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16章 最後の戦い
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今までのあらすじ~
「死神がこちらの世界に来ていただければ世界の崩壊は始まるのです」
巫女はその為に、特別な血縁者であるホタルを誘拐し、次々にかつての英雄達を間接的に殺害。
そして現在、赤い月があらわれ、アメリカ合衆国国会議事堂を占拠し、遂にあの世の門が開いた。
死神と言われるヨハネが、こちらの世界に来てしまえば崩壊は間逃れない。しかし、門は既に開いており、危機は刻一刻と迫っている最中、巫女と真紀との勝負に巫女は禁忌である悪魔と契約してしまう
ーーーーーー
NOW(今)
「え?何?」
「悪魔を召喚して契約したのだ」
真紀はどういう意味なのか聞こうとした時、巫女は一瞬にして姿を消し、真紀の背後についた。
「つまり、こういうことです」
「なっ、いつの間に!?」
巫女は手を真紀の背中に当てた。
「ゼロ距離なら避けらる心配はいりませんね。さぁ、お別れの挨拶です」
「くっ!」
どうしようもない状況に、逆転できる展開は見込めなかった。真紀は諦めかけ、巫女の最後の言葉を聞くこととなる。
「モルス!」
………
…………
「……ん、あれ?何も起きない」
真紀は後ろを振り返ると、確かにそこには巫女の少女がいた。しかし、様子がおかしい。そう思った瞬間、巫女の少女はふらつきながら後ろによろめいた。
見ると、巫女の後ろには山吹と銃を構えているアイザがいた。
「レフェクティオー」
すると、直ぐ様巫女は立ち直った。
「どうやら、一発で仕留めなきゃいけないらしいな」
巫女は先程撃たれた背中をさすりながら、アイザを睨み付けた。当然、巫女は詠唱で背中のその傷はなく、痛みも既になくなっているはずだが、それでも一瞬の激痛を巫女は忘れられないでいた。
「油断しましたよ。あなた達がいたことを忘れるなんて。まぁ、これであなた達は不意打ちなんてもう狙えませんが」
そう言って、二人に手のひらを向ける。
「気を付けてふきちゃん、アイザ」
「気を付ける?気を付ければ逃げられるとでも」
すると、巫女の姿がまるで風のように姿を消し、かと思えばアイザの隣、また消え次は山吹の目の前、議長席前と次々に瞬時に移動していった。
「なんだ、この動きは!?」
「なんか鎧武者が言うには悪魔と契約して、さっきみたいな瞬間移動が出来るようになったみたい」
「悪魔って……それで、どうすりゃあいいんだ?」
「とにかく、黒いモヤみたいなのが出たら絶対に避けて」
「と言われてもな」
瞬時に移動できる相手から攻撃を回避するのは簡単ではない。それに、回避ばかりしているわけにもいかないが、攻撃を逆にこちらから当てることはもっと困難だった。
それでもアイザは銃に弾を込め、瞬時に移動する巫女に銃口を向ける。
「ちまちま動いてるんじゃねぇ!」
銃口をあちこちに向けるが、照準が合う前に巫女は消えてしまう。
「どうしました?撃たないんですか」
アイザは巫女の挑発を無視する。もぐら叩きみたいな感じでやたらと撃つと、真紀や山吹に被弾しかねた。
「それは玩具か何かですか?なら、こちらからいきますよ」
巫女は攻撃を予測できないようランダム(不規則)に動き回りながら、最初の標的を選ぶ。
(まず最初はアイツにしましょう)
巫女は、銃を構えるアイザに目をつけた。
(私を撃ったあの激痛、忘れませんよ)
巫女は、自分がやられたようにアイザの背後についた。勿論、一瞬で。
「モリス!」
至近距離からの不意打ち。当然、アイザという男がこのタイミングで襲ってくることなんて分からないはずだ。否、はずだった。
「くそでも食らえ!」
アイザはなんと背後からの不意打ちを、あの黒いモヤを横に回りながらかわし、銃口を巫女に向け発泡した。
いくら瞬時に移動できたとしても、瞬時に反応しなければこの力は使いこなせないのは、よく考えれば分かることだった。巫女には瞬時に反応出来るほど素早い反射神経は持ち合わせていなかった。故に、
「がはっ!」
巫女は、再び銃弾を食らったのだ。
身体から出る血を手でおさえながら、アイザから少し距離をとった。
「何故、あのタイミングだと分かった。いや、何であれを避けられた」
「そうだな。まず、最初に殺すのは誰だろうと考えた時、ふと俺なんじゃないかってな。お前に一度銃を向けて命中させたし、多分このメンツで一番の部外者は俺だからな」
「あら、よく分かっているじゃない。そうよ、あなたはたまたま死なずにこっちの世界にとばされただけにすぎない。本来なら、虫けらと同じく登場人物としても語られない存在だった。なのに、何であなたがのうのうとしゃしゃり出てくるのか。あなたはいい迷惑な乱入者よ」
「だから、その乱入者とやらを先に殺しに来るだろうと見込んだわけさ。分かりやすいよ、あんた。どうせやるなら俺がやったみたいに背後から襲うだろうと、後ろを警戒してみれば案の定ってやつさ」
すると、巫女は笑った。
「でも、私を一撃で殺せなきゃ意味がない。私は何度でも修復可能だ」
「確かにな」
「レフェクティオー!」
眩い光が巫女を覆い、光が消えると同時に巫女の身体は銃を撃たれる前に戻った。
「さぁ、振りだしに戻ったよ」
「そのレフなんやらに上限があればいいんだかな」
「残念、そんなものはないわ」
すると、今度は真紀が巫女に襲いかかった。
「あら、今度はあなたが相手かしら」
そう言いながら、真紀が振った刀の刃を素手で受け止めた。
「でも、一人一人じゃなく、どうせなら全員でかかって来なさい」
それができれば苦労はしないと胸のうちで叫ぶアイザは真紀を見た。
真紀は接近戦、俺はせいぜい銃をぶっぱなす程度。接近戦の真紀は刀を使うから特に相手からの距離をつめる必要がある。すると、敵と味方が重なり、援護射撃が出来なくなる。真紀が後ろ向きになりながら避けれるなら別だが、そんなこと出来るくらいならとっくにやっている。
「あら、一人だけ戦闘に参加してない方がいるようですね。壇上(この場)にいる以上参加して頂けなければ」
「やめろ!」
とっさに叫ぶ真紀だったが、巫女は消え山吹の目の前に姿をあらわした。
「この場に観客は不要です」
巫女は手をかざし、詠唱を読み始める。
「間に合わん!」
と、巫女の足に血が滲んだ。
「な、何故!?」
すると、山吹は巫女の目の前でネックレスを見せた。
「金!?」
「見くびらないで。魔女の苦手なものくらい分かる。私は真紀ちゃんと違い、頭脳派なの。鎧武者さんが巫女が魔女である話をしてくれたから、相手の弱点を調べたのよ。そしたら、金と銀が出てきた。銀は月をあらわし悪魔や狼男をやっつけることが出来る。金は太陽をあらわし男性原理を象徴される。故に、異性の怪物は全部金で倒せる。それは魔女も例外じゃない。
まぁ、でも最初は金を入手することはほぼ諦めてたところなんだよね。だから、これはたまたまここに来る途中に落ちてたのを拝借させてもらってるだけなんだけどね」
「よくやった、山吹!」
「国会議員が金のネックレスを持っているなんて、やっぱ公務員の賃金いいんだね」
「それより、この金があれば巫女は私に近づけないはずよ」
「たかが足止めくらいでしょ。なのに何故!?」
巫女はもはや金に興味を示さなかった。それよりも、もっと重要なことを気にしていた。
「かつての我が主よ、今のでどうやら悪魔はそなたが敗北したとみたようだな」
「バカな。私は全然余裕だというのに、何故私の敗北が決まる」
巫女は自身の足をおさえる。しかし、足の皮がめくれていき、そこから血がどんどん流れていった。
「鎧武者、どういうこと?」
「悪魔と契約したものは、敗北した瞬間貸した悪魔の一部を無理やり取り返され、奪われる。そして、今度は契約した者の魂を頂戴されるのだ」
「魂を!?」
「だから、悪魔とは契約してはならぬのだ。悪魔は力は与えるが卑怯で卑劣な生き物。だから、簡単に見放すし裏切るのだ。奴等を信用する時点で間違っている。そもそも、何故敗北が決まっているか質問したな?答えは、お主が悪魔と契約したその時から敗北は決まっていたんだ。忘れたか?悪魔の力を借りて勝利した者などおらんだろ」
「くっ……」
既に足を麻痺しだした巫女はもう動けないでいた。
「このメンバーの中で一番狙いやすいと思って山吹に飛び込んだら、弱点を知られていたんだ。この場の状況からお主はしてやられたと言わざるおえないだろ。悪魔に言い訳は通用しない。さぁ、直ぐに門を閉めるのだ」
「ふん……く、くくく、笑わせてくれる。まだ、私の魂は悪魔どもに持ってかれてはいない」
「まだ戦うと?」
「そうだ」
「!?」
「インウォーカーティオ・コントラクトュス・ユーラーレ」
ドンッと雷が落ち、議事堂が停電にみまわれた。
「何も見えないよ!」
すると、真紀が手にしている刀がカタカタ鳴り出した。
「我が主よ、先代の主はどうやら相当頑固にみえた。こうなれば、どうか我の前の主を斬って欲しい。我は今より不死を捨て、《絶剣》となる。全ての命と肉体を絶ち斬る刀へと。無論、巫女が死ねば我は消えるだろう」
「そんな!」
「巫女との決着を済ませるのだ。我はそもそも存在しない者よ。全てが終結すれば世界は正常へと戻ろうとする。その時、存在しないはずの我が残れば世界の修復の足枷となるだろう。いずれ、我が主……真紀と行動を共にし、六大武将を相手にした時からこうなることは分かっていた」
すると、刀は赤く光出した。
「さらばだ、我が主よ」
鎧武者の最後の言葉のあと、赤い光は更に強くなった。
「ねぇ、ちょと!冗談でしょ?」
しかし、刀からいつもの声は出てこなかった。
ガシャン!
気が付くと、巫女の右手が黒くデカイ魔獣のような手に変化していた。
「これが、これが悪魔の右手か!!」
再び契約をおこない、悪魔の右手を呼び出した巫女は、それに見とれていた。
「巫女!」
巫女の少女は、自身を気軽に馴れ馴れしく呼ばれたことに少しいらだちながらも、早速手に入った悪魔の右手を試す実験体がいることに、気持ちの高ぶりはおさえきれない程になっていた。
不気味に笑みを見せる巫女を見て、まるで別人に変わってしまったように見えた。いや、もしかするとそうなのかもしれない。悪魔との契約により、体を乗っ取られてるのかもしれない。しかし、例えそうだったとしても、刀をひかせるわけにはいかなかった。鎧武者の最後の言葉を叶わせる為にも、真紀はここで立ち向かわなければならなかった。
「逃げないのですね。私の足は既に修復し、ある程度の歩行は可能です。無理こそ出来ないでしょうが、あなたたちを倒すには十分なハンデでは?」
「私はあなたを殺す」
「……そうですか。私も、あなたを殺します。さぁ、どちらが言行一致出来るかいきましょうか!」
巫女は巨大な悪魔の手を振りかざし、真紀にいきなり攻撃を仕掛けた。
真紀は、それを刀で受け止め、足を踏ん張って飛ばされないよう必死に耐えた。しかし、ずるずると床をする音がしているなか、それでも勢いが減少せず、少しずつ押されていき、遂には勢いを結局おさえきれずに吹き飛ばされ、壁に激突した。
「うへっ!」
これでも、勢いを少しはおさえたつもりだったが、結構痛かった。背中はじんじんして、壁にぶつかった時、その衝撃で体の臓器が僅かに動いた感覚のような、とにかく気持ち悪くなり嘔吐感をするが、喉辺りで堪えて飲みほした。
そして、前を向くと巫女はこちらに再び突撃し、第2派を食らわせようと既に態勢に入っていた。
「さぁ、どんどんいきますよ!」
悪魔の手を宿した右手をグーの拳にして、振り上げた。
今度は受け止めずにかわした。正直、ギリギリのすれすれでかわした真紀は、自身のことながらやってのけたのに驚きながらも、飛び出た右手の拳の下、いわば悪魔の手首に刃を通した。
ザクッ!
切り落とされた悪魔の手は、床に重々しい音で落ちた。
「ああああああああああああああああああああああああ」
巫女は切り裂かれた右手の前を掴みおさえながら叫んだ。
床に落ちた悪魔の手は、青い炎があらわれ数秒で消失した。それと同時に巫女の悲鳴は止んだ。
「ん?」
フリーズしたかのように止まった巫女の少女に、真紀は首をかしげた。
喰ラエ
どっからか声が聞こえた瞬間、巫女の少女は破裂したかのように肉片を辺りに飛び散らせて生滅した。
「嫌あぁーー!!」
山吹は思わず両目を手で隠した。
巫女の少女は、もはや人のかけらすら残されておらず、あるのは議会の壁と床一面に赤く染めた巫女の血のみだった。
「おい、真紀。どうするつもりだ!?」
アイザの声に、山吹は恐る恐る両手をどかし、目を開けた。その最初の光景は、やはり見られるものではなかった。
「うっ……」
嘔吐感するものの、なんとか気を持ち直した山吹だったが、次に目にした光景に自分の目を疑った。
「真紀ちゃん?」
真紀は巫女の少女が作った魔方陣の上に立っていた。
「真紀ちゃん何やってるの?」
「ふきちゃん、巫女は倒したけどまだ終わっていない。私、今からヨハネに会ってくる。その間に門を閉じる準備をして」
「なに言ってるの」
山吹は真紀を止めようと近づこうとした時、魔方陣は突然光出し、真紀がその光に覆われた。
「真紀ちゃん!」
しかし、光が消えたその魔方陣の上に真紀は既にいなくなっていた。
「死神がこちらの世界に来ていただければ世界の崩壊は始まるのです」
巫女はその為に、特別な血縁者であるホタルを誘拐し、次々にかつての英雄達を間接的に殺害。
そして現在、赤い月があらわれ、アメリカ合衆国国会議事堂を占拠し、遂にあの世の門が開いた。
死神と言われるヨハネが、こちらの世界に来てしまえば崩壊は間逃れない。しかし、門は既に開いており、危機は刻一刻と迫っている最中、巫女と真紀との勝負に巫女は禁忌である悪魔と契約してしまう
ーーーーーー
NOW(今)
「え?何?」
「悪魔を召喚して契約したのだ」
真紀はどういう意味なのか聞こうとした時、巫女は一瞬にして姿を消し、真紀の背後についた。
「つまり、こういうことです」
「なっ、いつの間に!?」
巫女は手を真紀の背中に当てた。
「ゼロ距離なら避けらる心配はいりませんね。さぁ、お別れの挨拶です」
「くっ!」
どうしようもない状況に、逆転できる展開は見込めなかった。真紀は諦めかけ、巫女の最後の言葉を聞くこととなる。
「モルス!」
………
…………
「……ん、あれ?何も起きない」
真紀は後ろを振り返ると、確かにそこには巫女の少女がいた。しかし、様子がおかしい。そう思った瞬間、巫女の少女はふらつきながら後ろによろめいた。
見ると、巫女の後ろには山吹と銃を構えているアイザがいた。
「レフェクティオー」
すると、直ぐ様巫女は立ち直った。
「どうやら、一発で仕留めなきゃいけないらしいな」
巫女は先程撃たれた背中をさすりながら、アイザを睨み付けた。当然、巫女は詠唱で背中のその傷はなく、痛みも既になくなっているはずだが、それでも一瞬の激痛を巫女は忘れられないでいた。
「油断しましたよ。あなた達がいたことを忘れるなんて。まぁ、これであなた達は不意打ちなんてもう狙えませんが」
そう言って、二人に手のひらを向ける。
「気を付けてふきちゃん、アイザ」
「気を付ける?気を付ければ逃げられるとでも」
すると、巫女の姿がまるで風のように姿を消し、かと思えばアイザの隣、また消え次は山吹の目の前、議長席前と次々に瞬時に移動していった。
「なんだ、この動きは!?」
「なんか鎧武者が言うには悪魔と契約して、さっきみたいな瞬間移動が出来るようになったみたい」
「悪魔って……それで、どうすりゃあいいんだ?」
「とにかく、黒いモヤみたいなのが出たら絶対に避けて」
「と言われてもな」
瞬時に移動できる相手から攻撃を回避するのは簡単ではない。それに、回避ばかりしているわけにもいかないが、攻撃を逆にこちらから当てることはもっと困難だった。
それでもアイザは銃に弾を込め、瞬時に移動する巫女に銃口を向ける。
「ちまちま動いてるんじゃねぇ!」
銃口をあちこちに向けるが、照準が合う前に巫女は消えてしまう。
「どうしました?撃たないんですか」
アイザは巫女の挑発を無視する。もぐら叩きみたいな感じでやたらと撃つと、真紀や山吹に被弾しかねた。
「それは玩具か何かですか?なら、こちらからいきますよ」
巫女は攻撃を予測できないようランダム(不規則)に動き回りながら、最初の標的を選ぶ。
(まず最初はアイツにしましょう)
巫女は、銃を構えるアイザに目をつけた。
(私を撃ったあの激痛、忘れませんよ)
巫女は、自分がやられたようにアイザの背後についた。勿論、一瞬で。
「モリス!」
至近距離からの不意打ち。当然、アイザという男がこのタイミングで襲ってくることなんて分からないはずだ。否、はずだった。
「くそでも食らえ!」
アイザはなんと背後からの不意打ちを、あの黒いモヤを横に回りながらかわし、銃口を巫女に向け発泡した。
いくら瞬時に移動できたとしても、瞬時に反応しなければこの力は使いこなせないのは、よく考えれば分かることだった。巫女には瞬時に反応出来るほど素早い反射神経は持ち合わせていなかった。故に、
「がはっ!」
巫女は、再び銃弾を食らったのだ。
身体から出る血を手でおさえながら、アイザから少し距離をとった。
「何故、あのタイミングだと分かった。いや、何であれを避けられた」
「そうだな。まず、最初に殺すのは誰だろうと考えた時、ふと俺なんじゃないかってな。お前に一度銃を向けて命中させたし、多分このメンツで一番の部外者は俺だからな」
「あら、よく分かっているじゃない。そうよ、あなたはたまたま死なずにこっちの世界にとばされただけにすぎない。本来なら、虫けらと同じく登場人物としても語られない存在だった。なのに、何であなたがのうのうとしゃしゃり出てくるのか。あなたはいい迷惑な乱入者よ」
「だから、その乱入者とやらを先に殺しに来るだろうと見込んだわけさ。分かりやすいよ、あんた。どうせやるなら俺がやったみたいに背後から襲うだろうと、後ろを警戒してみれば案の定ってやつさ」
すると、巫女は笑った。
「でも、私を一撃で殺せなきゃ意味がない。私は何度でも修復可能だ」
「確かにな」
「レフェクティオー!」
眩い光が巫女を覆い、光が消えると同時に巫女の身体は銃を撃たれる前に戻った。
「さぁ、振りだしに戻ったよ」
「そのレフなんやらに上限があればいいんだかな」
「残念、そんなものはないわ」
すると、今度は真紀が巫女に襲いかかった。
「あら、今度はあなたが相手かしら」
そう言いながら、真紀が振った刀の刃を素手で受け止めた。
「でも、一人一人じゃなく、どうせなら全員でかかって来なさい」
それができれば苦労はしないと胸のうちで叫ぶアイザは真紀を見た。
真紀は接近戦、俺はせいぜい銃をぶっぱなす程度。接近戦の真紀は刀を使うから特に相手からの距離をつめる必要がある。すると、敵と味方が重なり、援護射撃が出来なくなる。真紀が後ろ向きになりながら避けれるなら別だが、そんなこと出来るくらいならとっくにやっている。
「あら、一人だけ戦闘に参加してない方がいるようですね。壇上(この場)にいる以上参加して頂けなければ」
「やめろ!」
とっさに叫ぶ真紀だったが、巫女は消え山吹の目の前に姿をあらわした。
「この場に観客は不要です」
巫女は手をかざし、詠唱を読み始める。
「間に合わん!」
と、巫女の足に血が滲んだ。
「な、何故!?」
すると、山吹は巫女の目の前でネックレスを見せた。
「金!?」
「見くびらないで。魔女の苦手なものくらい分かる。私は真紀ちゃんと違い、頭脳派なの。鎧武者さんが巫女が魔女である話をしてくれたから、相手の弱点を調べたのよ。そしたら、金と銀が出てきた。銀は月をあらわし悪魔や狼男をやっつけることが出来る。金は太陽をあらわし男性原理を象徴される。故に、異性の怪物は全部金で倒せる。それは魔女も例外じゃない。
まぁ、でも最初は金を入手することはほぼ諦めてたところなんだよね。だから、これはたまたまここに来る途中に落ちてたのを拝借させてもらってるだけなんだけどね」
「よくやった、山吹!」
「国会議員が金のネックレスを持っているなんて、やっぱ公務員の賃金いいんだね」
「それより、この金があれば巫女は私に近づけないはずよ」
「たかが足止めくらいでしょ。なのに何故!?」
巫女はもはや金に興味を示さなかった。それよりも、もっと重要なことを気にしていた。
「かつての我が主よ、今のでどうやら悪魔はそなたが敗北したとみたようだな」
「バカな。私は全然余裕だというのに、何故私の敗北が決まる」
巫女は自身の足をおさえる。しかし、足の皮がめくれていき、そこから血がどんどん流れていった。
「鎧武者、どういうこと?」
「悪魔と契約したものは、敗北した瞬間貸した悪魔の一部を無理やり取り返され、奪われる。そして、今度は契約した者の魂を頂戴されるのだ」
「魂を!?」
「だから、悪魔とは契約してはならぬのだ。悪魔は力は与えるが卑怯で卑劣な生き物。だから、簡単に見放すし裏切るのだ。奴等を信用する時点で間違っている。そもそも、何故敗北が決まっているか質問したな?答えは、お主が悪魔と契約したその時から敗北は決まっていたんだ。忘れたか?悪魔の力を借りて勝利した者などおらんだろ」
「くっ……」
既に足を麻痺しだした巫女はもう動けないでいた。
「このメンバーの中で一番狙いやすいと思って山吹に飛び込んだら、弱点を知られていたんだ。この場の状況からお主はしてやられたと言わざるおえないだろ。悪魔に言い訳は通用しない。さぁ、直ぐに門を閉めるのだ」
「ふん……く、くくく、笑わせてくれる。まだ、私の魂は悪魔どもに持ってかれてはいない」
「まだ戦うと?」
「そうだ」
「!?」
「インウォーカーティオ・コントラクトュス・ユーラーレ」
ドンッと雷が落ち、議事堂が停電にみまわれた。
「何も見えないよ!」
すると、真紀が手にしている刀がカタカタ鳴り出した。
「我が主よ、先代の主はどうやら相当頑固にみえた。こうなれば、どうか我の前の主を斬って欲しい。我は今より不死を捨て、《絶剣》となる。全ての命と肉体を絶ち斬る刀へと。無論、巫女が死ねば我は消えるだろう」
「そんな!」
「巫女との決着を済ませるのだ。我はそもそも存在しない者よ。全てが終結すれば世界は正常へと戻ろうとする。その時、存在しないはずの我が残れば世界の修復の足枷となるだろう。いずれ、我が主……真紀と行動を共にし、六大武将を相手にした時からこうなることは分かっていた」
すると、刀は赤く光出した。
「さらばだ、我が主よ」
鎧武者の最後の言葉のあと、赤い光は更に強くなった。
「ねぇ、ちょと!冗談でしょ?」
しかし、刀からいつもの声は出てこなかった。
ガシャン!
気が付くと、巫女の右手が黒くデカイ魔獣のような手に変化していた。
「これが、これが悪魔の右手か!!」
再び契約をおこない、悪魔の右手を呼び出した巫女は、それに見とれていた。
「巫女!」
巫女の少女は、自身を気軽に馴れ馴れしく呼ばれたことに少しいらだちながらも、早速手に入った悪魔の右手を試す実験体がいることに、気持ちの高ぶりはおさえきれない程になっていた。
不気味に笑みを見せる巫女を見て、まるで別人に変わってしまったように見えた。いや、もしかするとそうなのかもしれない。悪魔との契約により、体を乗っ取られてるのかもしれない。しかし、例えそうだったとしても、刀をひかせるわけにはいかなかった。鎧武者の最後の言葉を叶わせる為にも、真紀はここで立ち向かわなければならなかった。
「逃げないのですね。私の足は既に修復し、ある程度の歩行は可能です。無理こそ出来ないでしょうが、あなたたちを倒すには十分なハンデでは?」
「私はあなたを殺す」
「……そうですか。私も、あなたを殺します。さぁ、どちらが言行一致出来るかいきましょうか!」
巫女は巨大な悪魔の手を振りかざし、真紀にいきなり攻撃を仕掛けた。
真紀は、それを刀で受け止め、足を踏ん張って飛ばされないよう必死に耐えた。しかし、ずるずると床をする音がしているなか、それでも勢いが減少せず、少しずつ押されていき、遂には勢いを結局おさえきれずに吹き飛ばされ、壁に激突した。
「うへっ!」
これでも、勢いを少しはおさえたつもりだったが、結構痛かった。背中はじんじんして、壁にぶつかった時、その衝撃で体の臓器が僅かに動いた感覚のような、とにかく気持ち悪くなり嘔吐感をするが、喉辺りで堪えて飲みほした。
そして、前を向くと巫女はこちらに再び突撃し、第2派を食らわせようと既に態勢に入っていた。
「さぁ、どんどんいきますよ!」
悪魔の手を宿した右手をグーの拳にして、振り上げた。
今度は受け止めずにかわした。正直、ギリギリのすれすれでかわした真紀は、自身のことながらやってのけたのに驚きながらも、飛び出た右手の拳の下、いわば悪魔の手首に刃を通した。
ザクッ!
切り落とされた悪魔の手は、床に重々しい音で落ちた。
「ああああああああああああああああああああああああ」
巫女は切り裂かれた右手の前を掴みおさえながら叫んだ。
床に落ちた悪魔の手は、青い炎があらわれ数秒で消失した。それと同時に巫女の悲鳴は止んだ。
「ん?」
フリーズしたかのように止まった巫女の少女に、真紀は首をかしげた。
喰ラエ
どっからか声が聞こえた瞬間、巫女の少女は破裂したかのように肉片を辺りに飛び散らせて生滅した。
「嫌あぁーー!!」
山吹は思わず両目を手で隠した。
巫女の少女は、もはや人のかけらすら残されておらず、あるのは議会の壁と床一面に赤く染めた巫女の血のみだった。
「おい、真紀。どうするつもりだ!?」
アイザの声に、山吹は恐る恐る両手をどかし、目を開けた。その最初の光景は、やはり見られるものではなかった。
「うっ……」
嘔吐感するものの、なんとか気を持ち直した山吹だったが、次に目にした光景に自分の目を疑った。
「真紀ちゃん?」
真紀は巫女の少女が作った魔方陣の上に立っていた。
「真紀ちゃん何やってるの?」
「ふきちゃん、巫女は倒したけどまだ終わっていない。私、今からヨハネに会ってくる。その間に門を閉じる準備をして」
「なに言ってるの」
山吹は真紀を止めようと近づこうとした時、魔方陣は突然光出し、真紀がその光に覆われた。
「真紀ちゃん!」
しかし、光が消えたその魔方陣の上に真紀は既にいなくなっていた。
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