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第三章 森の薬師編
50 森の薬師
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マナを乗せた馬車は町外れの森の中で止まった。マナが降りると目の前には小さな一軒家があった。
「何かあれば城の者にお伝え下さい。いつでもお力になると妃殿下からの御達しです」
護衛の騎士が機械的が伝えた後に馬車が去っていく。マナはもう王家に関わるつもりはなかった。
マナが沈んだ気持ちで森の家を覗き込むと、小さな庭に様々な薬草が植えてあった。マナが図鑑で見た種類もいくつかある。
「あの~」
控えめに呼んでも、誰も出てくる気配がなかった。メラメラがマナの元から飛び上がって庭に入っていく。マナはどうしようか迷った。この家が目的の場所なのだろうが、勝手に入るのは憚られた。
「あっ」
メラメラが家の中に入っていってしまう。こうなったら、もうマナも中に入るしかない。
「メラメラ、悪戯しちゃだめだよ」
不用心にも玄関の戸が開けっ放しだった。メラメラの姿はなく、どうやら中に入ってしまったようだ。
「しょ、しょうがないよね」
そっと中に入ると、狭い部屋の床や棚の上に試験管やビーカー、他にもマナが見た事ない器具が所狭しと置いてあった。そこに釜や暖炉などの生活室需品までひしめいているので余計に狭く感じる。
中央にある四角いテーブルの前で、ブロンドを三つ編みにして束ねている女性が椅子に寄りかかって眠っていた。服装は地味なカートルで、どう見てもその辺りにいる町の女だが、なかなかの美人でシェルリよりも少し年上に見える。それにメラメラがおもむろに近づいていく。
「あう?」
メラメラが女性の鼻を摘む。それにはマナは慌てた。
「だ、だめだよ! 止めなさい!」
「ぶおぉ、なんだ、苦しぃ!?」
息を詰まらせた彼女が変な声を出して目を開ける。マナは冷汗が止まらなかった。
「おおっ!? なんだこいつは、可愛いなぁ!」
女性がメラメラを両手で抱くと頭上に持ち上げて見つめる。
「これはフェアリーか? シルフリアの人口生命体だな、こんなに近くで見たのは初めてだ」
女性はマナの姿に気付いて立ち上がる。
「これはお前のか?」
「はい……すみません、ご迷惑おかけして……あと、勝手に入っちゃって」
「いや、こちらこそすまん。出迎えるつもりだったのに、昼寝してしまった」
女性はメラメラをマナに戻すと、まじまじと見つめてから頷いた。
「やっぱり、ずっと前に家の前を走ってった子だよな。可愛い顔してたから良く覚えてるんだ。あと、変な服着てたな」
「あ、わたし、この世界に召喚されちゃって、あの時の事は混乱しててよく覚えてないんです」
「シェルリから事情は聞いてる。あの時の子だとは思わなかったけどな」
マナは、王妃を呼び捨てにするこの女性の事情がとても気になった。
「あの、わたし、マナといいます。マナ・シーリングです」
シーリングという名を声に出した時、マナはとても誇らしい気持ちになった。大好きな王子様に付けてもらった名前だ。
「わたしはニイナ・エイン、ここで薬師をやってる」
「宜しくお願いします。あと、こっちはメラメラです」
「メラメラちゃんかぁ」
ニイナはメラメラの頭をなでてから、マナの事を上から下まで見ていく。
「このボロ屋にドレスは似合わないな、別の服を出してやる」
ニイナは上にごちゃごちゃと器具が置いてあるタンスの引き出しを開けて服を引っ張り出す。
「確かシェルリが昔着ていた服があったはずだ」
「あの、王妃様と同じ名前の人がいたんですか?」
「その王妃様が着ていた服だよ、ほら」
ごく普通の町娘の服がマナに手渡された。マナは状況がなかなか理解できなかった。
「……え? これを王妃様が??」
「あいつは、わたしと一緒に生活していたからな」
「え? え? あの、王妃様とどういうご関係が……」
「あいつはな、わたしの弟子なんだ」
マナは、ようやく合点がいった。ニイナは薬師をやっていると言っていた。
同時に王妃とつながりの深い人間と知ると、マナの緊張が解けて深い安心感が生まれる。
「着替えたら、お姉さんとお話しよう」
「はい……」
マナがエプロン付きのピンク色のベルスリーブワンピースに着替えると、ニイナはテーブルの前に椅子を二つ並べてマナを座らせた。
「あのぅ」
「何だ、娘よ」
「どうして並んで座るんでしょう?」
「近い方がすぐに仲良くなれるだろう」
マナは、ちょっと変わった人だなぁと思う。ニイナは言葉使いからは男勝りな性格なのかとも思えるが、触れ合ってみると独特で掴みどころの難しい人だった。
「わたしの名前はニイナ・エイン、出身はレインブルグ、捨て子だったが爺さんに拾われて育ててもらった。爺さんはリド・エインと言って、自称錬金術師だ。いまはもういない、神薬革命の時に殺されちまった」
いきなりニイナが話し出して、マナが目を白黒させていると、彼女が微笑を向けてきた。
「何かあれば城の者にお伝え下さい。いつでもお力になると妃殿下からの御達しです」
護衛の騎士が機械的が伝えた後に馬車が去っていく。マナはもう王家に関わるつもりはなかった。
マナが沈んだ気持ちで森の家を覗き込むと、小さな庭に様々な薬草が植えてあった。マナが図鑑で見た種類もいくつかある。
「あの~」
控えめに呼んでも、誰も出てくる気配がなかった。メラメラがマナの元から飛び上がって庭に入っていく。マナはどうしようか迷った。この家が目的の場所なのだろうが、勝手に入るのは憚られた。
「あっ」
メラメラが家の中に入っていってしまう。こうなったら、もうマナも中に入るしかない。
「メラメラ、悪戯しちゃだめだよ」
不用心にも玄関の戸が開けっ放しだった。メラメラの姿はなく、どうやら中に入ってしまったようだ。
「しょ、しょうがないよね」
そっと中に入ると、狭い部屋の床や棚の上に試験管やビーカー、他にもマナが見た事ない器具が所狭しと置いてあった。そこに釜や暖炉などの生活室需品までひしめいているので余計に狭く感じる。
中央にある四角いテーブルの前で、ブロンドを三つ編みにして束ねている女性が椅子に寄りかかって眠っていた。服装は地味なカートルで、どう見てもその辺りにいる町の女だが、なかなかの美人でシェルリよりも少し年上に見える。それにメラメラがおもむろに近づいていく。
「あう?」
メラメラが女性の鼻を摘む。それにはマナは慌てた。
「だ、だめだよ! 止めなさい!」
「ぶおぉ、なんだ、苦しぃ!?」
息を詰まらせた彼女が変な声を出して目を開ける。マナは冷汗が止まらなかった。
「おおっ!? なんだこいつは、可愛いなぁ!」
女性がメラメラを両手で抱くと頭上に持ち上げて見つめる。
「これはフェアリーか? シルフリアの人口生命体だな、こんなに近くで見たのは初めてだ」
女性はマナの姿に気付いて立ち上がる。
「これはお前のか?」
「はい……すみません、ご迷惑おかけして……あと、勝手に入っちゃって」
「いや、こちらこそすまん。出迎えるつもりだったのに、昼寝してしまった」
女性はメラメラをマナに戻すと、まじまじと見つめてから頷いた。
「やっぱり、ずっと前に家の前を走ってった子だよな。可愛い顔してたから良く覚えてるんだ。あと、変な服着てたな」
「あ、わたし、この世界に召喚されちゃって、あの時の事は混乱しててよく覚えてないんです」
「シェルリから事情は聞いてる。あの時の子だとは思わなかったけどな」
マナは、王妃を呼び捨てにするこの女性の事情がとても気になった。
「あの、わたし、マナといいます。マナ・シーリングです」
シーリングという名を声に出した時、マナはとても誇らしい気持ちになった。大好きな王子様に付けてもらった名前だ。
「わたしはニイナ・エイン、ここで薬師をやってる」
「宜しくお願いします。あと、こっちはメラメラです」
「メラメラちゃんかぁ」
ニイナはメラメラの頭をなでてから、マナの事を上から下まで見ていく。
「このボロ屋にドレスは似合わないな、別の服を出してやる」
ニイナは上にごちゃごちゃと器具が置いてあるタンスの引き出しを開けて服を引っ張り出す。
「確かシェルリが昔着ていた服があったはずだ」
「あの、王妃様と同じ名前の人がいたんですか?」
「その王妃様が着ていた服だよ、ほら」
ごく普通の町娘の服がマナに手渡された。マナは状況がなかなか理解できなかった。
「……え? これを王妃様が??」
「あいつは、わたしと一緒に生活していたからな」
「え? え? あの、王妃様とどういうご関係が……」
「あいつはな、わたしの弟子なんだ」
マナは、ようやく合点がいった。ニイナは薬師をやっていると言っていた。
同時に王妃とつながりの深い人間と知ると、マナの緊張が解けて深い安心感が生まれる。
「着替えたら、お姉さんとお話しよう」
「はい……」
マナがエプロン付きのピンク色のベルスリーブワンピースに着替えると、ニイナはテーブルの前に椅子を二つ並べてマナを座らせた。
「あのぅ」
「何だ、娘よ」
「どうして並んで座るんでしょう?」
「近い方がすぐに仲良くなれるだろう」
マナは、ちょっと変わった人だなぁと思う。ニイナは言葉使いからは男勝りな性格なのかとも思えるが、触れ合ってみると独特で掴みどころの難しい人だった。
「わたしの名前はニイナ・エイン、出身はレインブルグ、捨て子だったが爺さんに拾われて育ててもらった。爺さんはリド・エインと言って、自称錬金術師だ。いまはもういない、神薬革命の時に殺されちまった」
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