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第四章 兎とナイフ

77 ゲン担ぎ

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「お、おいなにを……?」


 俺が驚いていると、三十五番はこう言う。

「前のご主人様は、戦争に赴く前に、これをやると勝てるんだ、とおっしゃってました。だから、エージ様にも……」


 リューシアのゲン担ぎか。

 あいつ、ほんと性欲マシーンだったんだな。

 三十五番は、俺の手を、自分のたわわに実ったおっぱいにそっともっていく。

 俺は抵抗もせずに、させるがままになっていた。

 ……だって。

 だって触りたいじゃーーーーーーん!

 いやいやよく考えてみ?

 第五等準騎士だとか奴隷だって人間だとかいったって、おっぱいは触りたいじゃん?

 むしろ揉みたいじゃん?

 なんなら吸いたいくらいだけどさすがにそれはあれかもしれんし、でも言えば多分吸わせてくれるような気がするけど、ええとそれは……。

 とかなんとか頭の中がグルグルしているうちにも、三十五番が掴んだ俺の手は彼女の胸へと近づいていく。

 さらに一歩、三十五番が俺に歩み寄る。

 三十五番にしみついた、汗と埃と土と馬のにおい、でもそれは彼女自身の女の子の香りと混ざり合って、なんというか、脳みそがクラクラするような心地良い匂いに感じられた。


「……では、ご主人様のご武運を、願って……どうぞ」


 俺の手が、三十五番の胸に触れた。


「あ……んぅ……」


 と声を上げる三十五番。

 前にも触ったことあったけど。

 こいつはやっぱり……。

 や、や、やわらけーーーー!

 服の上からでもわかる、ふにふにとした感触。

 マスクメロンくらいのでかさ。

 手に余るどころか、手が埋まるんじゃないかと思うくらい。

 だけど、それだけじゃこのゲン担ぎは終わらなかった。


「ご主人様……前のご主人様は、ご主人様との戦いの前に、これをやりませんでした。

 急いでいたみたいで……。だから、負けたのかも……だから、……」


 最後の方はもう言葉になっていなかった。

 三十五番は片方の手で自らの襟元を開いてはだけさせ、もう一方の手で俺の手をゆっくりと――

 う、うん。

 こ、これはゲン担ぎだから。

 決してやましい気持ちがあるわけじゃないんだから。

 だ、だから……。

 俺も、抗《あらが》わず、ゆっくりと三十五番の襟の内部へと手を滑り込ませる。

 俺の手のひらが直接、三十五番の乳房に触れた。

 しっとりして温かい感触。

 少し力をいれて揉んでみる。


「あ……ぅん」


 三十五番の吐息を耳にしながら、ゆっくり、優しく揉む。

 ああ、おっぱいって、こうして揉んでみると、案外重さがあるんだなあ。

 それ以上に柔らかい。

 滑らかな肌触り。

 あまりに柔らかすぎて、むしろ触っているのかわからなくなってしまうほどだ。

 そして手のひらに感じるのは、三十五番の、乳房の大きさに比べると、慎ましやかな苺。

 撫でるように手を動かすと、


「んんっ……んっ……」


 という吐息に合わせるかのように、だんだんとそれがコリコリと固くなっていく。

 うっはぁぁぁぁ!

 やべえんすけど。

 超やばいんですけど。

 俺は手のひらで彼女の固くなってきた蕾をコロコロと転がす。

 それに合わせて、三十五番は身をよじらせた。

 うん、ゲン担ぎ、ゲン担ぎ。

 ……うーーー。

 完全に変な気分になってきた。

 と、(残念なことに)突然。


「はい、もう終わり終わり、やめなさい、準備出来たわよ! ……もう、ほんとに腹立つ、なにやってんのよ!」


 金髪の女騎士、ヴェルの怒り声が耳元で聞こえたかと思ったら、スパァン! と頭を叩かれた。

 俺は慌てて三十五番から離れ、


「あ、ヴェ、ヴェル、こ、これは違うくて、いやほら、勝利のためのゲン担ぎで……」

「……アホなゲン担ぎやってないで、ほら、行くわよ、もう、今から死ぬかもしれない戦いの前に……」


 ヴェルの怒気を含んだ声。


「す、すまん……」

「ま、でも……」

「ん?」

「死ぬかもしれないんだもんね。あたしだって健康な十代の女だもん、死ぬ前にやっておきたいこととか、そういうのがあるのは、わかるわ」

「だーかーらー、そういうんじゃなくて……」


 とはいうものの、実際そういうのかもしれなかった。

 ヴェルは「ふふふぅん」と笑ったかと思うと、


「ん。許す。勝利のゲン担ぎ、ね。なるほどね。ちょうど重量軽くするために、あたし、鎧は脱いだのよね、これから陛下と二人乗りだし」


 ん?

 なにをいいだしてんだ、この女騎士様は?


「死ぬかもしれないけど、あんたが死なないように。あんたが大勝利できるように、ゲン担ぎに乗ってやるわ」

「はあ?」


 と俺が聞き返すまもなく。

 ヴェルはかなり乱暴に俺の手をとると、自分の懐の中にそれをつっこんだ。


「ほら、ゲン担ぎなんでしょ、時間がないから五秒間だけね。いーち、にーぃ」


 うおおおお?

 夜伽三十五番に引き続き、今度はヴェルの生乳もみかよっ!

 超嬉しい!

 ヴェルの乳房は三十五番よりもこぶりだけど、そのハリと弾力は桁違いだ。

 鍛えられた筋肉の上にのった女性らしい脂肪はぷりぷりとした手応え、そして小粒な蕾は触れた瞬間にギュッと固く引き締まる。


「さーん、しーぃ、………………はあ、はあ、んん……ご、ご、ほら、もう終わるわよ、いいの、いいの? ご、ご、ご、……」

 ヴェルはたっぷりと時間をかけて、


「ごーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぉっ!」


 言い終わったかと思うと、俺の手を勢いよく自分の懐から引き抜いた。

 ランプの明かりがヴェルの頬を照らす。

 嘘みたいに真っ赤になっていた。

 直後に、ヴェルは、パンッ! と小気味よい音と共に、俺のほっぺたをビンタしやがった。


「いてっ! なんだよ、今自分から……」

「死なないでよ」

「え」

「絶対、死なないでよ。もうここまできたら、あんたには死んでほしくないの。なんていうか、こう、……こういう気持ち、初めてだからなんていったらいいかわかんないわ、でも、わかるわよね?」


 今度は俺の頬《ほお》を両手で挟み込むと、数秒間俺の顔を見つめ、


「いいわね。じゃ、またあとで会いましょう」


 と言ってくるりと背中を向け、ミーシアの待つ馬へと走っていった。

 そうだ。

 これから、戦いなのだ。


「よし、キッサ、馬を――」

「はい、エージ様」


 用意がいいな、さすがキッサ。


「三十五番は俺たちにぴったりくっついてこい」

「あ、はい、かしこまりましたご主人様」


 そして俺は馬に乗り込む。

 初めてだから不安だったが、キッサに手伝って貰ってなんとかまたがることができた。

 キッサが手綱をにぎり、キッサに抱かれるようにシュシュ、キッサを抱くようにして俺が馬にまたがっている。

 馬車用の大型馬だからこそできる三人乗りだ。

 改造したのか、ちゃんと鐙も三人分ある。


「じゃあ、出発よ!」


 ヴェルの声が聞こえ、暗闇の中、俺たちは馬にムチを入れて走りだした。


「ところでエージ様、ゲン担ぎ? でしたっけ? なんか見てたらものすごく腹がたってきたんですけど。……あの、……もうひとつゲン担ぎ用のおっぱいがここにありますけど、どうします?」


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