白狐とラーメン

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わたしは見てはいけないものを見てしまった

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 わたしは、その夜、見てはいけないものを見てしまった。
 わたしの持つ常識を塗り替えてしまうもので、世界の本質にすら迫る勢いだ。
 だが、正直に言おう、こんな展開を望んでいたが望んではいなかったと。
 わたしの目の前にわたしを射殺さんばかりに睨み、鋭利な爪を光らせる御仁がいる。わたしを殺そうとする可能性大である。
「見られた……殺す」
 確定だった。
 警察よ仕事しろなどと思うが、深夜であり人通りのない裏路地である。
 変な音を聞いたからとこんなところに入り込んだわたしの自業自得である。
 これで国民的少年探偵のようにただの取引現場を目撃しただけならまだマシだったかもしれない。
 しかし、わたしの目の前にいる御仁はそんな現実的な連中よりもいっそうヤバイのである。
 蟲を人型にしたかのような容貌の怪人物。どうあがいても特撮に現れる怪人である。あるいはもっと現実的な表現をするならば妖怪か。
 妖怪自体が現実味を甚だしく逸脱した存在であるという前提は除くとする。
 それが友好的であるならばまだよいが、最悪なことにどこをどう見ても今のわたしは目の前の怪人物に補食される三秒前の蛙、まな板の鯉である。
 悲しいかな、逃げたくとも腰が抜けて逃げられない。
 わたしの勇気は品切れのようだ、そもそもわたしには勇気の持ち合わせなどありはしないのだが。
「今日はもう少し食えるから、食っちまおう」
 ならばどうにかこうにか打開策を探そうと探すわたしに死刑宣告。
 どうやらわたしは食われてしまうらしい。
 誰か、神様、仏様。
 わたしは信心深い方ではないが、この際なりふりなど構っていられないだろう。
 誰でもいいから助けてくれ。まだ死にたくないのである。
「ゲ――」
 もう終わりかと目をつむり、ああ、なんて人生だなんて嘆いていても何も変わらない。
 時間なんて止まらずああ、その爪に八つ裂きにされてしまうのだろうと、わたしの最後を想像して恐怖に震えるしかない。
「あれ……?」
 だが、いつまでたってもそんな事態は起こらない。
 一体何が起こっているのか。
「…………」
 恐る恐る目を開ければ、怪人物が潰れている。
 ひとり減って、ひとり怪人物が増えていた。つまり状況は変わっていないようで少しだけ変化したということである。
 ただし、怪人物は前の怪人物、妖怪昆虫男よりはとっつきやすい御仁であった。
 有体に言えばケモミミ美少女である。
「…………」
 そんなわたしを助けてくれたのかもしれない御仁が、腰が抜けて座り込んでいるわたしの前に立っていたのだ。
 さてこの状況、いったいどうしたものであろうか――
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