12 / 30
泣かないで
1
しおりを挟む
最悪だ。
ホームルーム前に渡そうと思ったケーキは、最初から思い切り肩すかしをくらった。
担任教師に呼び出されて教室から立ち去っていった隆太郎。ちょうど声を掛けようとしたときだったからめちゃくちゃタイミングが悪い。わたしはがっくりと肩を落とした。
そして、2回目は部活が始まる前の時間。隆太郎はバスケ部で、わたしは帰宅部だ。帰宅部といってもわたしの場合教室で本を読んだり、勉強をしたり、こっそり体育館に隆太郎の勇姿を見に行ったりと、彼の部活が終わるのを待っているのだけれど。
中学の時は調理部に入っていた。けれど高校にはあいにくその部はなく、他の文化部もあまり気に入るものがなく、かといってわたしの足で運動部に入れるわけもなく……帰宅部になったというわけだ。
部活が始まる前にケーキを渡そうと思ったのだけれどこれまた教師に邪魔された。突然図書委員の仕事が入ったのだ。なにせわたしは委員長のため、遅刻するわけにもいかず、泣く泣く図書室に向かった。
「もー、3度目の正直よ!」
そして現在。
無事委員会が終わり、学校に部活動終了のチャイムが鳴り響く。
わたしは鼻息を荒くしながらいつもの場所へ向かっていた。隆太郎の自転車が隠されている裏庭の倉庫。絶対見つからないんだぜ、と入学したときから隆太郎が豪語していた。
それにしても、今日は1年に1度の誕生日だというのについてなさすぎる……。
(なんか自信なくなってきたかも……)
ぴたりと足を止めた。
結局隆太郎が怒った理由も未だに分かっていない。全然分かってない、そう隆太郎が言った理由も、何故あのとき隆太郎があんな表情をしたのかも、何も分かっていない。
それで、謝って、隆太郎は許してくれるんだろうか?
右手にぶら下げている紙袋に目を向けた。中身は6時間目に作ったホールのかぼちゃケーキ。味見はしていないけれどおいしいとは思う。作るのは数回目だし、今回は自分でもうまくできたと思うから。
紙袋をぎゅっと握って、わたしは再び足を裏庭に向けた。
空に浮かぶ太陽はまだ地面を照らしている。長くなった影を踏みしめるようにわたしは足を前に進めた。
その場所に隆太郎はまだ来ていなかった。バスケ部はときどきミーティングで遅くなることがあるからそのせいかもしれない。
そう思ったけれど、少しの不安もあってわたしは倉庫の扉をそっと横に押した。隅っこに目を向ける。そこには隆太郎の自転車がきちんと置いてあって、わたしはほっと息をついた。
隆太郎が、わたしを置いて先に帰ってしまったことは一度もない。どんな喧嘩をしても、隆太郎はわたしを待っていてくれたし、わたしも隆太郎を待っていた。
不思議だと思う。
こんな関係が、もう10年以上ずっと続いているのだ。
倉庫に寄りかかって空を見上げた。視線をさまよわせ、目的のものを探し当てる。まだ薄い、白い三日月。紙袋をぎゅっと握った。
――ゴンちゃん。
心の中でゴンちゃんを呼んでみる。
わたしに勇気をください。隆太郎に真っ正面から向かえるように、隆太郎と仲直りできるように、わたしを見守っていてください。
「…………」
何も変わらない空。でも、少しだけ心が軽くなったような気がした。
ホームルーム前に渡そうと思ったケーキは、最初から思い切り肩すかしをくらった。
担任教師に呼び出されて教室から立ち去っていった隆太郎。ちょうど声を掛けようとしたときだったからめちゃくちゃタイミングが悪い。わたしはがっくりと肩を落とした。
そして、2回目は部活が始まる前の時間。隆太郎はバスケ部で、わたしは帰宅部だ。帰宅部といってもわたしの場合教室で本を読んだり、勉強をしたり、こっそり体育館に隆太郎の勇姿を見に行ったりと、彼の部活が終わるのを待っているのだけれど。
中学の時は調理部に入っていた。けれど高校にはあいにくその部はなく、他の文化部もあまり気に入るものがなく、かといってわたしの足で運動部に入れるわけもなく……帰宅部になったというわけだ。
部活が始まる前にケーキを渡そうと思ったのだけれどこれまた教師に邪魔された。突然図書委員の仕事が入ったのだ。なにせわたしは委員長のため、遅刻するわけにもいかず、泣く泣く図書室に向かった。
「もー、3度目の正直よ!」
そして現在。
無事委員会が終わり、学校に部活動終了のチャイムが鳴り響く。
わたしは鼻息を荒くしながらいつもの場所へ向かっていた。隆太郎の自転車が隠されている裏庭の倉庫。絶対見つからないんだぜ、と入学したときから隆太郎が豪語していた。
それにしても、今日は1年に1度の誕生日だというのについてなさすぎる……。
(なんか自信なくなってきたかも……)
ぴたりと足を止めた。
結局隆太郎が怒った理由も未だに分かっていない。全然分かってない、そう隆太郎が言った理由も、何故あのとき隆太郎があんな表情をしたのかも、何も分かっていない。
それで、謝って、隆太郎は許してくれるんだろうか?
右手にぶら下げている紙袋に目を向けた。中身は6時間目に作ったホールのかぼちゃケーキ。味見はしていないけれどおいしいとは思う。作るのは数回目だし、今回は自分でもうまくできたと思うから。
紙袋をぎゅっと握って、わたしは再び足を裏庭に向けた。
空に浮かぶ太陽はまだ地面を照らしている。長くなった影を踏みしめるようにわたしは足を前に進めた。
その場所に隆太郎はまだ来ていなかった。バスケ部はときどきミーティングで遅くなることがあるからそのせいかもしれない。
そう思ったけれど、少しの不安もあってわたしは倉庫の扉をそっと横に押した。隅っこに目を向ける。そこには隆太郎の自転車がきちんと置いてあって、わたしはほっと息をついた。
隆太郎が、わたしを置いて先に帰ってしまったことは一度もない。どんな喧嘩をしても、隆太郎はわたしを待っていてくれたし、わたしも隆太郎を待っていた。
不思議だと思う。
こんな関係が、もう10年以上ずっと続いているのだ。
倉庫に寄りかかって空を見上げた。視線をさまよわせ、目的のものを探し当てる。まだ薄い、白い三日月。紙袋をぎゅっと握った。
――ゴンちゃん。
心の中でゴンちゃんを呼んでみる。
わたしに勇気をください。隆太郎に真っ正面から向かえるように、隆太郎と仲直りできるように、わたしを見守っていてください。
「…………」
何も変わらない空。でも、少しだけ心が軽くなったような気がした。
0
あなたにおすすめの小説
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
幼馴染みとアオハル恋事情
有村千代
BL
日比谷千佳、十七歳――高校二年生にして初めて迎えた春は、あっけなく終わりを告げるのだった…。
「他に気になる人ができたから」と、せっかくできた彼女に一週間でフられてしまった千佳。その恋敵が幼馴染み・瀬川明だと聞き、千佳は告白現場を目撃することに。
明はあっさりと告白を断るも、どうやら想い人がいるらしい。相手が誰なのか無性に気になって詰め寄れば、「お前が好きだって言ったらどうする?」と返されて!?
思わずどぎまぎする千佳だったが、冗談だと明かされた途端にショックを受けてしまう。しかし気づいてしまった――明のことが好きなのだと。そして、すでに失恋しているのだと…。
アオハル、そして「性」春!? 両片思いの幼馴染みが織りなす、じれじれ甘々王道ラブ!
【一途なクールモテ男×天真爛漫な平凡男子(幼馴染み/高校生)】
※『★』マークがついている章は性的な描写が含まれています
※全70回程度(本編9話+番外編2話)、毎日更新予定
※作者Twitter【https://twitter.com/tiyo_arimura_】
※マシュマロ【https://bit.ly/3QSv9o7】
※掲載箇所【エブリスタ/アルファポリス/ムーンライトノベルズ/BLove/fujossy/pixiv/pictBLand】
□ショートストーリー
https://privatter.net/p/9716586
□イラスト&漫画
https://poipiku.com/401008/">https://poipiku.com/401008/
⇒いずれも不定期に更新していきます
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる