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第二章:勇者カイ
第二章:勇者カイ⑮
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城下町を出てしばらくは舗装された道が続く。カイの話によると、この辺りに魔物は出ないそうだ。
「流石に魔物も空気読んでるんじゃない?」
とカイは言うが、俺から言わせればこの辺にも魔物はいる。現にそこらかしこに魔物の気配を感じているのだ。だが一向に襲って来ようとしないのは、ここが城の近くであるためそこにいる人間も比較的強く、魔物にとって分が悪いからであろう。俺が襲うとしてもこの辺りではしないな。もっと田舎の……兵士などいないような所を占拠した方がずっと簡単であろう。
まぁ、もっとも?それはあくまで一般的な魔物の話であって、俺ほどの魔物になれば場所を選ばずともどこでも……。
「ダモさん……ねぇダモさんってば!」
「ぬっ!? な、何だ……?」
危ない危ない……考え事に熱中しすぎてしまって、カイの話などこれっぽっちも聞いていなかった。明らかに不服そうな顔をしたカイがこちらを睨んでくる。すまん……。
「ったく……しっかりしてよほんと……」
悪態をつかれてしまった……むぅ、魔王ともあろう者が……しかし今のは俺が悪いのだ。ここは素直に謝っておくべきか。
「すまん。ぼぅっとしていた。何だったか?」
カイは相変わらずむすっとした様子だったが、一つため息をつくと前方の道を指さす。
「見える? もうちょっと行ったら道を外れて森に入るから。そしたら魔物とかたくさん出てくると思う」
「ふむ、分かった」
いよいよ俺の本領発揮と言ったところか?いやこんなことで本領発揮などしたくなかったのだが……。
しかし、カイは何故魔物と戦うのを嫌がるのだ?早く着けるのは俺にもありがたいことだが、どうにも理由が気になるのだ。
「カイ。森に入る前に一ついいか」
「なに?」
「何故魔物と戦わない? 前回の旅では戦っていたのだろう?」
そう、今回は俺が一緒にいるから戦わずして進むことができるのだ。時が繰り返す前の旅では一体どのようにしていたのだろうか。まさか戦わずに魔王城まで来たわけではあるまい。
「前回はちゃんと戦ったよ。じゃないと死んじゃうし」
「そうだろうな。では何故……」
「でもさぁ、僕戦いとか好きじゃないんだよね」
カイの発言に一応驚きはする、が、正直そこまでではなかった。思い返してみれば一番初めにも、この旅も王様に頼まれたからであって行きたくなかったとか言っていた気がするし、本人もどこかゆるくてやる気がないようにも見える。俺はカイが戦いを好きではないことを薄々感づいていたようだ。
「やはりか……」
「そーいう事。だからダモさん来てくれて助かっちゃったぁ~」
心の底から嬉しそうな笑顔で言うカイ。むぅ……これが自分の部下ならばはっ倒してでも戦わせ経験値を積ませるところではあるが、コイツは敵であり勇者であるし……教育しても仕方がないとは思うがやはりカイのためにはならないのでは……むぅ……。
俺がどうするべきか頭を抱えている間に森の入り口へと着いたようで、カイの歩みが止まる。
「じゃあ、ここから森に入るから。エルフの里はここからまたしばらく行ったところだよ」
「……うむ」
いよいよ魔物との対峙か。魔物を追い返す技量については何も問題はない。カイの事は……もう放っておくことにした。だが、どうにも足が動かない。
一体何を躊躇っているかについて、俺には心当たりがあった。それは、俺の魔王としての威厳についてだ。
勇者を襲おうとした魔物を魔王が追い返す……これって何かおかしくはないか?むしろこうして一緒に行動している事自体が可笑しなことなのだ。魔王が勇者の仲間になったと言われても当然だ。いや実際に仲間の様なものにはなっているが……。
とにかくまずい。まずいのだ。
「なぁ、カイ」
「ん?」
森へ入ろうとしていたカイを呼び止める。カイは不思議そうにこちらを見ているが、何と言ったらいいものか。
今更引き返そうとも、一緒に旅するのをやめようとも言えない。かと言って、このままでは俺は魔王では居られなくなってしまうだろう。当然だ。魔物を裏切った魔王など居て良いものではない。
俺は、一体どうしたら良いのだろうか。ここに来てこんな問題が発生するなど……いや、最初から分かり切っていたことではないか。魔王と勇者は相容れぬ存在。例え同じ志を持っていたとしても、一緒にいるべきではないのだ。
ここで、終わりだ。
「カイ。済まない。これ以上先にはいけない」
「流石に魔物も空気読んでるんじゃない?」
とカイは言うが、俺から言わせればこの辺にも魔物はいる。現にそこらかしこに魔物の気配を感じているのだ。だが一向に襲って来ようとしないのは、ここが城の近くであるためそこにいる人間も比較的強く、魔物にとって分が悪いからであろう。俺が襲うとしてもこの辺りではしないな。もっと田舎の……兵士などいないような所を占拠した方がずっと簡単であろう。
まぁ、もっとも?それはあくまで一般的な魔物の話であって、俺ほどの魔物になれば場所を選ばずともどこでも……。
「ダモさん……ねぇダモさんってば!」
「ぬっ!? な、何だ……?」
危ない危ない……考え事に熱中しすぎてしまって、カイの話などこれっぽっちも聞いていなかった。明らかに不服そうな顔をしたカイがこちらを睨んでくる。すまん……。
「ったく……しっかりしてよほんと……」
悪態をつかれてしまった……むぅ、魔王ともあろう者が……しかし今のは俺が悪いのだ。ここは素直に謝っておくべきか。
「すまん。ぼぅっとしていた。何だったか?」
カイは相変わらずむすっとした様子だったが、一つため息をつくと前方の道を指さす。
「見える? もうちょっと行ったら道を外れて森に入るから。そしたら魔物とかたくさん出てくると思う」
「ふむ、分かった」
いよいよ俺の本領発揮と言ったところか?いやこんなことで本領発揮などしたくなかったのだが……。
しかし、カイは何故魔物と戦うのを嫌がるのだ?早く着けるのは俺にもありがたいことだが、どうにも理由が気になるのだ。
「カイ。森に入る前に一ついいか」
「なに?」
「何故魔物と戦わない? 前回の旅では戦っていたのだろう?」
そう、今回は俺が一緒にいるから戦わずして進むことができるのだ。時が繰り返す前の旅では一体どのようにしていたのだろうか。まさか戦わずに魔王城まで来たわけではあるまい。
「前回はちゃんと戦ったよ。じゃないと死んじゃうし」
「そうだろうな。では何故……」
「でもさぁ、僕戦いとか好きじゃないんだよね」
カイの発言に一応驚きはする、が、正直そこまでではなかった。思い返してみれば一番初めにも、この旅も王様に頼まれたからであって行きたくなかったとか言っていた気がするし、本人もどこかゆるくてやる気がないようにも見える。俺はカイが戦いを好きではないことを薄々感づいていたようだ。
「やはりか……」
「そーいう事。だからダモさん来てくれて助かっちゃったぁ~」
心の底から嬉しそうな笑顔で言うカイ。むぅ……これが自分の部下ならばはっ倒してでも戦わせ経験値を積ませるところではあるが、コイツは敵であり勇者であるし……教育しても仕方がないとは思うがやはりカイのためにはならないのでは……むぅ……。
俺がどうするべきか頭を抱えている間に森の入り口へと着いたようで、カイの歩みが止まる。
「じゃあ、ここから森に入るから。エルフの里はここからまたしばらく行ったところだよ」
「……うむ」
いよいよ魔物との対峙か。魔物を追い返す技量については何も問題はない。カイの事は……もう放っておくことにした。だが、どうにも足が動かない。
一体何を躊躇っているかについて、俺には心当たりがあった。それは、俺の魔王としての威厳についてだ。
勇者を襲おうとした魔物を魔王が追い返す……これって何かおかしくはないか?むしろこうして一緒に行動している事自体が可笑しなことなのだ。魔王が勇者の仲間になったと言われても当然だ。いや実際に仲間の様なものにはなっているが……。
とにかくまずい。まずいのだ。
「なぁ、カイ」
「ん?」
森へ入ろうとしていたカイを呼び止める。カイは不思議そうにこちらを見ているが、何と言ったらいいものか。
今更引き返そうとも、一緒に旅するのをやめようとも言えない。かと言って、このままでは俺は魔王では居られなくなってしまうだろう。当然だ。魔物を裏切った魔王など居て良いものではない。
俺は、一体どうしたら良いのだろうか。ここに来てこんな問題が発生するなど……いや、最初から分かり切っていたことではないか。魔王と勇者は相容れぬ存在。例え同じ志を持っていたとしても、一緒にいるべきではないのだ。
ここで、終わりだ。
「カイ。済まない。これ以上先にはいけない」
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