勇者の娘は貴方を探して

はばのねろ

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第一章:お城の人々

ジゼル・シュッティ

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 呆気に取られていると、その様子に気付いた女性が今度は困ったように眉毛を下げながら笑う。
「やだぁ、面白い顔。私、別に変な人じゃないよぉ」
 ……初対面の人の顔を指して面白いだなんて、明らかに変な人だと思うけど……。
「そっかぁ、自己紹介してなかったねぇ。私はジゼル・シュッティだよぉ。よろしくねぇ」
 そう言ってジゼルはゆったりとした動作でこちらに手を差し出してくる。
 薄い黄色の目にオレンジ色の髪をお団子の様に後ろで纏めている。年齢は、見た目からすると私と同じくらいかもう少し幼いくらいだけど……。
「あ……ティーレ・エルクです。よろしくお願いします」
 私が差し出された手を握り返すと、すかさずジゼルはその手を両手で包み込んでくる。
「うんうん、ティーレちゃんねぇ。会えて嬉しいなぁよろしくねぇ」
 そう言ったままなかなか手を離さない。
 初対面の人に対してすごく失礼な言い方かもしれないけど……やっぱりこの人、少し変わってる……。
「えっと、それで、シュッティさんは何故ここへ……?」
「ジゼルでいいよぉ。えっとね、新人さんにお城の案内をするようにメイド長さんから頼まれたんだぁ」
「あぁ、そうだったんですか」
 つまりはこの人が……ジゼルが面接の女性が言っていた別の者ってことね。何でこんなに遅くなったのかは……ジゼルの第一声の『ここかぁ~』と言う発言を聞く限り、多分部屋が分からなくて迷っていたかここに来ることを忘れていたのでは……?ジゼルの子の様子だと、どちらもあり得そうだ。
「敬語もいいよぉ。普通に話して、ね?」
「は……う、うん」
「よーし、じゃあ行こ~♪」
 ジゼルは満足げに笑い、私の手を引いて部屋から出る。
「あ、あの、手……」
「んー? あ、ごめんねぇ癖で」
 下を少し出しながらはにかむ様子を見るにわざとではないようだが……な、なんだか別の意味で気が抜けない人だ。
「それで……今からどこへ行くの?」
 軽快に先を歩くジゼルに声をかける。
「んーとねぇ。今から王様の所に行こかなって」
「お、王様!?」
 突然の大本命の登場に思わず目を丸くする。
 父さんの情報を探し出すために王様の話は是非聞きたいところではあるが、相手は王族で私は使用人……恐らく叶うことはないだろうと思っていたのだが、まさかこんなに簡単に……?
「あ、会えるの? 王様に!」
「会えないよぉ? 玉座の間に行くだけ~」
 うん……何となく予想はしていたけど、どっと肩の力が抜けてしまった。
 ……ジゼルの発言には少し気を付けた方がいいのかもしれない。
「でもでも~運が良かったら会えるかも? ていうか見れるかもだよ~」
「運が良かったら?」
「丁度玉座の間で王様が謁見してたらぁ、出てくるところみられるかもよぉ?」
 なるほど。そういう意味の会えるかもってことね。
 実のところ、私は王様の姿を知らない。正確に言うと覚えていないのだ。幼い頃に何度かあったらしいのだけれど、あの頃の記憶はあんまり思い出せないから……。
 もし、見れるのならば一目見てみたい気持ちはある。
「は~い! ここが玉座の間で~す」
 そうこうしているうちに、周りの扉と比べてひと際大きくて重厚感のある扉の前へと着いた。
 扉は閉まっていて中の様子は見れないけど、ここが玉座の間……この中に王様が?
「衛兵さん衛兵さん。今王様は中にいますかぁ?」
 ジゼルが扉の横に立っている兵士に尋ねる。
「そんなこと教えられるわけないだろう」
 兵士はぴしゃりと言い放つ。まぁ、そうだよね。私が衛兵でも言わないかな……。
「ケチ~」
 ジゼルは拗ねたように両頬を膨らませる。兵士はどう接するか決めあぐねているように瞼をぴくりと震わせる。
「仕方ないねぇ。じゃあ別の所に……」
 と、ジゼルが言葉の途中でぴたりと止まる。玉座の間へと続く廊下の先をじっと見つめているようだ。
「ジゼル……?」
 私が問いかけると、ジゼルは細めていた元に目を戻し、にんまりと笑う。
「ティーレちゃんついてるよぉ。王様の次に偉い人が見られるなんて!」
 王様の次に偉い人……?それって……。
「ふふ、フェリクス王子とリシャルト王子だよ!」
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