幻魅桃~げんみとう~

秋月みゅんと

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それからの(2)

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 翌日、断る理由もなく、直史はスポーツセンターに来ていた。
 紡がうっかり「俺達、付き合ってます」なんて言うのではないかと不安もあった。

「あれ、健人は?」
 紡が辺りを見回す。
「呼んでない」
「もしかして、ケンカした?」
 紡は、不安そうに亮の顔を覗き込む。
「別に。アイツとセットみたいな言い方はよせ」
 そう言って、建物内へと先に入っていく。
 直史は内心ドキっとした。
――俺達はいつも一緒だと言ってるんだろうか……
 亮の言葉ばかりが気になってしょうがない。そんな直史に紡は寄り、耳打ちした。
「機嫌悪いね。絶対、健人と何かあったんだ……」
 直史はこの時気づかなかったが、どうやら紡の言ったことは、正解だった。

 普段から無口な亮が、一言も話さずにテニスの壁うち、アーチェリー、バッティングにピッチング等、もくもくとスポーツをこなしていく。
 そのうち、気が晴れたのか少し余裕のある表情になり、ようやく口を開いた。
「二人とも、バスケ以外はあまり興味ないのか?」
「いや……」
「そうでもないけど、ね」
 紡は曖昧な笑顔を直史に向けた。
――小野寺、お前の機嫌が気になって、何もできないんだよ……


「よし、コートが空いたら次はバスケにしよう」
 しばらくして、亮はバスケのコートへ足を向ける。そこはまだ、別のグループが使用していた。
「あ、ちょっと休憩しない? 俺、飲み物買ってくるよ」
 紡はそう言って、自動販売機の並ぶコーナーへと向かった。
 直史は、空いているベンチを探して座った。
 その横に、間を空けて亮が座る。
「悪かった」
 いきなり謝るので、直史は亮を見た。
「腹が立つと、体を動かしたくなる。しかも一人で、というのは嫌なんだ」
「で、治まったか?」
「あぁ」
 その返事に直史の顔が綻ぶ。
「小野寺にもこんな面があるんだな。ちょっと驚いた」
 亮も笑う。

「何、何? 二人して楽しそう」
 ペットボトルを持って紡が戻る。
「紡が一生懸命走ってくるから、子犬みたいだって笑っただけ」
「ひどっ! せっかく急いで買ってきたのに」
 亮はジュースを受け取り言う。
「お前らほんと仲良いな。うらやましいよ」
 その瞬間、直史は固まる。
 亮は何事もないように、蓋を開けて飲みだした。
「あー……小野寺。ちょっと聞いていいか?」
 直史は咳払いをして、亮を見た。
「紡が、幸せそうってのは最近の話か?」
「あぁ、なんだかうきうきした感じで楽しそうだろ? だから、気持ちを分けてもらおうと呼んだんだ」
「えへへ、そう? どんどんもらって」
 能天気に紡が言う。

「それって……俺もなのか? ……俺も呼んだって、事は」
 慎重に直史は言う。
「紡を呼ぶなら、井坂も呼ぶべきかと思った」
――それってやっぱ、気づいてるって事かっ!?
「井坂と居る紡は、実に楽しそうだと思う」
――まずいだろっ! 絶対気づかれてるだろっ!!
 焦る直史とは逆に、紡は嬉しそうだった。
「そう? 照れるなぁ」
――照れるとか言うなっ!!
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