勇者の娘は貴方を探して

はばのねろ

文字の大きさ
10 / 12
第一章:お城の人々

フェリクス・ファン・デン・フェルデン

しおりを挟む
「フェリクス王子とリシャルト王子……?」
 私が首をかしげると、ジゼルは信じられないと言った表情をする。
「えぇ!? ティーレちゃん知らないの!? この国の王子様二人だよぉ?」
 そ、そういえば何となく名前だけは聞いたことがあるような……この国の情報なんて意識してあんまり聞かないようにしていたから……。
 とりあえず、知っているふりだけでもしないと怪しまれちゃう!
「あ、あぁ~! そうだよね! なんか信じられなくて動揺しちゃった~」
「わかるよぉ~ジゼルも初めて見た時は驚いたもんねぇ」
 何とか納得してくれたようだ……。ジゼルがいい人で助かった。
 そうこうしているうちにもうすぐそこまで王子たちが来ている。
「王子様たちとすれ違う時はぁ、廊下の端によって頭を下げるんだよぉ」
 そう言うと、ジゼルは見本を見せるかのように言葉通りに行動する。私もそれを見て同じように廊下の端により、頭を下げる。
 本当は王子様たちの顔を見てみたかったのだけれど……。これからお城で働くんだもん。見られる機会はまたあるよね?
 自分のつま先を見つめつつそんなことを考えていると、段々と声が近づいてくる。数人の男の声のようだ。話している内容はよく聞こえないが、とりとめもない会話をしているように聞こえる。
 何か父さんに関する事でも話してくれないかな……。そんなことを考えていると、私の視界に綺麗な白い靴が現れる。その靴の主は何故か私の目の前で止まる。
「そこの……金色の髪の子? 顔を上げてくれるかな」
 金色の髪……って、わ、私の事か……!こういう時勝手に顔を上げていいものか困って横を見ると、ジゼルはこちらを見てウインクをする。
 ……いい、ってことなのかな?
「……はい」
 私は少し震える声で返事をし、ゆっくりと顔を上げる。
 目の前で待っていたのは、この世の者とは思えないほど美しい青年だった。
 端正な顔立ちに宝石のような緑色の目、薄く透けるように輝く金色の髪は綺麗な頭の形に沿うように整えられている。白と金で統一された服は、彼しか似合わないと言っても過言ではない。
「…………」
 私は目の前の人物の容姿に度肝を抜かれ、思わず一歩後ろへ下がりそうになる。
「あぁ。やっぱり新しい人だね。見た事がないなと思ったんだ」
 青年は目を薄く細めて微笑む。
 な、何か言わなくてはいけないのに青年の笑顔に圧倒されて言葉が出てこない……!
 そんな私の様子を見て、青年は何か閃いたような顔をする。
「あぁ、そう言えば自己紹介がまだだったね。僕はフェリクス・ファン・デン・フェルデン。一応、この国の第一王子をやっています。これからよろしくね」
 そう言って目の前の王子は私に手を差し出してくる。
「てぃ、ティーレ・エルクと申します。不束者ですがよろしくお願い申し上げます……」
 私はその手をガクガクと震える手で握り返す。すると、フェリクス王子は優しげにふわりと笑う。
 な、何となくそうかなって思っていたけどやっぱりこの青年が王子様……!私の様な一使用人に握手を求めるなんて、いいのかな、こんな事……!
「……兄様。お父様がお待ちです。急いだ方がよろしいのでは?」
 声がした方を見ると、フェリクス王子と同じデザインの服を着た少年が少し不機嫌そうに立っていた。
 同じデザインの服……もしかしてこの少年が……。
「そうだったね、リシャルト。じゃあ、お仕事頑張ってくださいね」
 そう言ってフェリクス王子は私の手を離すと、薄く微笑みながら玉座の間へと歩いていく。
 あれがフェリクス王子……何というか、すごく王子らしい王子という素敵な人だったなぁ……。
 私がぼんやりとフェリクス王子の後姿を見つめていると、突然足に衝撃が走る。
「え……?」
 振り返ると、先程の少年が私の足を蹴り飛ばし、今度は心底不快そうな顔でこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...