王子様な彼

nonnbirihimawari

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鈍すぎる二人

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 本鈴が鳴り終わる寸前わたしたちは教室に滑り込んだ。大きなため息をはき、前方に目を向ける。教卓にはまだ誰もいなかった。
「星野、また遅刻だな」
 星野、とは今ここにいなければいけないはずの歴史の先生だ。わたしはそうだねー、と隣に顔を向けようとしてはっと気が付いた。
「あ、ひ、ひひ日詰くん」
 そうだ、すっかり髪のことを忘れていた。せっかく日詰くんにやってもらったのに、その髪は正味2時間も経たないうちにほどいてしまったのだ。いや、正確にはほどかれたのだけれど今そんなことは関係ない。
「……佐藤?」
 そのまま言葉を詰まらせたわたしを、日詰くんは不思議そうに見つめた。けれどわたしの髪を見て、彼は途端苦笑を浮かべた。
「あー……気にするなよ。どうせ隆太郎にやられたんだろ?」
「えっ」
「あいつすげー怒ってたもんなー。数学のときはそりゃもー視線が痛かったし」
 日詰くんは乾いた笑いを漏らしながらそう言った。ははは、と。何だか情けない顔をしてため息をつく。
「佐藤もにっぶいよなあ……」
 そんなつぶやきがわたしの耳に届いた。
 日詰くんは。右手で頬杖をつくと、わたしをじっと見つめてきた。
 顔に何かついてるのかな。そう思ったわたしは自分の顔に触れる。それを見た日詰くんが笑いを漏らしたので今度は後ろに振り返る。何もない。彼がわたしをじっと見る意味が分からなくて不審げに眉を寄せた。
 すると、日詰くんは困ったような、それでいておかしそうな笑いを漏らした。涼しげな目元が優しげに緩む。
「そーゆーとこが鈍いって言ってんの」
 ふわっと彼の黒髪が揺れた。窓から吹き込む初夏の風。
 わたしは、やっぱり日詰くんの意図するところが分からなくて、ただ首を傾げるだけだった。

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