幻魅桃~げんみとう~

秋月みゅんと

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それからの(3)

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――もうダメだ。完全に気づかれている……
 元気を取り戻した亮とは逆に、気力のなくなった直史。
 直史が断ったからか、紡と亮は飲み終えてからバスケットではなく、パターゴルフを始めた。
 とてもそんな気分になれない直史はベンチに腰掛けたままでいた。
「井坂、次やれば?」
 亮は直史のもとに戻ってくると、そう言って腰かけた。

「小野寺、内緒にしててくんねぇかな。その……紡が、俺と……」
 すると、亮は驚いた顔を向ける。
「気づいてるのか?」
――な、何に?
「えっ」
「その……紡の気持ち」
 亮は、パターをしている紡に視線を移して話す。
――気づいてるも何も……俺ら、付き合ってるんだよな……
「……嫌じゃないなら、そのまま仲良くしていてくれないか」
「何だよ。保護者みてぇ」
 直史は知らぬふりで笑う。

 亮は、真顔で直史を見た。
「紡は、中二から知っているが……嫌な奴等にちょっと、イジメられていたから」
「えっ……」
 それは初耳だった。
「イジメと言うと大げさか。本人はたいして気にしてはいなかった」
 パターが入ったと紡が、アピールしている。直史と亮が、手を振ると子供のように笑う。

「なんか、可愛らしいというか……そんな雰囲気を持っていて、その上、好きになったのが……って、言いたい事、わかってもらえるか?」
――イジメに逆戻りしないかってことか?
「たぶん、アイツの気持ちに気づいているのは、俺とお前だけだろ。心配すんな」
「それも、そうだな」
 亮はほっとした顔を向けた。
「俺……あー、あれだ。高校入ってからずっと仲良くしてもらってる。良い友達だと思ってるよ……だから、裏切らねぇ」
――「俺ら付き合ってる」って言いそうになった。というか訳わからんこと口走ってるよな……
 穏やかな亮の顔を見ていると、すごく心苦しい。


 帰り際、紡がふと気づいたことを口にする。
「そういえば、なんで直史と亮って苗字で呼んでるの?」
――そう言われてみれば……なんか、小野寺には敬意を払っているというか、そんな感じ。……ということは小野寺もなのか?
「直史より、井坂の方が短いから」
 すぱっと亮が言ったので、直史は消沈した。
「……一文字しか、減ってねぇし……」
「じゃあ、直史は?」
 紡は興味津々で直史の顔を覗き込んだ。
「……小野寺は……小野寺、って感じだから!」
――ぜってぇ本心言いたくねぇっ!

「今日はありがとう。また明日」
 亮は、いつものクールな表情でそう言う。
「おう、またな」
「うん、明日」
 亮の背中を見送り、直史と紡も歩き出した。


「直史、」
 いつもの角でふと紡が口を開いた。
「亮には片思いだって言っておいたから」
 にっこりと紡が笑顔を向ける。
――えっ、何時!?
「亮はね、そのうち直史に気づかれるぞ。嫌がられる前に少し距離を置けって言うんだ」
――そりゃそうだな……
「で? 何て言った?」
「直史は気にならないみたいだって、言った」
――それって……バレ気味なんじゃね!?
 直史は少し焦る。
「心配してもらってるのに、ウソついちゃって申し訳ないと思う。でも……秘密、だよね?」
 いたずらっぽい笑みで紡が言う。
「当たり前だ」
――小野寺にバレるのは、時間の問題って気がしてきた……
 直史は、ため息をつく。
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