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第1話
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「ただいま帰りました」
小学校入学前に、この月城家に入った。
立派な門、広い庭、大きな扉の玄関…全く自分には似合っていない造りの豪邸。
施設に居た時と違い、空気が冷たい。
人の温もりと言うのをあまり感じない、時折、虚しくなる。
この10年、慣れない部分も多いこの邸宅には、地下牢と言う名のまだ近寄ったこともない部屋もあると、秘書の伊織が言う。
祢音には『関係無いから知らなくても良い』と、昔聞いたことがあった。
関係無いと言われれば興味が湧くのは確かだが、自分の立場上、好き勝手にこの邸宅を徘徊するのはマナー違反だ。
「お帰りなさいませ、祢音様」
「ただいま」
「あの、今日の予定を聞いていませんが?」
ここには、ハウスキーパーやお手伝いさんなどは全て奏が自ら面接をし、雇っているからこそ優秀な人材が集まっている。
こんな場所に居ていいのか、何でこんな自分を選んだのか、祢音は自問自答する日々もあった。
だけど答えが出ないまま、こうして平和に暮らしているのが現状。
「…これから、部屋で自習します。奏様が帰って来たら、知らせてもらえますか?」
「はい、では私はこれで。何かありましたらいつでも呼んでくださいね」
バタンと部屋の扉が閉まる。
一人部屋にしては大きいくらいの広さに、ダブル並みのベッド、その横には全身鏡。
あとは、勉強をするための机があるくらいで、他に物を置いている訳でも無いから、殺風景な部屋だ。
「ふぅ…」
一呼吸して、ベッドに腰を掛ける。
養子と言う様な形で月城家に入ったからには、その名に泥を塗らないように礼儀や作法をある程度学んできた。
だから、こうして名門と呼ばれる私立高校にも通わせてもらえているからこそ、日々の生活を無駄に出来ない。
分かっていることとは言え…
「奏様は、何も言ってくれないな」
自分だけが空回りしているんじゃないかと、虚しくなる時もある。
こちらから、積極的に奏の話を引き出さない限り、何も変わらないのかと思うとやるせない気持ちが募るばかり。
「今日の夕飯、聞き出してみようかな?怒られない程度に」
奏の察知能力は並外れていて、あの赤い目で見つめられると見透かされているようで、全てを曝け出されて支配された感覚に陥る…
心も体も……
素性も分からない、ただの赤の他人なのに…
どうして、こんなにも気になるんだろう。
僕がΩだから…?
◇ ◇ ◇
「…ん、ねお…」
あれ?手の温もりを感じる。
誰かが呼んでいる?
「祢音…」
ハッとして横を見ると、見慣れたスーツがそこにあった。
「あ、ごめんなさい!僕、寝ちゃってたみたいです」
あれから、色々考えを巡らせていたら眠ってしまったらしい。
お手伝いさんが部屋をノックしても返事が無いと奏に告げると、わざわざ自らが出向いて起こしに来たようで、祢音は咄嗟に謝った。
「疲れていたのか?それとも初めての発情期か?」
「考え事をしていたら、眠ってしまったみたいで。発情期はまだ来てないと思います」
「そうだな。Ωのフェロモンに当てられると、さすがに俺もキツい」
「そうなんですね」
祢音がΩと診断されてすぐ、奏は自分がαだと言うことを告白した。
しかし、特に驚いた様子は無く、祢音は『そうじゃないかと思っていました』と以前から分かっていたかのように言葉を放った。
それは単なる勘が良いだけなのか、それとも眠っている末裔の性なのか…
「それより、夕食が出来ている。冷めないうちに食べよう」
そう促されて、ダイニングルームへと向かう。
奏様が、Ωのフェロモンを嗅いだらどうなってしまうんだろう……
見境えがつかなくなってしまうのかな。
『本能の赴くままに行動する』ようなことは聞いたことがあるけど、本当なのかな?
そんな奏様、怖いけど見てみたい……
小学校入学前に、この月城家に入った。
立派な門、広い庭、大きな扉の玄関…全く自分には似合っていない造りの豪邸。
施設に居た時と違い、空気が冷たい。
人の温もりと言うのをあまり感じない、時折、虚しくなる。
この10年、慣れない部分も多いこの邸宅には、地下牢と言う名のまだ近寄ったこともない部屋もあると、秘書の伊織が言う。
祢音には『関係無いから知らなくても良い』と、昔聞いたことがあった。
関係無いと言われれば興味が湧くのは確かだが、自分の立場上、好き勝手にこの邸宅を徘徊するのはマナー違反だ。
「お帰りなさいませ、祢音様」
「ただいま」
「あの、今日の予定を聞いていませんが?」
ここには、ハウスキーパーやお手伝いさんなどは全て奏が自ら面接をし、雇っているからこそ優秀な人材が集まっている。
こんな場所に居ていいのか、何でこんな自分を選んだのか、祢音は自問自答する日々もあった。
だけど答えが出ないまま、こうして平和に暮らしているのが現状。
「…これから、部屋で自習します。奏様が帰って来たら、知らせてもらえますか?」
「はい、では私はこれで。何かありましたらいつでも呼んでくださいね」
バタンと部屋の扉が閉まる。
一人部屋にしては大きいくらいの広さに、ダブル並みのベッド、その横には全身鏡。
あとは、勉強をするための机があるくらいで、他に物を置いている訳でも無いから、殺風景な部屋だ。
「ふぅ…」
一呼吸して、ベッドに腰を掛ける。
養子と言う様な形で月城家に入ったからには、その名に泥を塗らないように礼儀や作法をある程度学んできた。
だから、こうして名門と呼ばれる私立高校にも通わせてもらえているからこそ、日々の生活を無駄に出来ない。
分かっていることとは言え…
「奏様は、何も言ってくれないな」
自分だけが空回りしているんじゃないかと、虚しくなる時もある。
こちらから、積極的に奏の話を引き出さない限り、何も変わらないのかと思うとやるせない気持ちが募るばかり。
「今日の夕飯、聞き出してみようかな?怒られない程度に」
奏の察知能力は並外れていて、あの赤い目で見つめられると見透かされているようで、全てを曝け出されて支配された感覚に陥る…
心も体も……
素性も分からない、ただの赤の他人なのに…
どうして、こんなにも気になるんだろう。
僕がΩだから…?
◇ ◇ ◇
「…ん、ねお…」
あれ?手の温もりを感じる。
誰かが呼んでいる?
「祢音…」
ハッとして横を見ると、見慣れたスーツがそこにあった。
「あ、ごめんなさい!僕、寝ちゃってたみたいです」
あれから、色々考えを巡らせていたら眠ってしまったらしい。
お手伝いさんが部屋をノックしても返事が無いと奏に告げると、わざわざ自らが出向いて起こしに来たようで、祢音は咄嗟に謝った。
「疲れていたのか?それとも初めての発情期か?」
「考え事をしていたら、眠ってしまったみたいで。発情期はまだ来てないと思います」
「そうだな。Ωのフェロモンに当てられると、さすがに俺もキツい」
「そうなんですね」
祢音がΩと診断されてすぐ、奏は自分がαだと言うことを告白した。
しかし、特に驚いた様子は無く、祢音は『そうじゃないかと思っていました』と以前から分かっていたかのように言葉を放った。
それは単なる勘が良いだけなのか、それとも眠っている末裔の性なのか…
「それより、夕食が出来ている。冷めないうちに食べよう」
そう促されて、ダイニングルームへと向かう。
奏様が、Ωのフェロモンを嗅いだらどうなってしまうんだろう……
見境えがつかなくなってしまうのかな。
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そんな奏様、怖いけど見てみたい……
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