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第三章 森の薬師編
60 教会でのお仕事
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マナが姿見の前で回ってみると、頭を覆う純白のウィンプルがふわりと広がった。
「可愛い。シスターの服って一度着てみたかったんだ」
手を組んでみると、鏡の中の自分がそれらしく見える。丈の長いノースリーブの白いワンピースも気に入っている。
メラメラはマナの近くに浮いて様変わりした主の姿を見つめている。
「何か、回復魔法とか使えちゃいそう」
久しぶりにテンション上がりまくりのマナは、それらしい格好をして結構気合を入れて言った。
「ヒール!」
「あの、マナさん、そろそろ着替えは終わりました……?」
部屋に入ってきた先輩シスターに、マナは思いっきり声だけの魔法を放ってしまった。
「あわわわ、ごめんなさい! み、見ての通りです、もうばっちりです!」
「ヒール~!」
「うわぁ、メラメラ、真似しなくていいから!」
「あはは、じゃあ、行きましょうか」
から笑いする先輩の前で、マナは恥ずかしすぎて頭が熱くなった。
――ああ、いきなりやっちゃったなぁ。
参拝者のいない静かな教会の聖堂に、神父と数人のシスターが集まっていた。
「わたしは神父のマルロ・エルスタです。今日からお願いします」
「マナ・シーリングです。よろしくお願いします」
マナが頭を下げると、その傍らにいるメラメラの方が注目されていた。
「まあ、フェアリーを持っているのね」
「神様からの贈り物だわ」
シスターたちがにわかに騒ぎ出すと、神父が手を上げて制止した。
「本来であれば、妖精の首飾りを差し上げるところですが、フェアリーとの契約者は代わりに契約の宝石を飾る事になっています」
「あ、そういう決まりなんですね」
マナが服の下からキャッツアイの首飾りを出すと、女性たちの間から感嘆が漏れた。形見のキャッツアイは、装飾品としての価値も相当なものだし何よりも美しい。女性なら羨ましがるのは当然だった。
「あなたは他のシスターと違って忙しくなると思いますが、よろしくお願いしますね」
「は、はい」
何で自分だけ忙しいのか、マナは少し不安になってしまった。
「あと、フェアリーはマスターの頭より上には絶対に居させないように。抱くのはかまいませんが、教会の中を飛ばないように注意して下さい。手放す時は、地面に立たせて下さい」
それを聞いた瞬間、マナは胸がどうしようもなくむかついた。心の拒絶反応により、考えるよりも先に言葉が出てしまった。
「あの、どうして頭の上がいけないんですか? 空を飛ぶための羽をがあるのに、地面に立たせるのはどうしてなんですか?」
「エリアノ教会の教義に反するからですよ」
そう言った時の神父の顔に、マナはぞっとした。瞬間的だったが、まるでマナを汚物でもあるように見下していた。彼はすぐに人の好い笑顔に戻って言った。
「いいですか。フェアリーとは女神エリアノが遣わした人間の従者なのです。フェアリーは人の幸せの為に従属する存在です。常に人間は主人でフェアリーは従者なのです。フェアリーを人間のように扱う者がたまにいるのですが、それは異端です」
異端という言葉に衝撃を受けたマナは、何も言えなくなった。そんなマナを他のシスター達は、何も知らない少女と思って温かく見守っていた。
♢♢♢
教会門が開いても、平時の朝から参拝に訪れる人は少ない。マナは教会の入り口に立ちながら、先ほどの神父の言葉を考えていた。あの言葉の底には、「お前は異端なのか?」そう問いただすような意志が込められている。マナはそれをはっきりと感じ取った。
教会の教義について神父は小ぎれいな言葉を並べ立てていたが、要は人間が上でフェアリーは下、人間が主人でフェアリーは奴隷、それが教義の根幹らしい。メラメラを家族と思っているマナには、到底受け入れられえないものだ。
「はあぁ……」
今度こそ楽しく仕事が出来ると思っていたマナから、やるせないため息が出た。
「うわぁ、かわいい!」
そういう子供の声が、マナを思索から引き戻した。母親に手を引かれた子供が、マナが抱いているメラメラに手を伸ばしていた。マナは少し屈んで、メラメラと子供の目線を合わせてやる。
「これなに?」
「フェアリー、じゃないかしら? 本当に可愛らしいわね」
メラメラをなでる子供に母親が言った。
「メラメラって言うのよ」
「よろしくな~」
「よろしく、フェアリーさん!」
子供はメラメラと握手して、名残惜しそうに後ろをみながら母親と一緒に教会に入っていく。
「おお、これはフェアリー! ありがたやー」
今度はおじいさんが、メラメラとマナ対して手を組んで祈り始める。
「え? あのぅ……」
「貴方は、女神さまですかな」
「い、いえ、見ての通りシスターです」
「目の色が女神と同じではありませんか」
「あの、これは生まれつきで、たまたま同じなんです」
マナは、目の前の老人がボケてるのかと思ってしまった。
その後も訪れる人ごとに声を掛けられて、人が多くなってきた昼頃にはマナの周りに人が集まってしまった。マナのエリアノと同じ目の色とフェアリーの組み合わせが強力で、みんなマナ達に声をかけてきた。中には絵の中から女神が出てきたようたと言う者までいた。
一日が終わる頃には、メラメラはすっかり人気者になっていて、マナは神父が忙しくなると言っていた意味が分かった。
「可愛い。シスターの服って一度着てみたかったんだ」
手を組んでみると、鏡の中の自分がそれらしく見える。丈の長いノースリーブの白いワンピースも気に入っている。
メラメラはマナの近くに浮いて様変わりした主の姿を見つめている。
「何か、回復魔法とか使えちゃいそう」
久しぶりにテンション上がりまくりのマナは、それらしい格好をして結構気合を入れて言った。
「ヒール!」
「あの、マナさん、そろそろ着替えは終わりました……?」
部屋に入ってきた先輩シスターに、マナは思いっきり声だけの魔法を放ってしまった。
「あわわわ、ごめんなさい! み、見ての通りです、もうばっちりです!」
「ヒール~!」
「うわぁ、メラメラ、真似しなくていいから!」
「あはは、じゃあ、行きましょうか」
から笑いする先輩の前で、マナは恥ずかしすぎて頭が熱くなった。
――ああ、いきなりやっちゃったなぁ。
参拝者のいない静かな教会の聖堂に、神父と数人のシスターが集まっていた。
「わたしは神父のマルロ・エルスタです。今日からお願いします」
「マナ・シーリングです。よろしくお願いします」
マナが頭を下げると、その傍らにいるメラメラの方が注目されていた。
「まあ、フェアリーを持っているのね」
「神様からの贈り物だわ」
シスターたちがにわかに騒ぎ出すと、神父が手を上げて制止した。
「本来であれば、妖精の首飾りを差し上げるところですが、フェアリーとの契約者は代わりに契約の宝石を飾る事になっています」
「あ、そういう決まりなんですね」
マナが服の下からキャッツアイの首飾りを出すと、女性たちの間から感嘆が漏れた。形見のキャッツアイは、装飾品としての価値も相当なものだし何よりも美しい。女性なら羨ましがるのは当然だった。
「あなたは他のシスターと違って忙しくなると思いますが、よろしくお願いしますね」
「は、はい」
何で自分だけ忙しいのか、マナは少し不安になってしまった。
「あと、フェアリーはマスターの頭より上には絶対に居させないように。抱くのはかまいませんが、教会の中を飛ばないように注意して下さい。手放す時は、地面に立たせて下さい」
それを聞いた瞬間、マナは胸がどうしようもなくむかついた。心の拒絶反応により、考えるよりも先に言葉が出てしまった。
「あの、どうして頭の上がいけないんですか? 空を飛ぶための羽をがあるのに、地面に立たせるのはどうしてなんですか?」
「エリアノ教会の教義に反するからですよ」
そう言った時の神父の顔に、マナはぞっとした。瞬間的だったが、まるでマナを汚物でもあるように見下していた。彼はすぐに人の好い笑顔に戻って言った。
「いいですか。フェアリーとは女神エリアノが遣わした人間の従者なのです。フェアリーは人の幸せの為に従属する存在です。常に人間は主人でフェアリーは従者なのです。フェアリーを人間のように扱う者がたまにいるのですが、それは異端です」
異端という言葉に衝撃を受けたマナは、何も言えなくなった。そんなマナを他のシスター達は、何も知らない少女と思って温かく見守っていた。
♢♢♢
教会門が開いても、平時の朝から参拝に訪れる人は少ない。マナは教会の入り口に立ちながら、先ほどの神父の言葉を考えていた。あの言葉の底には、「お前は異端なのか?」そう問いただすような意志が込められている。マナはそれをはっきりと感じ取った。
教会の教義について神父は小ぎれいな言葉を並べ立てていたが、要は人間が上でフェアリーは下、人間が主人でフェアリーは奴隷、それが教義の根幹らしい。メラメラを家族と思っているマナには、到底受け入れられえないものだ。
「はあぁ……」
今度こそ楽しく仕事が出来ると思っていたマナから、やるせないため息が出た。
「うわぁ、かわいい!」
そういう子供の声が、マナを思索から引き戻した。母親に手を引かれた子供が、マナが抱いているメラメラに手を伸ばしていた。マナは少し屈んで、メラメラと子供の目線を合わせてやる。
「これなに?」
「フェアリー、じゃないかしら? 本当に可愛らしいわね」
メラメラをなでる子供に母親が言った。
「メラメラって言うのよ」
「よろしくな~」
「よろしく、フェアリーさん!」
子供はメラメラと握手して、名残惜しそうに後ろをみながら母親と一緒に教会に入っていく。
「おお、これはフェアリー! ありがたやー」
今度はおじいさんが、メラメラとマナ対して手を組んで祈り始める。
「え? あのぅ……」
「貴方は、女神さまですかな」
「い、いえ、見ての通りシスターです」
「目の色が女神と同じではありませんか」
「あの、これは生まれつきで、たまたま同じなんです」
マナは、目の前の老人がボケてるのかと思ってしまった。
その後も訪れる人ごとに声を掛けられて、人が多くなってきた昼頃にはマナの周りに人が集まってしまった。マナのエリアノと同じ目の色とフェアリーの組み合わせが強力で、みんなマナ達に声をかけてきた。中には絵の中から女神が出てきたようたと言う者までいた。
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