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第11話 和臣は朝が弱い
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「いただきます」
真っ先に漬物を齧ると、ほどよく漬かっていて美味しい。これはご飯が進む。悠人はそこからバクバクとご飯を食べ始めた。野菜炒めも醤油味がしっかり利いていて美味しい。
「いいなあ。育ち盛りの子は食い方が豪快だ」
そう言いながら、信明もバクバクとご飯を食べている。四十代半ばとは思えない食べっぷりだ。お茶碗もどんぶりサイズを使っている。でも、あれだけ動いているのだから、たくさん食べるのは当然だろう。お代わりまでしていた。
「この漬物、すごく美味しいです」
「そうかい。そいつはよかった。それが昨日言ってたほら、道の駅で売ってる漬物だよ。ばあちゃんのお手製だ」
なるほど、これは好評になるはずだと悠人は納得する。志津を見ると、嬉しそうに目を細めていた。
「おばあちゃんは今日も老人ホームに行くんですか?」
「いいや。今日は休みだね。毎日でも行きたいんだけどさ、色々とルールがあるんだよ。だから今日は漬物づくりに精を出すよ。それはそうと、悠人ちゃんは校舎を見てきなさい」
「あ、ああ」
志津に話題を振るまで忘れていた、あの奇妙な噂。廃校に住むようになったという不審者。どうやら志津は気になるようで、次の老人ホームに行く日までに情報が欲しいねえなんて言う。
「危ないわよ。本当に変な人が住み着いてたらどうするのよ」
「大丈夫だろうよ、昼間だし」
「ううん、そうかしら」
沙希は行くことに反対するが、志津は問題ないと笑っている。いやいや、あの噂だけならば問題だらけだけどと、悠人は苦笑してしまう。ただ、遠くから見る分には危なくないのではないか。それに久々に旧駅も見てみたい。駅は問題になっている学校以上に古く、とてもクラシックな建物なのだ。線路には蒸気機関車も展示してある。
「散歩がてら覗いて来ます」
「変な人が出てきたら逃げるのよ。無茶して追い払おうとかしちゃ駄目なんだからね」
「ええ、もちろん」
それでは不審者の情報は得られないけどと思いつつも、悠人も不審者退治をしたいわけではないので頷いた。実際、変な奴だったら逃げるつもりだった。ということで、朝ご飯の後は散歩に決定。明らかに暇を持て余している感じのする、夏休みと実感するプランだ。ついでに勉強するつもりがないのも丸わかりだ。
お腹が一段落したところでスマホと小銭を持ち、悠人はすぐに出掛けようとした。昼間のカンカン照りの中では散歩という気分にならない。今のうちに出掛けるのが一番だろう。それにせっかくの早起きだ。外をゆっくり見て回る時間はたっぷりある。そう思って玄関に向かうと、のそっとふすまが開いて和臣が顔を覗かせた。
「おや、どっかに行くのか。コンビニか」
和臣はぼさぼさの頭をさらにぼさぼさと掻き毟りながら訊いてくる。まだまだ眠たそうだ。コンビニは家から歩いて十五分くらいのところの道路沿いにあるから、そこに行くと思ったらしい。
「いや、旧駅の方だよ。おばあちゃんが面白い話をしてくれて、その確認をしにね」
まだ寝るでしょと、悠人は簡単に伝えただけで出ようとしたが、待ったと止められた。
「面白い話だと」
「え、うん。単なる不審者かもしれないけど」
「はあ、不審者ねえ。それを確認してこいってあのばあちゃんが言ったのか」
ますます解らんなと、和臣はとうとう部屋から出てくると、靴を履こうとしている悠人の横に座る。
「どうしたの?」
「いや、わざわざばあちゃんが伝えたというのが気になってな。一体どういうことだ。詳しく説明してくれ」
「はあ」
確かに志津が悪戯っぽく伝えてきたことは気になる。しかも今朝、忘れていた悠人を嗾けてきた。これは単純に変な人を見たという噂だけの行動とは思えない。志津とは、そういうおばあちゃんだ。配慮もなしに好奇心を刺激するタイプではない。ついでに何の考えもなくそういう情報を伝える人ではない。これにはきっと何か裏がある。
「よく考えると不自然だね」
「そうだろ。詳しく言え」
「ちょっと和臣。起きたんだったら朝ご飯を食べてちょうだい」
玄関で話し込もうとする和臣に、台所で洗い物をしていた沙希が注意をしてきた。玄関を挟んで一方が和臣の部屋で一方が台所だから、こういう状況になるのだ。
「ご飯は要らない」
「駄目よ。朝はちゃんと食べないと。特に夏の時期はばてるわよ。お茶漬けにしてあげるから」
「ちっ。あの人は言い出したら聞かないからな。悠人、少し待ってくれ。というか、食べている間に手短に説明してくれ」
「はいはい」
こうして悠人は茶の間に戻ることになった。志津が説明してくれたら早いのにと思ったが、すでに茶の間に志津の姿はなかった。沙希に確認すると、畑に漬物用の野菜を見繕いに行ったという。行動が素早い。つらつら考えながらまだ出掛けていなかった悠人とは、全く違う素早さだ。本当に老人ホームにはお喋りに行っているだけなんだろうなと納得させられる。
真っ先に漬物を齧ると、ほどよく漬かっていて美味しい。これはご飯が進む。悠人はそこからバクバクとご飯を食べ始めた。野菜炒めも醤油味がしっかり利いていて美味しい。
「いいなあ。育ち盛りの子は食い方が豪快だ」
そう言いながら、信明もバクバクとご飯を食べている。四十代半ばとは思えない食べっぷりだ。お茶碗もどんぶりサイズを使っている。でも、あれだけ動いているのだから、たくさん食べるのは当然だろう。お代わりまでしていた。
「この漬物、すごく美味しいです」
「そうかい。そいつはよかった。それが昨日言ってたほら、道の駅で売ってる漬物だよ。ばあちゃんのお手製だ」
なるほど、これは好評になるはずだと悠人は納得する。志津を見ると、嬉しそうに目を細めていた。
「おばあちゃんは今日も老人ホームに行くんですか?」
「いいや。今日は休みだね。毎日でも行きたいんだけどさ、色々とルールがあるんだよ。だから今日は漬物づくりに精を出すよ。それはそうと、悠人ちゃんは校舎を見てきなさい」
「あ、ああ」
志津に話題を振るまで忘れていた、あの奇妙な噂。廃校に住むようになったという不審者。どうやら志津は気になるようで、次の老人ホームに行く日までに情報が欲しいねえなんて言う。
「危ないわよ。本当に変な人が住み着いてたらどうするのよ」
「大丈夫だろうよ、昼間だし」
「ううん、そうかしら」
沙希は行くことに反対するが、志津は問題ないと笑っている。いやいや、あの噂だけならば問題だらけだけどと、悠人は苦笑してしまう。ただ、遠くから見る分には危なくないのではないか。それに久々に旧駅も見てみたい。駅は問題になっている学校以上に古く、とてもクラシックな建物なのだ。線路には蒸気機関車も展示してある。
「散歩がてら覗いて来ます」
「変な人が出てきたら逃げるのよ。無茶して追い払おうとかしちゃ駄目なんだからね」
「ええ、もちろん」
それでは不審者の情報は得られないけどと思いつつも、悠人も不審者退治をしたいわけではないので頷いた。実際、変な奴だったら逃げるつもりだった。ということで、朝ご飯の後は散歩に決定。明らかに暇を持て余している感じのする、夏休みと実感するプランだ。ついでに勉強するつもりがないのも丸わかりだ。
お腹が一段落したところでスマホと小銭を持ち、悠人はすぐに出掛けようとした。昼間のカンカン照りの中では散歩という気分にならない。今のうちに出掛けるのが一番だろう。それにせっかくの早起きだ。外をゆっくり見て回る時間はたっぷりある。そう思って玄関に向かうと、のそっとふすまが開いて和臣が顔を覗かせた。
「おや、どっかに行くのか。コンビニか」
和臣はぼさぼさの頭をさらにぼさぼさと掻き毟りながら訊いてくる。まだまだ眠たそうだ。コンビニは家から歩いて十五分くらいのところの道路沿いにあるから、そこに行くと思ったらしい。
「いや、旧駅の方だよ。おばあちゃんが面白い話をしてくれて、その確認をしにね」
まだ寝るでしょと、悠人は簡単に伝えただけで出ようとしたが、待ったと止められた。
「面白い話だと」
「え、うん。単なる不審者かもしれないけど」
「はあ、不審者ねえ。それを確認してこいってあのばあちゃんが言ったのか」
ますます解らんなと、和臣はとうとう部屋から出てくると、靴を履こうとしている悠人の横に座る。
「どうしたの?」
「いや、わざわざばあちゃんが伝えたというのが気になってな。一体どういうことだ。詳しく説明してくれ」
「はあ」
確かに志津が悪戯っぽく伝えてきたことは気になる。しかも今朝、忘れていた悠人を嗾けてきた。これは単純に変な人を見たという噂だけの行動とは思えない。志津とは、そういうおばあちゃんだ。配慮もなしに好奇心を刺激するタイプではない。ついでに何の考えもなくそういう情報を伝える人ではない。これにはきっと何か裏がある。
「よく考えると不自然だね」
「そうだろ。詳しく言え」
「ちょっと和臣。起きたんだったら朝ご飯を食べてちょうだい」
玄関で話し込もうとする和臣に、台所で洗い物をしていた沙希が注意をしてきた。玄関を挟んで一方が和臣の部屋で一方が台所だから、こういう状況になるのだ。
「ご飯は要らない」
「駄目よ。朝はちゃんと食べないと。特に夏の時期はばてるわよ。お茶漬けにしてあげるから」
「ちっ。あの人は言い出したら聞かないからな。悠人、少し待ってくれ。というか、食べている間に手短に説明してくれ」
「はいはい」
こうして悠人は茶の間に戻ることになった。志津が説明してくれたら早いのにと思ったが、すでに茶の間に志津の姿はなかった。沙希に確認すると、畑に漬物用の野菜を見繕いに行ったという。行動が素早い。つらつら考えながらまだ出掛けていなかった悠人とは、全く違う素早さだ。本当に老人ホームにはお喋りに行っているだけなんだろうなと納得させられる。
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