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第13話 旧駅を観光
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「久々に運転する人間に対する挑戦だよな、あの家の前。ちょっとハンドル操作をミスしたら畑に落ちるなんて、どんな難関コースだよって毎回思うね」
「確かに」
無事に抜けてすいすいと県道を進むようになってから、和臣が出入り口で疲れたとぼやいた。まさかの出入り口が難関。たしかに家の前のあの細い道は、久々に運転する人間を試しているようにしか思えない。
「改善策はないから諦めるしかないんだけどね」
「ですよね。畑は最大限野菜が作ってありますし」
「あの二人は農作業が大好きだからな」
「ですね」
お盆前の帰省時期とあって、県道を走る車はいつもより多い。しかし、都会に比べればまだまだ長閑だ。渋滞をするわけでもなく、すいすいと進んでいく。そして五分後、あっという間に旧駅に辿り着いた。
「いつ見ても立派だよなあ」
「ああ」
駅前の邪魔にならないところに車を停め、二人揃って駅舎の中へと入る。たまにテレビで取り上げられるほど、有名で古い駅舎だ。明治時代に建てられたというから、古い家だと感じる新井家よりも歴史がある。
その旧駅は瓦屋根が特徴で、どこかお城を思わせる造りだ。最初に見た時はこれが駅だと思わなかった。近づくとその大きさに何度でも驚いてしまう。今ある駅よりも立派だと思ってしまった。どこもかしこも綺麗で、今でも駅として利用できそうだった。もちろん、すでに線路がないから、というより元は国鉄の駅だそうだが、今ではこの辺りをJRが走っていないから、再び駅として利用されることはない。
中には観光案内所が併設されていて、観光客の姿もちらほらと見える。そんな中を、二人でゆっくりと休憩も兼ねて見て回った。この駅舎が現役だった時代なんて知らないのに、なんだか懐かしい、不思議な郷愁を感じる。人工知能なんて最先端のことをやっている和臣もそうなのかと確認すると、そうだなと大きく頷いた。
「確かに、一昔前の時代、ここが現役だった頃なんて全く知らないのに懐かしいという不思議な気分になる。映画なんかの影響かな」
「ああ。ジブリですか」
「そうそう。こういう感覚も、AIにはないからな。どうやったらコンピュータで再現できるのやら。懐かしさをプログラミングするにはどういうものが必要なんだろうな」
「ははっ」
しかし最後には人工知能に組み込むことを考えるのだから、そこは普通の人とは違った。しかも郷愁を感じるAIって何だよという気分にもなった。そんなことが出来るようになったら、あの有名な猫型ロボットの登場が一気に現実味を帯びる気がする。
「必要だよ、そういうのは。人工知能があらゆる能力を獲得して人と同じくらいに活躍できるようになった時、肝心な部分の感覚のずれがあっては大変だからな」
「へえ。なんか、和臣さんと喋ってると人工知能に興味出てくるな」
「それはいい。今は国も力を入れている分野だからな。研究内容にも研究資金も困ることはないぞ。理系の学部に進学する時にチェックするポイントの一つに、どれだけ好きな研究が出来るかというのがあるからな。迷っているならば選択肢の一つとして考えておけばいい」
「うん」
そんな話をしつつホームに出て、さらに展示されている蒸気機関車に近づく。こういうメカニックなものを見ていると気持ちが落ち着くのだ。畑仕事もいいけれども、このでかい物体がシステマティックに動いていたのを間近に感じると、何だか気分が高揚する。
「それも解るな。この部分とか、複雑な動きを見せてくれる」
「そうそう。いいよねえ」
和臣と悠人は、そんなことを言いながら機関車の動力部を見学する。いい気分転換だ。しばらくそこでゆっくりと過ごし、機関車好きの男の子たちが乗り込んできて騒がしくなったところで、ようやく本来の目的である校舎へと向かうことになった。時間も十時を回って暑くなっている。
「さて、謎の人物か」
「ええ。校舎に住んでいるって話になっているみたいだけど」
二人で再び軽自動車に乗り込み、問題の学校へと向かう。長閑な田園風景を見つつ走っていると、小高い丘のような場所にぽつんと建つ学校が見えてきた。その校舎は使われなくなって何年も経つはずだが、痛んでいるようには思えなかった。木造二階建ての、今では珍しくなったタイプの小学校の校舎だが、とても綺麗な状態で建っている。
「壊した方がいいって言われるようには見えないな。どこも傷んでいる感じはしないね」
「外見はそうだが、中はどうか解らないだろう。特に廊下は痛んでいるんじゃないか。まあいい。不審者かどうかは解らないが誰かいるらしいし、車は少し手前に停めて、ゆっくりと近づいてみるか」
「そうだね」
誰かいるかもしれないと思うと、悠人は今更ながら怖くなる。不審者だとか噂はともかくとして、学校に住むなんて趣味が悪い。それともその人は学校大好きな人なのか。どういう理由があるにしろ、悠人は絶対に嫌だ。どうしても学校の怪談を思い出してしまう。トイレの花子さんとか音楽室のベートーヴェンとか。もちろん信じていないが、ここで夜を過ごすとなると絶対に思い出す自信があった。まずトイレに行けなくなる。
「確かに」
無事に抜けてすいすいと県道を進むようになってから、和臣が出入り口で疲れたとぼやいた。まさかの出入り口が難関。たしかに家の前のあの細い道は、久々に運転する人間を試しているようにしか思えない。
「改善策はないから諦めるしかないんだけどね」
「ですよね。畑は最大限野菜が作ってありますし」
「あの二人は農作業が大好きだからな」
「ですね」
お盆前の帰省時期とあって、県道を走る車はいつもより多い。しかし、都会に比べればまだまだ長閑だ。渋滞をするわけでもなく、すいすいと進んでいく。そして五分後、あっという間に旧駅に辿り着いた。
「いつ見ても立派だよなあ」
「ああ」
駅前の邪魔にならないところに車を停め、二人揃って駅舎の中へと入る。たまにテレビで取り上げられるほど、有名で古い駅舎だ。明治時代に建てられたというから、古い家だと感じる新井家よりも歴史がある。
その旧駅は瓦屋根が特徴で、どこかお城を思わせる造りだ。最初に見た時はこれが駅だと思わなかった。近づくとその大きさに何度でも驚いてしまう。今ある駅よりも立派だと思ってしまった。どこもかしこも綺麗で、今でも駅として利用できそうだった。もちろん、すでに線路がないから、というより元は国鉄の駅だそうだが、今ではこの辺りをJRが走っていないから、再び駅として利用されることはない。
中には観光案内所が併設されていて、観光客の姿もちらほらと見える。そんな中を、二人でゆっくりと休憩も兼ねて見て回った。この駅舎が現役だった時代なんて知らないのに、なんだか懐かしい、不思議な郷愁を感じる。人工知能なんて最先端のことをやっている和臣もそうなのかと確認すると、そうだなと大きく頷いた。
「確かに、一昔前の時代、ここが現役だった頃なんて全く知らないのに懐かしいという不思議な気分になる。映画なんかの影響かな」
「ああ。ジブリですか」
「そうそう。こういう感覚も、AIにはないからな。どうやったらコンピュータで再現できるのやら。懐かしさをプログラミングするにはどういうものが必要なんだろうな」
「ははっ」
しかし最後には人工知能に組み込むことを考えるのだから、そこは普通の人とは違った。しかも郷愁を感じるAIって何だよという気分にもなった。そんなことが出来るようになったら、あの有名な猫型ロボットの登場が一気に現実味を帯びる気がする。
「必要だよ、そういうのは。人工知能があらゆる能力を獲得して人と同じくらいに活躍できるようになった時、肝心な部分の感覚のずれがあっては大変だからな」
「へえ。なんか、和臣さんと喋ってると人工知能に興味出てくるな」
「それはいい。今は国も力を入れている分野だからな。研究内容にも研究資金も困ることはないぞ。理系の学部に進学する時にチェックするポイントの一つに、どれだけ好きな研究が出来るかというのがあるからな。迷っているならば選択肢の一つとして考えておけばいい」
「うん」
そんな話をしつつホームに出て、さらに展示されている蒸気機関車に近づく。こういうメカニックなものを見ていると気持ちが落ち着くのだ。畑仕事もいいけれども、このでかい物体がシステマティックに動いていたのを間近に感じると、何だか気分が高揚する。
「それも解るな。この部分とか、複雑な動きを見せてくれる」
「そうそう。いいよねえ」
和臣と悠人は、そんなことを言いながら機関車の動力部を見学する。いい気分転換だ。しばらくそこでゆっくりと過ごし、機関車好きの男の子たちが乗り込んできて騒がしくなったところで、ようやく本来の目的である校舎へと向かうことになった。時間も十時を回って暑くなっている。
「さて、謎の人物か」
「ええ。校舎に住んでいるって話になっているみたいだけど」
二人で再び軽自動車に乗り込み、問題の学校へと向かう。長閑な田園風景を見つつ走っていると、小高い丘のような場所にぽつんと建つ学校が見えてきた。その校舎は使われなくなって何年も経つはずだが、痛んでいるようには思えなかった。木造二階建ての、今では珍しくなったタイプの小学校の校舎だが、とても綺麗な状態で建っている。
「壊した方がいいって言われるようには見えないな。どこも傷んでいる感じはしないね」
「外見はそうだが、中はどうか解らないだろう。特に廊下は痛んでいるんじゃないか。まあいい。不審者かどうかは解らないが誰かいるらしいし、車は少し手前に停めて、ゆっくりと近づいてみるか」
「そうだね」
誰かいるかもしれないと思うと、悠人は今更ながら怖くなる。不審者だとか噂はともかくとして、学校に住むなんて趣味が悪い。それともその人は学校大好きな人なのか。どういう理由があるにしろ、悠人は絶対に嫌だ。どうしても学校の怪談を思い出してしまう。トイレの花子さんとか音楽室のベートーヴェンとか。もちろん信じていないが、ここで夜を過ごすとなると絶対に思い出す自信があった。まずトイレに行けなくなる。
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