勇者の娘は貴方を探して

はばのねろ

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第一章:お城の人々

リシャルト・ファン・デン・フェルデン

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「おいお前、何ボーっとしている? 王子を目の前にして礼もできないのか?」
「あっ! も、申し訳ございません!」
 私は慌ててその少年に向かって頭を下げる。
「ふん! 少し兄様と話したくらいでいい気になるなよ使用人風情が」
 そう言い捨てると少年もフェリクス王子の後を追って玉座の間へと歩いて行く。
「……ん、もういいよぉ~」
 ジゼルの声で頭を上げる。王子たちはすでに玉座の間へ入ってしまった後のようだ。
「いやぁびっくりだね~二人の王子と会話できたね~」
「二人の王子……?」
 二人、と言うとやはり先程の少年は……。
「勿論フェリクス王子とリシャルト王子だよ~。あ、あの幼い方がリシャルト王子だよ~正式な名前はぁ……リシャルト・ファン・デン・フェルデン……だったかなぁ」
 あの少年がリシャルト王子……。肩まである白みがかった薄い紫の髪に、真ん丸の大きな紫色の瞳。ぬいぐるみなんか抱えていたらよく似合いそうだ。見た目は大変可愛らしいのにあの言葉遣いとのギャップは一体……。
「リシャルト王子はねぇ、んーちょっと色々あって変わってるけど大丈夫だよぉ。ほとんど使用人と関わらないって話だからぁ」
「そうなんだ……」
 それはちょっと安心……だけど、父さんの情報を聞き出すためには関わらなくちゃいけないんだよね。ジゼルが言う色々とは何のことなんだろう……。
「ん~次はどこに案内しようかなぁ~」
 ジゼルが唇に指をあて考え込んでいると、一人のメイドがこちらへ駆け寄ってくる。
「ジゼル! メイド長カンカンだけど貴方何をしたの!?」
「えぇ~? 別に何も……あ」
 何か思い当たる節があったようだ。ジゼルの顔色がどんどん悪くなっていく。
「えっと、ティーレちゃんごめんね~ちょっと私行ってくるからぁ。その辺適当に見回っててね~」
「え!? ちょっと待っ……」
 そう言うと、ジゼルは私の言葉も聞かず言いに来たメイドと一緒にどこかへと走り去っていく。
「……どうしよ」
 勝手も分からないお城の中で一人残されてしまった。適当にって言ってたけど、入っちゃいけない場所とかあるんじゃないかな……大丈夫かな……。
 いや、これはチャンスなのかもしれない!今のうちにいろんなところを回って少しでも父さんの情報が手に入れることができれば……!
 よし、そうと決まれば早速探検……じゃなくて、父さんの情報を探すぞ!
 私はそう決意して城の中を回り始めた。
 メイドの格好をしているせいなのか、偉そうな人とすれ違う時だけ端によって礼をすることを忘れなければ特に怪しまれることもなく、私は城の中をうろうろしていた。
「なんか、似たような部屋ばっかりでよくわかんないなぁ……」
 そう呟きながら辺りを見回していたその時だった。
「お前! こんなところで何してる!」
「さっきからきょろきょろして! 怪しいぞ!」
 突然後ろから声が聞こえて思わず飛び上がりそうになる。
「す、すみません! その、私新しく使用人になりまして、それで道に迷って……しまって……?」
 慌てて振り向き弁明をしようとするも、声の主を見て驚く。
そこにいたのは全く同じ顔をした二人の少年だった。
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