空のない世界(裏)

石田氏

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2章 新世界

01

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 時は30XX年。東の活躍により、世界は新しく作りかえられた。街の姿は再び取り戻し、人口も前とは変わらない。唯一、前の世界と違うのは、文明が進み、まさにアニメのド○えもんの世界観が現実になった感じである。
 また、この世界では女の子として産まれた場合、能力を持って産まれることだった。それが、色無しの少女。何故か、男には手にすることができなかった。
 そして、かつての世界に災厄をもたらした『空のない世界』は東によって消滅した。しかし、再びその『空のない世界』をこの世界に出現させようとする謎の組織が、動きを見せていた。世界を滅ぼそうとする、『空のない世界』の王、黒は自分の配下に色を与えた。それが能力持ちの、少女の最初の由縁。それが色ありの少女。
 王である黒を基点として動く、色ありの少女の組織は、いつしかトリニティと呼ばれた。黒、少女、そして影である。影は、この世界が構築された際、新しく生まれた存在。この世界に対する抵抗の現れとして、災厄を撒き散らす黒い霧が出現するようになった。本来の世界に戻そうとする宇宙的倫理によって生まれた説があるが、黒い霧から王の一部ではないかと言う説が一番の可能性とされている。
「そして、重要なのが、黒と対になる色持ちの少女の存在です」
「先生、黒と対の色とはどんな色何ですか?」
「どの色にも属しないし、どの色にもなれる色と言われています。残念ながら、それ以上のことは公にされていません。しかし、この世界で産まれた女の子に能力がついているのは、その少女によって生まれた能力ということです。この世界構築には、その少女の協力が関わっているからです。なので、その少女を黒、トリニティから守る為、少女に関する情報は極秘扱いになっています。
 そして、色無しの少女として産まれたあなた方には、能力を得ると同時に責務がかせられます。トリニティを倒し、世界構築の少女を守ることです。トリニティの存在はこの世界にとって脅威であることは確実です。その脅威の排除に、本校であなた方は戦いの訓練をし、黒を倒すのです。
 残念ながら、大人にはできません。皆さんも御存じの通り、二十歳を過ぎると能力は自然消失します。色無しの少女は、能力保持期間は少女の時のみです」
「先生、色ありの少女はどうなんですか?」
「色ありの少女は人間ではないと言われています。『空のない世界』で産まれた少女は、年を取らず、一生少女のままな為、能力は消失しないです。そして、色ありの少女は色無しの少女より、能力も力も強いです。その為、学校で用意した班、グループで必ず行動し、色ありの少女に対抗します」
「そう言えば先生。過去に色ありの少女に、能力を持たない大人達が挑んで勝利したって話しがありましたが……」
「えぇ、伝説の話しですね。あれは本当です。この学校の理事である東様他、海軍・陸軍・空軍の最高指揮官モリス様、この国の首相キャプラ様、その秘書さくら様、狙撃の名手アレス様、経済界トップ、キング様のメンバーによって、色ありの少女、紫、ピンク、赤、白を倒したという話しです」
「凄っ・・・、能力ないのに四人も倒しただなんて。」
「特に、世界構築の少女に会ったことのある、たった一人が本校の理事である東様です。東様と世界構築の少女に会ったことがきっかけが、今ある世界と言われています」
「世界構築の少女はどこにいたんですか?」
「東様が色ありの少女、金に『空のない世界』に放り投げられて、暗闇の世界に突っ込んだ際、そこに世界構築の少女がいたそうです」
「放り投げ!?……それより、東様は『空のない世界』に入ったんですか!」
「はい。本来は『空のない世界』に人間が突っ込めばただじゃおかないんですが、世界構築の少女によって助けられたそうです。何故、そこに世界構築の少女がいたのかは不明ですが。
 それより、山吹さん。あなたの隣の席があいていますが、また遅刻何ですか?」
教官は空席に目をやる。
「はい……寝坊したようでして」
「遅刻なら、学校に連絡を入れてもらわないと困ります」
「はい、ちゃんと伝えておきます」
「お願いします」
山吹は教官に見えないよう、溜め息を吐く。実際は、隣の子は遅刻ではなく、色ありの少女を見つけてたので追ってますなんて……言えない。
「はぁ……大丈夫かな、真紀ちゃん」
山吹は窓越しの青い空を見て、何度目か再び溜め息をつく。




 真紀は裏道を走っていた。
「待てぇーー!」
逃げる少女を真紀は追いかけていた。
「見つけたんだ、逃がすわけにはいかない」
真紀は更に足を早める。そして、長かった裏道を抜けると、そこには逃げた少女の他にもう一人、少女がいた。
「待ち伏せ!誘い込まれたのか!?」
一人は茶髪で、頭に犬耳がある。そしてもう一人の待ち伏せしていた少女は、髪色がグレーで、頭に猫耳があった。
「ちょっと可愛い……じゃなかった!」
二人の色あり少女相手はまずかった。
(ここは一旦退くしかない!このチャンスは勿体無いが・・・勝てない勝負はしない!)
決断した真紀は煙玉を放ち、辺りが煙で見えなくなった所に、更に能力で自身を透明化させた。真紀の能力は透明化だった。不意討ちに特化した能力だが、見えなくなるだけで気配は消せない。あまり、色ありの少女にこの能力は、戦いに向かない。だから、いざ退避する時にしか使わない。そのほうが確実だからだ。逃げる自分が結果的に、相手に絶好のチャンスを与えることになる。だから、不意討ちは逃走の時に使う。これは教官からの教えだった。あまり逃げるのは好きじゃないが、これは保険でもあった。戦いに保険があったほうが有利になる。逃げて、体制を建て直すのもある意味戦い方の一つでもある。
( 一旦退避し、救援を呼ぼう!)
 真紀はこの場をあとに、退避した。




「いいの、逃がして?私なら、匂いであいつ追えるよ」
茶髪の少女が言った。すると、猫耳の少女は眠そうな顔して
「追いかけっこは好きじゃないの」
「そう」
「それより、レムを探すよ。あの子、本当にどこいっちゃったの……」
「何故、あのお方はレムを気にするんだろう?側近に青の子がいるのに」
「知らない」




 パトカーや、軍の車両が集まるなか、真紀は教官に叱られていた。
「何故、一人でトリニティを追ったんですか!危険だと分かっていたんですか?」
「すいませんでした」
「死にますよ」
「!」
「次からはないと思いなさい」
真紀はしょぼんとした。そこに東が現れた。
「東様!」
「真紀ちゃん、大丈夫だったかい?」
「はい」
「東様、この度はすいませんでした。私の指導が甘かったと反省しております」
「いや、様はいらないですよ水口(みなくち)教官。それに、今まで姿を見せなかった少女がまた動きだしたんです。危険でしたが、二人の少女の情報は貴重です。よく頑張ったね、真紀ちゃん」
「私の名前知ってるんですか」
「うん。全校生徒の名前全てね。一様、理事長だし」
「全校生徒の名前を全て覚えているとは、さすがです、東様」
「いや、だから」
「東様は伝説のお方ですので、様は外せません」
「そ、そういうところ頑固ですよね、教官は」
「それより、真紀さんの罰則はどのように致しますか?」
「!」
「今回は真紀ちゃんも無事だったし、それでよしとしましょう」
「分かりました」
真紀はそれを聞いてひと安心する。
「しかし真紀さん。あまり関心しませんね。仲間がいるのに一人で行動するなんて、自意識過剰か何ですかね」
「・・・・」
「先程聞いた通り罰則はありませんが、反省はしてください」
「はい」
真紀は深々お辞儀する。




 後日。学校に来た真紀は山吹に会った。
「真紀ちゃん、昨日は大丈夫だった?」
「うん。まぁ、教官に怒られたけどね」
「そうだよ、一人で行動するなんて危ないんだから」
「ごめんよ」
「うん」
「それより、最初の授業の何だっけ?」
「社会だよ」
「うわ、憂鬱だわ」
「あっ、真紀ちゃん昨日学校来なかったから、今日放課後補習だって」
「げぇっ」
真紀は頭を抱えた。





 さて、時と場所を変えここは夜の街

【ナイト・シティ】


 この国の都の近くにある街。そこはラスベガスのように明るく、何でもありの街。唯一、警察の目が何故かとどかない為、違法な取引などが平気でおこなわれている。ギャンブル、闇市、殺人、色々。そこで情報の取引をしている二人の少女。それは昼間、姿を見せた犬耳の少女と、猫耳の少女だった。
 猫耳の少女がリストを真剣そうな目で見ているのを、犬耳の少女が聞いた。
「それ、何?」
「学校の生徒に関するリスト」
「あぁ、昼間の子について調べてるんだ。殺るの?」
「邪魔されなきゃやらない。うちらは金のレムを探すこと。でもその邪魔をしてくるなら、排除を優先する」
「了解、ミア」
「行くよ、リリィ」
犬耳のリリィと、猫耳のミアはナイト・シティをあとにした。



 【学校・理事長室】

ノック音と共に、水口教官の声がした。
「失礼します」
「はい」
「東様、例の昼間の件ですが二人の少女が判明しました。近くの監視カメラの解析によると、茶色のリリィと灰色のミアで間違いないかと」
「二人の色ありの少女……」
「それが二人ではなかったようで……」
「ん?しかし、真紀ちゃんは二人の少女しか見てないんだよね?」
「はい。しかし、カメラにはもう一人の少女らしきものが、リリィとミアと一緒に行動していました。カメラではモザイクになったり、消えたり、現れたり、カメラの故障ではないんですが、少女の能力か何かなのかはっきり、写しだされてません」
「それ以上の解析はできませんか?」
「はい。しかし、他のカメラにもその姿が写っているかもしれませんので、今後更に調査の幅を広げる予定です」
「ぜひ、お願いします。少女の動きが見られるのは、現在日本だけです。おそらく、『空のない世界』を再び復活させるとしたら、ここ日本都市上空でしょう。
 それより、真紀ちゃんの件ですが」
「はい。今日の能力検査ですが、やはり複数の能力を持っている可能性があります。全ての体力検査もAAAランクでした。体力強化の能力でしょうか?」
「まぁ、少女が複数の能力を持っていることは前代未聞ですので。色なし、色あり関係無く、少女の能力は一つでした。唯一、例外は少女が持つ武器。同じく能力付与のある武器で、複数の能力を使うことができます。しかし、真紀ちゃんにはその武器がない。また、少女の持つ武器は黒によってしか現在生まれない点からして、色なしの少女が複数の能力を持っていることはないんですが」
「今、科学チームも武器について研究していますが、原理が不明で手も足もでない状況です」
「能力自体が科学の領域ではないのでしょう。オカルトみたいなものですから。それより、真紀ちゃんについては監視をつけたほうがよさそうですね。もし、色ありの少女、トリニティがそれを知ったら、真紀ちゃんが狙われる可能性があります」
「了解致しました」
「しかし、真紀ちゃんだけ複数の能力ですか……」
東の独り言に水口教官は首をかしげた。
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