを喜ぶ自分と、理想の殿下に消えて欲しくない自分がいたのをここにきてやっと理解したのだった。
私はこの夢の中でどこまでなにができるのか確かめたかった。
だから行為をする前に尋ねることにした。
『あの...殿下』
『どうした?もしかして今日は気分ではないのか?』
『いえ...ただ少し話したくて。』
『あぁ...そういえば、お前が可愛すぎて会うたびに襲ってしまっていたからあまり話すことはなかったな』
さりげなく甘い言葉を吐いてくることに私は胸が疼くが、言葉に違和感を感じた。
会うたび...?
まるで夢の中で会っているかのようないいようだ。
でも、会話ができるようなので、わたしは特に気にすることなく会話を続けた。
『おかしなことを言いますが...ここは、夢の中なんですよね?』
『.....あぁ』
殿下はすっと笑みを消して短く返事をした。
その姿は現実の彼をよく思い出させた。
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