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《第2幕》8章 鼠
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地上、アメリカの地・スラム街。通称鼠の街ーー
空に響くFー2の轟音、煌めく発砲炎。そして硝煙、煙るなかに佇む主力戦車。最早、どっかのバカがドンパチやって町のなかを滅茶苦茶にするはた迷惑な奴等がヒーローみたいに主人公として活躍する洋画が現実になった光景に、呆れるしかなかった。
そのドンパチの中心にある、一直線にのびた道路をかっ飛ばし荒い運転をする車があった。その運転手の名はケイティ。
ケイティは色なしの能力を失い、現在は警官になっていた。
数時間前ーー
ここ警察署。
「よぉ、ケイティ。戻って来たのか?」
「えぇ。それより、ブライアン。あなたの机の上にあるのは何かしら」
「んん、これか?」
ブライアンは机の上にあったボトルを取る。
「まさかだけど、警官が酒飲みながら仕事してるわけじゃないでしょうね」
「あはは、悪い冗談だ。これは押収した密造酒だ。どうだ、今夜これで一杯やらないか?」
「なによ、私を口説いてるの?」
「どうせ押収した酒だ。構わないだろ?」
ケイティは少しニヤつけながらも横にふった。
「駄目よ。証拠品なんだから」
ブライアンは分かっていたが、少しがっかりするも、断られたことにさほどショックはなかった。それが、ブライアンだからだ。ブライアンは一度断られたぐらいで落ち込む男ではなかった。
こんなやり取りは日常的で、他の警官も笑いブライアンに皮肉をぶつける。
「お前、またフラれたのか」
「なんだよ、聞いてたのかサム」
「こんな堂々と職場でフラれちゃあ気づくよな」
他の警官の笑い声ーー
「笑うなよ、皆」
「ブライアン、いい加減諦めることを知ったらどうだ?」
「皆酷いな。そこは励まして応援するとこだろ」
「お前のムスコにか?」
再び笑いがおきる。
「お前の考えることは丸見えなんだよ。どうせ、ケイティじゃなきゃ俺は納得しないとか言うんだろ。お前が一途なのは分かるが、フラれておいてしつこくまわるのは、性犯罪者と変わらんぞ。これは立派なストーカーだ。訴えられたらお前は間違いなく負ける。何故なら、目撃者はたくさんいるから」
サムは周りの警官を指した。それに皆が頷く。
「分かったよ、次からは職場で口説いたりはしない。それに、私情はもちこまない。これでいいだろ?」
「あぁ。だが、ケイティは諦めない」
再びブライアンは笑われる。ここでのサムはムードメーカー。犯人を逮捕するより皆を笑わすのが本職のようだ。
「おい、皆。笑ってないで仕事だ」
ここで最悪のタイミングでご登場の警部様だ。
「政府からの要請で、宇宙エレベーターと、それに繋がる宇宙ステーションがハッキングにあった。今、軍がそのハッキング元を追跡したそれによると、スラム街。通称、鼠の街だ」
最悪だった。そこは犯罪の溜まり場。犯罪率が高い場所で、マフィアも堂々とうろつく街だ。そこでは殺人も平気で存在する。下手したら、ゴミ箱に遺体があってもおかしくない街だ。
「そう言えば!警部、確か宇宙エレベーターって、今日首脳達が集まっていませんでしたっけ」
「そうだ。何を今更言っている。各首脳は宇宙エレベーターを既に使用し、今は上にいる。しかし、ハッキングの影響を受け、宇宙エレベーターは現在使用不能になっている。しかし、それ以上に問題は各首脳らと連絡が一切とれないことだ」
「しかし、宇宙じゃ携帯はつながらないですよね?」
「宇宙の中だが、宇宙エレベーターによって地上とつながれている。従って宇宙ステーション内なら連絡は可能なはずだ。それに宇宙といっても地球から離れているわけではない。衛星もあるし、インターネットも接続可能だ」
「しかし、連絡途絶なんですよね」
「そうだ。当然何かあったと考えるべきだろう。だが、そうは言っても上の様子がどうなっているか分からない。だから、まずはエレベーターを稼働させる。その為には、ハッカーを必ず捕まえるんだ」
全員頷くと一斉に立ち上がり、直ぐ様パトカーに乗り込む。
パトカーはサイレンと共に何台も警察署から飛び出す。
「おいおい、勘弁してくれよ。何でよりによってケイティが運転するんだ?俺はまだ死にたくない」
「残念、徐っ席に座ったあんたが悪い」
「お前が先に運転席に座ったからだよ」
「いいから行くよ。黙ってないと舌噛むわよ」
そう言って、急発進する。サムは大人しくシートベルトにしがみついた。
そして、現在ーー
軍とテロリストは交戦中だった。
「おい、いつここは戦場になった」
「知らないわよそんなの。でも、恐らくハッカーもテロリストの一人だという可能性が高まったわね」
「マジかよ……なぁ俺達は出る幕はないんじゃないのか?」
「いいえ、駄目よ。場所は特定したの。軍は前衛で私達警官はその背後で待機するかたちよ。これは犯人に逃げ道を与えない為よ」
「何であいつらは勝てないと分かっていて戦うんだよ」
「確かにテロリストの目的が各首脳の命だということは理解できる。だけど、なぜ見つかったなら逃げない?なぜ応戦するの?もしかすると、ねぇ彼らの目的は本当に各首脳かしら」
「どういうことだ?」
「彼らの目的、達成したんじゃないのかな?」
「はっ!?なら、なぜ逃げない」
「彼らは目的を果たした。その報いを自ら受けているとしたら」
「つまり、首相や大統領は死んだと?あり得ない」
「いいえ、でもーー」
その時、無線が入った。
「たった今、ハッカーを射殺したと軍から報告があった。皆ご苦労」
「どうやら終わったらしいな」
サムはそう言った。だけど、ケイティはそうは思わなかった。
空に響くFー2の轟音、煌めく発砲炎。そして硝煙、煙るなかに佇む主力戦車。最早、どっかのバカがドンパチやって町のなかを滅茶苦茶にするはた迷惑な奴等がヒーローみたいに主人公として活躍する洋画が現実になった光景に、呆れるしかなかった。
そのドンパチの中心にある、一直線にのびた道路をかっ飛ばし荒い運転をする車があった。その運転手の名はケイティ。
ケイティは色なしの能力を失い、現在は警官になっていた。
数時間前ーー
ここ警察署。
「よぉ、ケイティ。戻って来たのか?」
「えぇ。それより、ブライアン。あなたの机の上にあるのは何かしら」
「んん、これか?」
ブライアンは机の上にあったボトルを取る。
「まさかだけど、警官が酒飲みながら仕事してるわけじゃないでしょうね」
「あはは、悪い冗談だ。これは押収した密造酒だ。どうだ、今夜これで一杯やらないか?」
「なによ、私を口説いてるの?」
「どうせ押収した酒だ。構わないだろ?」
ケイティは少しニヤつけながらも横にふった。
「駄目よ。証拠品なんだから」
ブライアンは分かっていたが、少しがっかりするも、断られたことにさほどショックはなかった。それが、ブライアンだからだ。ブライアンは一度断られたぐらいで落ち込む男ではなかった。
こんなやり取りは日常的で、他の警官も笑いブライアンに皮肉をぶつける。
「お前、またフラれたのか」
「なんだよ、聞いてたのかサム」
「こんな堂々と職場でフラれちゃあ気づくよな」
他の警官の笑い声ーー
「笑うなよ、皆」
「ブライアン、いい加減諦めることを知ったらどうだ?」
「皆酷いな。そこは励まして応援するとこだろ」
「お前のムスコにか?」
再び笑いがおきる。
「お前の考えることは丸見えなんだよ。どうせ、ケイティじゃなきゃ俺は納得しないとか言うんだろ。お前が一途なのは分かるが、フラれておいてしつこくまわるのは、性犯罪者と変わらんぞ。これは立派なストーカーだ。訴えられたらお前は間違いなく負ける。何故なら、目撃者はたくさんいるから」
サムは周りの警官を指した。それに皆が頷く。
「分かったよ、次からは職場で口説いたりはしない。それに、私情はもちこまない。これでいいだろ?」
「あぁ。だが、ケイティは諦めない」
再びブライアンは笑われる。ここでのサムはムードメーカー。犯人を逮捕するより皆を笑わすのが本職のようだ。
「おい、皆。笑ってないで仕事だ」
ここで最悪のタイミングでご登場の警部様だ。
「政府からの要請で、宇宙エレベーターと、それに繋がる宇宙ステーションがハッキングにあった。今、軍がそのハッキング元を追跡したそれによると、スラム街。通称、鼠の街だ」
最悪だった。そこは犯罪の溜まり場。犯罪率が高い場所で、マフィアも堂々とうろつく街だ。そこでは殺人も平気で存在する。下手したら、ゴミ箱に遺体があってもおかしくない街だ。
「そう言えば!警部、確か宇宙エレベーターって、今日首脳達が集まっていませんでしたっけ」
「そうだ。何を今更言っている。各首脳は宇宙エレベーターを既に使用し、今は上にいる。しかし、ハッキングの影響を受け、宇宙エレベーターは現在使用不能になっている。しかし、それ以上に問題は各首脳らと連絡が一切とれないことだ」
「しかし、宇宙じゃ携帯はつながらないですよね?」
「宇宙の中だが、宇宙エレベーターによって地上とつながれている。従って宇宙ステーション内なら連絡は可能なはずだ。それに宇宙といっても地球から離れているわけではない。衛星もあるし、インターネットも接続可能だ」
「しかし、連絡途絶なんですよね」
「そうだ。当然何かあったと考えるべきだろう。だが、そうは言っても上の様子がどうなっているか分からない。だから、まずはエレベーターを稼働させる。その為には、ハッカーを必ず捕まえるんだ」
全員頷くと一斉に立ち上がり、直ぐ様パトカーに乗り込む。
パトカーはサイレンと共に何台も警察署から飛び出す。
「おいおい、勘弁してくれよ。何でよりによってケイティが運転するんだ?俺はまだ死にたくない」
「残念、徐っ席に座ったあんたが悪い」
「お前が先に運転席に座ったからだよ」
「いいから行くよ。黙ってないと舌噛むわよ」
そう言って、急発進する。サムは大人しくシートベルトにしがみついた。
そして、現在ーー
軍とテロリストは交戦中だった。
「おい、いつここは戦場になった」
「知らないわよそんなの。でも、恐らくハッカーもテロリストの一人だという可能性が高まったわね」
「マジかよ……なぁ俺達は出る幕はないんじゃないのか?」
「いいえ、駄目よ。場所は特定したの。軍は前衛で私達警官はその背後で待機するかたちよ。これは犯人に逃げ道を与えない為よ」
「何であいつらは勝てないと分かっていて戦うんだよ」
「確かにテロリストの目的が各首脳の命だということは理解できる。だけど、なぜ見つかったなら逃げない?なぜ応戦するの?もしかすると、ねぇ彼らの目的は本当に各首脳かしら」
「どういうことだ?」
「彼らの目的、達成したんじゃないのかな?」
「はっ!?なら、なぜ逃げない」
「彼らは目的を果たした。その報いを自ら受けているとしたら」
「つまり、首相や大統領は死んだと?あり得ない」
「いいえ、でもーー」
その時、無線が入った。
「たった今、ハッカーを射殺したと軍から報告があった。皆ご苦労」
「どうやら終わったらしいな」
サムはそう言った。だけど、ケイティはそうは思わなかった。
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