空のない世界(裏)

石田氏

文字の大きさ
上 下
16 / 73
2章 新世界

02

しおりを挟む

 ここ都市上空、ヘリコプター音が鳴り響いていた。報道陣のヘリコプターが今日オープンするツインタワーをカメラにおさめていた。
「ご覧ください!この巨大なビル。これからこちらのツインタワーが本日オープンされます。こちら、ツインタワーは全長530メートルの110階建てが北館、南館にあり、北は主に有名ブランドから様々なショッピング施設や、映画・まんが喫茶・ゲームセンター等々の娯楽施設などが完備され、90階からはホテルとなっており、屋上の展望台フロアから、都市の夜景を眺めることができます。
 南館は、各有名企業の事務所フロアとなり、最上階は英雄キング様の会社『キングス』が入ることになっています。此方のビルの建築費にもかなりの資金を投資していて、このビルの大株主でもあります。
 キング様のビジネスプランのお陰で、低迷していた各企業も、利益はうなぎ登りで景気回復の絶頂となりつつある中の、今回のツインタワーオープンは、全国のみならず、各国の海外からも注目されています。
 本日、13時よりツインタワーはオープンされます。もう、既に地上ではまだかまだかと行列のなみができ、オープンされるのを楽しみにされております。地上の綾部さんとこれから中継で地上の様子を聞いてみましょう。綾部さん、綾部さん」
カメラ中継は上空から地上に変わった。
「はい、綾部です。こちら、ツインタワー目の前です。見てください!まだ、オープンは一時間前だというのにこの行列!少し、皆さんの声を聞いてみたいと思います。
 では、こちらのご家族に聞いてみましょう。
 皆さんは今日、ツインタワーオープンされると知って来られたんですよね?」
聞かれた家族達は、母が代表して答えた。
「はい」
「こちらには何時からお並びですか?」
「朝の8時からです」
「朝の8時!」
「えっと、どちらから来られましたか?」
「静岡からです」
「じゃあ結構早かったんじゃないんですか?」
「ははっ、そうですね」
「ぼく、眠くない?」
今度はが母親に抱っこされている男の子に、カメラをまわした。
「ねみぃー」
それを聞いて、家族や報道陣も笑った。
「ありがとうございました。
 この様に、今日のツインタワーオープンを楽しみにされていらっしゃる方が沢山いるわけですが、なんと!今日のオープン前に、ツインタワー内部の公開が許可されました。これから、ツインタワー内部に入っていこうと思います」
そう言って、係員に撮影許可書を見せ、ツインタワーの中に入っていった。
「今回は北館のみの公表となります。北館では、大きく分けて各4フロアがあります。1階は迷子シテーションや受付等のサービスエリアから、各有名ブランドの店舗があります。店舗は、1階から30階まであり、これがショッピングフロアとなります。31階から45階は各飲食店があり、バイキングフロアとなります。46階からは、娯楽施設中心としたフロアになります。それが60階まであり、ランドパークフロアになります。特に47階は水族館となっており、デートスポットには最適ではないでしょうか?
 60階からら70階は立ち入り禁止フロアとなり、入ることはできませんが、ツインタワーの警備システム等となっております。また、71階からはまだ空きフロアとなり、今後新たにフロアを追加していく予定となります。
 そして最後のフロア、90階から最上階まではホテルフロアとなり、夜景を楽しみながら一夜を過ごすことができます。ホテルは全て最高級クラスのサービスで提供され、快適にかつ、満喫した旅となることは間違いなしと言えると思います。特に最上階は展望台フロアとなりますのでより、夜の時間を楽しめるでしょう。
 昼間はショッピングフロアとバイキングフロアにランドパークフロアで楽しみ、夜はホテルフロア&展望台フロアで一日楽しむことができます。ぜひ、この機会に行くことをオススメします!」




 そんな番組を学校の食堂で見ていた真紀と山吹は、足をバタバタさせた。
「行きたい、行きたい、行きたい!ふきちゃん行こうよ!」
「真紀ちゃん、私も行きたい!ショッピングしたい!でも、うちら学校あるし無理だよ」
「そこは休もうよ~」
「また水口教官に怒られるよ」
「げっ、あの鬼教官か・・・・」
「誰が鬼教官ですか?」
その声に驚いた真紀は恐る恐る、後ろを振り返った。
「水口教官・・・・」
「あら、私のことだったの」
「あっ!いや、そういう訳では・・・・」
「課題追加で。課題は水口教官のどこが鬼教官かをレポートに100枚以上にまとめて、放課後校舎裏に来なさい」
「じょ、冗談ですよね?」
「あと、自分のケツをよく洗って来ることね。何か適当な鞭があったら忘れずに持って来て。縄でもいいわよ」
「先生、もしかしてドSですか?」
「いいえ。真紀さんがドMなだけじゃないんですか。毎回怒られてよくこりませんよ。真紀さんに学習能力があればと思ったことも。いっそ、少女の能力が透明化から学習に今から変更しなさい」
「そんなぁー、能力の変更なんて、出来ないじゃないですか」
「いいから、早く校舎裏に来なさい!」
「な、何で!先生、何で生徒指導室じゃないんですか?校舎裏は恐いです。嫌です。水口教官は優しいです、凄く優しいです。ですから許して下さい。どうかお願いします。土下座でもしますから許して下さい!先生、先生!いやあぁぁ~~~」
先生に後ろの襟を捕まれ引っ張られていく真紀を見て、山吹は「ファイト!」と小声で応援するしかなかった。




 ここは学校から離れた女子寮。あれから帰って来た真紀は、帰ってそうそう床に寝そべる。
「お帰り」
「ひどいよ、ふきちゃん。私を置いてくなんて」
「なんか・・・ごめん」
真紀は寝そべりながら、ズボンとパンツをずらし、きれいに真っ赤かになった尻を出した。
「水口教官、本当にやるんだから敵わないよ」
「ははは、本当にやったんだ……」
「まったく、私の可愛いお尻がこれじゃあお猿さんだよ」
「まあまあ、これにこりて反省すれば、水口教官も真紀ちゃんを見直すと思うよ」
「絶対ないね」
「またそんなこと言うと、何されるか分からないよ」
「げっ、もっと酷いのはもう嫌ぁ~」
「それより明日の休み、テレビでやってたツインタワーに行こうよ!」
「いいね!行こ!」
「じゃあ決まり」
「うん」



 その夜、真紀が夜中
「水口先生お許しを。全裸で校舎に吊るすなんてことしたら私、お嫁に行けません!」
と、うなされているのに気になった山吹は、その夜、全く寝ることができなかった。




 【ツインタワー・前】


「でかいね」
「うん」
「どうしたの?」
「真紀ちゃんの寝言で寝れなかっただけだよ」
「ご、ごめん」
「それより中に入ろ」
「うん」
真紀と山吹が二人ツインタワーの中に入っていく。その後ろ何列目かに、和服を着た緑の髪色の少女がいたことに彼女らは気づいていなかった。



  

【ツインタワー・ショッピングフロア】


「ねぇ、まずあの店行こう」
「香水専門店?」
「真紀ちゃんは香水とか興味ない?」
「う~ん、香水はつけないからなぁ」
「まぁ、学生だし。学校じゃ、香水は禁止だからね」
「香水ってどんな時につけるの?」
「え?あぁ、まぁ……外出の時とかかな」
「今、ふきちゃん香水つけてるの?」
「つけてないけど・・・・」
「え?香水は外の時につけるんでしょ?」
「うん。だけど今日は真紀ちゃんだし、つけなかっの」
「私が一緒の時はつけないの?」
「だから、その……例えばだよ、例えば……す、好きな人と一緒にいる時とか・・・」
「げっ、ふきちゃん彼氏いるの!」
「だから、例えばだって!しかも、まだ付き合ってません」
「片想い中か」
「もう!真紀ちゃんの意地悪」
「ごめん、ごめん。じゃあ、行こうか」
「うん」



 【ツインタワー南館・62階】


 コツ・・コツ・・コツ・・。

 黄色い目をした少女が、立ち入り禁止フロア、警備室がある廊下を堂々と歩いていた。
「ん?誰だい君は。ここは立ち入り禁止だよ。さぁ、戻っーーその目の色!まさか・・・」
警備員が気づいたことに、少女の口元が緩む。


 「       無音爆発            」
     (サイレント・ボム)


 その瞬間、そのフロアは大爆発し炎上した。
 先程までいた警備員も爆熱によって、跡形もなく蒸発した。


【ツインタワー南館・61階】

  グララララッ・・・・


 突然天井が揺れ、その階のフロアにいる全員が真上を見た。
「何だ?」
「何か上であったのかしら?」
しかし、上で派手な大爆発をおこしたというのに、爆発音が全く聞こえなかった為か、まさか上で大火災になっているなんて、まだこの時点では知るものはいなかった。



【ツインタワー北館・1階】


 1階中心部。そこに着物姿の少女がいた。
「あの子、着物着てる」
「本当だ。祭りがやっているわけでもないから、普段着なのかな?」
「普段着が和服なんて渋いね。でもあの子の髪色ー」
そう言いかけの途中に少女が動き出した。


 「    災悪の霧    」
  (ポイズン・フォッグ)


 彼女の周りに突然、緑の霧が発生した。その霧にのまれた人達は、もがき、苦しみ、身体中に苔のようなものがあたりにでき、そして全身に行き渡ると息が途絶え、絶命した。
「きゃぁーー」
それを見た他の人達は悲鳴をあげ、逃げていった。運よく外へ逃げ切れたらよし。しかし、緑の霧はどんどん広がっていき、外へと逃げ遅れた人達は上の階へとのぼった。
 これが、地獄の始まりだった。



【ツインタワー北館・バイキングフロア】


「腹ペコ~」
「そうだね。ここで何か食べて行こうか」
「うん。でも、こんなに飲食店だけでも沢山あると、どの店にしようか迷うね」
「確かに。なら、料理のジャンルを決めてから店選びすると、ある程度絞られてから探すから、店選びも早くすむよ」
「そうは言っても選べないから、全ジャンルあるところがいいな」
「あはは・・・さすがにそれは」
すると、ぞろぞろと沢山の人が下から慌てた様子で来た。
「おい、皆逃げろ!下の階には絶対に行くな。下にはトリニティがいる」
「トリニティ!色ありの少女が下にいるのか!?」
「真紀ちゃん、落ち着いて。私達も皆と一緒に避難しよう」
「何言ってるの。うちらはこんな時の為に学校で訓練させられてるんでしょ」
「訓練と実戦は違うの!」
山吹が珍しく大きな声をあげた為、真紀は驚いた。
「これから避難して、その後に水口教官に現状を話すの」
「分かった」



【ツインタワー南館前・館外】


 ツインタワー前では報道陣が集まっていた。
「御覧ください。ツインタワー62階が爆発してからはだいぶ時間がたちましたが、まだ全員の救助がまだです。62階は大火災で立ち入ることが出来ません。61階から下は無事に避難できましたが、63解放のから上はまだ取り残された状態で、屋上や窓にSOSの文字があります。しかし、63階からの救助はヘリのみになる為、救助が難航している状態です。また、62階の消火も高さ的に、内部のホースのみによる消化になり、時間がかかっております」
 そこで上空にいる報道ヘリのカメラに写りかわり、ツインタワー62階を撮る。その時、急に62階上の63階が光だし、その直後爆発した。
「たった今、63階が爆発しました!しかし、おかしいですね。ここまで派手な爆発だったのに爆発音がいっさいしてきません。これが少女の能力と関係あるんでしょうか?
 おや、下が騒がしくなってきましたね。何でしょうか……あっ!たった今、自衛隊と警備隊が到着した模様です。軍のヘリもこちらに向かって来てます。下では早速、到着するなりツインタワー内部に入っていきます。おっ!そこになんと、さくら様の姿があります。
 先程入った情報ですと、突入にさくら様、ヘリからの狙撃になんとアレス様が加わっているとのことです。英雄が二人に、色なしの少女隊も加わり、これから色ありの少女攻略に向かうもようです」



【ツインタワー北館・ホテルフロア】


 もう既にこの時点で人が沢山集まっていた。外を見ると既に救助ヘリが飛びかっているが、南館にしか救助は来なかった。南館を見るとビル中心より上あたりで大爆発がおきていた。
「おい、こっちも助けろよ!」
「何であっちばっかなの?」
「決まってるだろ。民間人より偉い人が先に救助されるんだよ」
「何それ、私達見捨てられたの?」
「そうに決まってる!」
どっかから赤ちゃんの泣き声がする。
「うるせぇ」 
「赤ん坊なんだから仕方がないだろ」
「は?母親なら黙らせろよ。それとも俺が黙らせようか!」
「おい、てめえの方がうるせぇよ。黙ってろ」
「何だガキ・・・大人に対してその口のききかたは何だ!大人をなめるんじゃねぇよ」
「何だオッサン、やんのかオラ?」
「上等だ!」
また、別の方からは
「きゃぁーー、誰か止めてください」
「ここでどうせ死ぬなら飛び降りて死んだ方がましだ」
「おい、はやまるな」
周りの人が自殺しようとする男性をとめる。
 どこもかしこも、皆パニック状態で冷静な判断ができなくなっていた。


 現在92階。緑の霧は90階まで到達していた。



【ツインタワー下の外・対策本部】


 今回の対策本部はツインタワー真下にテントをはり、東と水口教官もそこに同席した。
 東は口を開いた。
「しかし、今回のテロ行為はいったい何の目的で行動しているのか分かりませんね」
「はい。現在分かっているのは北館、南館にそれぞれ少女がいること。二人の少女は既に判明されており、黄色の少女と緑の少女が動いているようです」
「最近、二人で行動する少女が多いですね」
「確かに言われてみれば、灰色の少女と茶色の少女も一緒に行動していました。しかし、色ありの少女はあまり誰かと協力して何かやるのは好まないと聞きましたが」
「恐らく、黒が関わっているかもしれません」
「まさか、黒からの指示!?」
そう言えば、金の少女レムとの対戦時も銀髪の少女と一緒だったな。
「私達も現場に向かいましょう」
「東様も少女攻略に参加されるのですか」
「なら、俺も行くぞ」
「キングさん!」
「よお!久しぶりだな。あれ以来俺達会ってないが、全然変わってなくて安心した。キャプラも行きたがっていたが、流石に首相が出るわけにも行かねぇからな」
「えぇ、キャプラさんには他に大事なやることがありますから」
「あいつも、首相なんかになって大変だよな」
「ですね」
「じゃあ行くか」
「はい。因みにあれは持って来てます?」
「勿論。ドラゴン・キラーは持って来ている」
「では、我々も向かいましょう」
キングと水口教官は頷いた。



【ツインタワー北館・ホテルフロア】


 「ねぇ、ふきちゃん。やっぱり、うちらで下にいる少女をやっつけようよ。このまま救助に来ないなら、うちらやられるだけになっちゃうよ」
「でも……」
「ふきちゃんの能力・念力、頼りにしてるよ」
「もう!後で水口教官に怒られても知らないからね」
そうと決まった二人は、下の階へ向かった。



【ツインタワー北館・91階】


 「ここにも人はいないようね。まだ上の階かしら。でも、何処まで登っても人間が行けるのはせいぜい天の下。さて、この階も緑に染めますか」
すると、どこからか足音が。
「あら、逃げ遅れた人がいるみたい。なら、霧を出す前に少し遊んであげましょうか・・・!、違う」
足音は徐々に近づく。二人ぶんの足音。軽い音から、身長と性別を予測。
「少女・・・・」
その答えが的中したかのように、緑の少女の前に二人の少女が現れた。
「色なしの少女ですか」
「そっちは色ありの少女か」
真紀は緑の少女に口で応戦した。
「お前が今回の主犯か」
「主犯ですか……違いますけど、教える気にはなりませんわ。だって、その子のこと私、一番嫌いなんですもの。嫌いな奴のことを語るなんて嫌ですわ。それに、これから死にゆくあなた達に話すことなんてなくてよ」


  「     最悪の霧     」
  (ポイズン・フォッグ)



緑の少女によって、緑の霧が展開された。
「本当は遊んでもよかったんですが、あのお方が色なしの少女を見つけたら殺せと言われているの。あのお方の指示じゃ遊ぶわけにはいかないから、早く決着をつけさせてもらうわね」
緑の霧は勢いよく、二人に襲いかかってきた。しかし、霧は二人を襲わずに避けるように周りに散った。
「能力ですか」
「そうだよ。ふきちゃんの能力、念力の力さ」
「念力!?そんなはずは……だって念力は実体のないものは念力でも触れられないはず。念力の対象は物体よ」
「それが、うちのふきちゃんは天才なのよ。霧も実体として念力を使うことができる。実際に霧を掴む感覚を頭の中で想像ができるの」
緑の少女はそれを聞いて絶句した。しかし、
「だから、なんだって言うんですの!」
緑の少女は、自身の爪を変形させた。


  「     悪魔の鉤爪     」
    (ポイズン・ネイル)


緑の少女が襲って来た。しかし、二人は慣れた感じで応戦しようとした。
「真紀ちゃん、念力にも限界があるから早くしてね」
「了解」
「なめないで欲しいわ。この爪は猛毒。刺されれば、少しの傷で死に至る」
「成る程、解説ありがとう」
「なっ・・・・」
「じゃあこっちもいくね」



「       破壊の蛇マサライ      」



  突如として現れた水の蛇。
 「その技は金の少女レムが使ってた技!?なぜお前が破壊の能力を。いや、それ以前に同じ能力は存在しない。それに巨大な破壊の能力は、色なしの少女で得るような能力ではないはずよ。まさか、あなたはレム?」
「?、私は真紀だけど」
「そんなはずは……」
「私もよく分からないんだよね。皆、複数の能力持ちなんて初めてのことだって、言ってだけど、やっぱ私凄いんだ」
「ふ、複数の能力?」
「うん。これ以外にあるよ、能力」
「あ、あ・・・ああぁぁぁーーー」
緑の少女は壊れたかのように、叫び狂った。
「じゃ、もうやるね」
その真紀の言葉と同時に、蛇は大きな口を開けて緑の少女を丸呑みした。



【ツインタワー南館・64階】


 コツ・・コツ・・コツ。

黄色の目をした少女は、62階と63階を爆発させて、今64階に来ていた。
「もう、無音にする意味ないね」
この事態に気づいた人間達は避難したようだ。爆発音を無音にしたのは、襲撃を堂々とやっても、相手は気づかないまま、また次のフロアで一斉除去をおこなう。
 黄色の少女にとって、逃げる獲物を追うのは得意ではない。特に、茶色の少女のように匂いで追えるなんてことはできない。
「はぁ・・・、人をできるだけ沢山殺してこいなんて命令、絶対注目をこっちに向けてあいつだけ楽させるなんて、あのお方もひどいこと言うぜ」
「その、お方と言うのは黒のことかな?」
「全く、うちが囮だと分かってても人間はこっちに来るんだね」
「まあね。こっちはこっちで目ははなせないからね」
「沢山の人間殺されてるから?」
その質問に、東は答えなかった。
「まぁいいよ。因みに、拷問をかけても本命の方は話さないから」
「聞く前に宣言されちゃうとやりずらいね」
「東さん、さがっていて下さい」
「そちらはピンクの少女レイチェルから生まれた色なしの少女か。この親殺し」
「っ!」
「レイチェルにかわってお前殺してあげる」
「大丈夫かい、さくらちゃん」
「はい、大丈夫です」
「君の能力は爆発系の能力じゃないよね。君は自分の能力が爆発であると思わせる為、派手に爆発させた。君の能力は音に関する能力じゃないかな?」
「そうだよ。レイチェルは私の歌を気にいって、録音していつもイヤホンで聴いてくれてた。私は色ありの少女。人間とは違うけど歌手に憧れたことがあった。歌の才能はなかったけどね。音の能力はあるのに歌はうまくならないんだって思ったこともあった。勿論、レイチェルは私の歌に能力が含まれ、聴いた者の身体能力を高めることを知っていて、聴いてただけだってことは知っていた。でも、それでも私の歌を聴いてくれた唯一の存在だった。だから、お前らは許さない!」



「      破滅の歌・脳内殺戮の曲     」
             (デス・ソング)




 聴いたら、魂が肉体から離れ、この場にいる人間達は絶命するはずだった。しかし、歌う前に人間どもは耳栓をして防いだ。全く、歌う人の前で耳栓するとか失礼なやつらだ。
 黄色の少女は、耳から赤い血を流し倒れた。
「まさか、歌ってる本人も聴いたら死んでしまうなんて」
水口教官はこの不完全な能力に驚いた。


 
 こうして、ツインタワー事件は解決された。






【????】


 横たわるモリス。その体からは赤い液体が流れ出ていた。その目の前に立つ、青髪の少女がいた。
しおりを挟む

処理中です...